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【ショートショート】罪の行き先【星屑ドライブ】

   罪の行き先

 N氏は車に揺られていた。三途の川を渡り終えるとボロ車と一緒に男が待ち構えていたのだ。聞けば、この車で空へ向かうらしい。僅かに傾斜のある車内で、N氏は鼻を鳴らした。高級車にしか乗ったことのないN氏にとってこの車の乗り心地は最悪であった。
 N氏は外を見た。人は死んだら星になるというが、この星屑も死体なのだろうか。
「この星の道も人の死なのか?」
 N氏は冗談めかして男に問いかけた。
「そうですよ。貴方が撥ねた子供の命もここにあります」
 男はすんなり答えた。
 スピードが上がる。N氏は身を乗り出した。男がいない。慌てて運転席に這い出て、N氏はブレーキペダルを思いっきり踏んだ。しかし車はどこ吹く風。そのまま星屑の道を飛び出して真っ逆さまに落ちていった。

「あんたみたいなのがお星様になれるわけないでしょ」
 生前、十五人の子供を撥ねたのを金と権力でもみ消した男も、死後となればどうにもならない。男は路上で煙草を吹かし、長い息を吐いた。


 毎週ショートショートnote
 裏お題「星屑ドライブ」
 文字数406字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)