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【ショートショート】何も知らずに際を踏む【告白水平線】

   何も知らずに際を踏む

 朝を迎える前に結ばれなければ、だとか。
 花が散る前に、だとか。
 そんなおとぎ話のような条件などありはしない。
 私はお姫様じゃないし、
 恋愛に向いてないって自覚もある。
 ぼんやりとした、諦めの気持ちが、
 私の中ですっ、と伸びている。
 水平線って真っ直ぐだから、
 そういう意味では、似たもの同士かも。

「ああ、居た居た」
 だから、あなたが息を切らせて走ってきても、
 私は冷静でいられた。
 昔の私なら、バカみたいに小さな悲鳴を上げて、
 本で顔を隠したりしてたことでしょうけど。
「みんな待ってる」
 そう言ってあなたは裸足になって、
 波を踏んで歩いた。
 少しスカートをたくし上げて、
 楽しそうに笑っている。
「みんな待ってるんでしょ」
「少しくらいならヘーキ」
 彼女の動きに合わせて海水が跳ねる。
 そういうところが、嫌。
 こっちの気も知らないで、
 水平線すら踏み越える。

 そんなあなたが、
 世界で一番、

「何か言った?」
「……何も」


 毎週ショートショートnote
 お題「告白水平線」
 文字数408字



 追記
 このショートショートが丁度100本目のお話のようです。毎週ショートショートnoteに参加し始めた頃にはここまでの大台に乗るとは思っていませんでした。ありがとうございます。

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)