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ナナシノ魔物退治屋

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魔力を持つ人間と持たない人間が争い、魔物が闊歩する世界で生きる元騎士の青年・ノアと、彼を気に入った盗賊の青年・ラスターが結成した「魔物退治屋」に関わる人々の日常を描いた短編オムニ… もっと読む
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記事一覧

【短編小説】ヒョウガと肉を食わない娘

 床に皿が叩きつけられる。ヒョウガがびくっと体を震わせた。女は首を横に振った。床に皿の破…

【短編小説】赤い空の下で

「死ぬかと思ったよぉおお!」  魔物退治に失敗した魔物退治屋の女が、アカツキに担がれた状…

【短編小説】ワインパーティー

 酒場・髑髏の円舞――。  その席の片隅でノアとラスター、コバルトはボックス席の片側にぎ…

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【短編小説】己が信ずる夜明けに向かって 4話(最終話)

「地区の医者はもう手が塞がっています」 「中級程度の治癒の魔術なら展開できますが……」  …

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【短編小説】己が信ずる夜明けに向かって 3話

 ――数刻前。  地区の店はコガラシマルにとってちょうどいい。澄んだ冬の空気を思わせる肌…

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【短編小説】己が信ずる夜明けに向かって 2話

 紅茶に湯気が立つ。  ヒョウガはどこか落ち着かない様子でレモンのはちみつ漬けを浮かべる…

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【短編小説】己が信ずる夜明けへ向かって 1話

 庭先で趣味の園芸をしていたラスターは、こちらにずんずんと歩を進めてくる影に飛び上がりそうになった。何故か覇気迫る表情のシノの後ろを、弟のアカツキが陰気な顔でおとなしくついてきている。ラスターは自分の後ろを見た。ナナシノ魔物退治屋拠点の家が普通に建っている。続けてラスターは時計を見た。朝の六時半。  ……六時半だそうだ。 「おはよう、ラスター」 「早いねぇ」  ラスターは土を撫でながらシノの声に応えた。 「朝食も食べるか?」 「軽く済ませてきたわ」 「そう? 今うちの専属シェ

【長編小説】ノアと冬が来ない町 エピローグ

 光と見まがうくらいの強烈な炎が真正面からキメラを襲う。焼け焦げた肉や骨の欠片すら落ちず…

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【長編小説】ノアと冬が来ない町  第十三話 信頼の証

 ここに、来るまでに。  これが、できあがるまでに。  いったい何人の精霊族が犠牲になった…

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【長編小説】ノアと冬が来ない町 第十二話 憎悪

 少し身じろぎをして、うんと伸びをする。  ここはどこだろう、とボケた頭が疑問を抱く。変…

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【長編小説】ノアと冬が来ない町 第十一話 暁

 熱が引き、冷気が降りる。新たな魔力を注がれた私兵の中で、術式が変化するのをノアは見た。…

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【長編小説】ノアと冬が来ない町 第十話 夏の終わり

 脳が情報を処理できていない。シノは目の前で眠る弟の顔を見つめながら思った。同時に、弟を…

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【長編小説】ノアと冬が来ない町 第九話 町の真実

 階段を下りていく。  先頭のラスターが迷わず進んでいくので、シノは少し不安になった。あ…

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【長編小説】ノアと冬が来ない町 第八話 下へ

 ナボッケの町に戻ることを決めたノアたちに別れを告げて、ヒョウガとコガラシマルはナボッケの霊山を下りていた。多少無茶な地形があっても氷や風を用いれば容易い。本当ならシノの助けになりたかったが、ナボッケの町の魔力と相性が悪い二人はどう考えてもお荷物になってしまう。それでもシノは「ありがとね」と言ってくれた。ただの気遣いかもしれないが、ヒョウガにとっては嬉しかった。 「とりあえず、きちんとした冬の町で休んでから改めて出発しよう」 「うむ」  崖を下りる。町に面する側は多少登りやす