【ショートショート】原理判明【アイドル状の物体】

　　　原理判明

　長引く戦争に人々が疲弊してきた頃、博士はとある物体を作った。
　かつて存在した「アイドル」という娯楽。そこから着想を得たその物体には、人々を魅了する力があった。
　これに熱狂した人々なら、武器を捨ててくれるはずだと思ったのだ。

　博士の目論見は当たった。戦争を推し進めていた首謀者たちは皆この物体に骨抜きにされて、戦争をコロッとやめてしまった。この掌返しに怯えた人々もいないわけではなかったが、彼らは何もいわなかった。
　それほどまでに、この世界は戦争によって疲れ切っていたのだ。

　あるとき、SNSでの対応に関してファンの間で論争が起きた。物体ちゃん（と呼ばれている）が望むならイイネをするのがファン派と、自分が好まないものにイイネはしない派で争いが起きたのだ。
　博士はこの争いを利用して、物体の知名度を上げようとした。
　博士のお望み通り、ファンたちの論争は過激さを増していった。
　やがて彼らは自ら銃を取り敵対派閥の連中を片っ端から……。

毎週ショートショートnote
裏お題「アイドル状の物体」
本文407文字