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悪夢にうなされて目が覚めたら、パンドラの箱が開いて絶望した夜。

ずっと不眠が続いている。昨日は心配した友達がドライブに誘ってくれて、川沿いを散歩したり、ベンチに座ってぼーっとしたり、太陽も浴びて適度に疲れたので、久しぶりに眠れるかと思ったら、残念ながら全く眠れなかった。全くと言うのは嘘だけど、布団に入ってから眠りに就くまで一時間あまり、やっと眠れたと思ったのも束の間、とんでもなく恐ろしい夢を見て、自分の唸り声で目が覚めた。夢の中で、恐怖のあまり叫びだしそうになるのを口に手をあてて必死にこらえていたら、目が覚めた時同じポーズをしていた。夢の内容は文字にするのも恐ろしくて書けないが、目が覚めて「どうしてこんな夢を・・・?」と思った次の瞬間には、その夢が意味するであろう自分の記憶の底にある幼少期の出来事を思い出し、絶望した。

「やっぱりか・・・・」

そう思った。私はやっぱりあの出来事をずっと引きずっているのか。もう40年以上前の出来事だ。自分ではトラウマになっているとは思っていなかった。心の傷になっているとまで考えてはいなかった。でも、昨日見た悪夢が意味するのは間違いなく「あの日」の出来事だ。別に忘れようとしたこともないし、いつもいつも心の奥底にあるようなものでもなかった。それでも、「やっぱりか」と思ったのは、どこかで無理にあの記憶に蓋をしていた自分を感じていたからではないか。向き合うべきなのか。とても怖い。

ギリシャ神話に出てくるパンドラの箱。詳しくは知らないが開いた蓋からは「絶望」が、箱の中には「希望」が残ったとか。「絶望」と「希望」、相反するものは常に背中合わせでもあり、一方があることでもう一方が存在する。生と死、光と影がそうであるように。

私にとって昨日見た悪夢は自分のトラウマを初めて自覚した「絶望」だった。だけど、同時にそれに気が付いたことがもしかしたら今の不調から抜け出せる「希望」なのかもしれないと思った。結局、夢から醒めた後は明け方まで全く眠れなかった。自分の今の不調は、単に長年のストレスによるものだろうと思っていたが、もしかしたらそうではないのかもしれないと気がついた。でも正直、「じゃあ、どうすれば?」という気持ちだ。向き合うとはどういうことなのか。過去の出来事はもう変えようがない。そんなに深く考えることではないのかもしれない。でも、元来、何でも深く考えてしまったり分析する性格なので、眠れない夜はずっとあれこれと考えてしまう。

とにかく眠ることが今の私の一番の課題だ。長年に渡り難病を患い、たくさんの薬を飲み、その副作用を抑えるためにまた薬が増えて・・・の繰り返しだった義母を間近で見てきたせいか、私は薬というものへ極端な嫌悪がある。普段の生活の中でも薬を飲むことはほどんどなく今まで来たが、さすがにここまで眠れない、情緒も安定しないとなると、薬の力を借りざるを得ない。しばらくやめていた薬をまた飲み始めようと思う。

結局、朝方、確か5時ごろに少し眠れた。その後も目は覚めているものの昼過ぎまでベッドから出ることができなかった。休業に入って半月、こんな日は初めてだ。明らかに悪夢のせいだ。今の私にとって、朝、ベッドから出ることは一日の中で一番ハードルの高い作業だ。起きて、顔を洗い歯を磨き、身だしなみを整えれば気持ちもだいぶ楽になることはわかっているのに、ベッドから出ることはとてつもなくエネルギーが要る。不調になってから、日常のささいなこと、家事はもちろん、郵便物一つチェックするのもいちいち「よし、やろう」と思わなければできなくなってしまった。

これまた体調のあまりよくない義父のお昼ごはんを夫に頼んだ。どこかでお惣菜を買ってきてくれたようだ。こんな風に義父の食事を夫に頼むのも初めてだったかもしれない。もっと早く、こんな風にできていたら、私もこんなことにはならなかったのかもしれないと思った。今更だが。でも、「できない」ことを「できない」と口にして、夫に頼めただけでも一歩前進としよう。お昼過ぎに起きると、空腹を感じた。寝ぐせ頭の私を見て、夫が「冷蔵庫にお惣菜がある」というので、冷やごはんと昨日のお味噌汁をあたためて、そのお惣菜でお昼ご飯を食べた。大丈夫、ごはんが美味しいと思える。

それからは時間がたつにつれ回復し、晩御飯を作ることができた。やっぱり、台所でゴソゴソするのが一番落ち着く。改めて料理が好きなんだなと思った。日に寄って、ではなく、一日の中でも気持ちのアップダウンが激しくて自分でも困惑する。さっきまで絶望していたと思ったら、もう数分後にはちょっと未来のことを考えていたりする。私は二人いて、もしかしてもう一人の自分はまだベッドから起きれずにいるのではないか、と思うほどだ。でも、ベッドを見ても誰もいない。私は確かに「私」一人のようだ。

#エッセイ #日記 #鬱 #更年期 #五十代

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