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グルジアは美味しい?【ソ連最後の夏⑧】

ソ連最後の夏に訪れたグルジア(ジョージア)は、社会主義的なシステムと独創的な民族の文化が入り混じった国でした。そこで食べたり飲んだりした話です。

面白い味ですね

食レポをする人に聞いたのですが、出された料理が口に合わない場合「面白い味ですね」と感想を言うんだそうです。私にとって人生初のグルジア料理は、「面白い味」でした。とにかく予想した味と異なるのです。

ポタージュかな?と思った白いシチューっぽいものは、脂っぽくて、塩気がなくて、少し辛くて草の味がする、不可解な味。紫色の香草のペーストは、一見柴漬けみたいな色合いで、塩味を期待したのですが、口に入れるとまさに草。道端に生えているような「ザ・草」。茶色い豆の煮込みは、辛いんだけど、何かハーブの草感がきつくて食べきれませんでした。そう、敗因は先入観と香草でした。私はネギがどうしても苦手なんですが、あの後を引くようななんともいえないネギ感に似ていました。

グルジア料理の宴

ホテルのレストランでギブギブしていた私たちを見かねて、闘う通訳者ターニャさんが、グルジア料理は本当に本当に美味しいから専門店に行きましょう、と希望者を連れていってくれました。城壁の名残のような古びた通りにある、バルコニーに蔦が絡まった民家風の店。半地下の店内に案内されると、テーブル一面にずらっと料理が並んでいました。こんなに食べきれるのだろうか、と不安になるほど。

…杞憂でした。これは美味しかった、という料理を紹介します。写真がないのが残念です。

平たいパンの中にチーズが入っている「ハチャプリ」。クリスピーな生地でチーズを包んだ逆ピザのようです。

カフカスを代表する料理、シャシリク。羊肉を串に刺して焼いたものです。柔らかでコクがあって、皆が手を伸ばしあっという間に皿が空になりました。スパイスもハーブも使っているんですが、上述のレストランのように刺々しくなくて、肉と混然一体となってまろやか。

カスピ海に近いからでしょうか、オードブルの皿にキャビアが!そして、薄くカットされたチョウザメのスモーク。薫香が上品でした。これをパンの上に広げて、キャビアを乗せると親子サンド。

一番おいしかったのが、キノコと野菜の辛み炒め。マイタケやシメジ的なキノコとマッシュルーム、ニンニクやタマネギを炒めたもの。ワインとむちゃくちゃよく合って、最高でした。

グルジアでシャンパン?

グルジアのワインは、有名です。ソ連が崩壊しロシアがグルジアと対立して困ったことは、美味しいワインが手に入らなくなったことだそうです。この店には甘口の赤が置かれていました。みんなパカパカ飲んでいます。

隣のテーブルの、スーツを来たおじさんたちが、夢中で飲み食いしている私たちを面白そうに見ていました。目が合うと、日本から来たの?ジョージアはどう?いいところでしょうと英語で話しかけてくれました。いい飲みっぷりだね、一本シャンパンをプレゼントしよう、と店のおやじさんに頼んで、マグナムボトルがやってきました。

シャンパン?あのシャンパン?と騒いでいたら、いや、スパークリングワインだから、と苦笑いされました。何をしている人かと聞くと、「エコノミスト」なんだそうです。たくさん飲んで楽しんでいってね、と先に帰っていきました。

ちなみに、ここのお会計は1人90ルーブル。もっともソ連の平均月収が300ルーブルとのことなので、大変な贅沢をしたんでした。見知らぬ異国人にワインをぽーんとプレゼントできるような人が、お客になっているような店で。

1ルーブルで過ごすソ連的休日

一晩でソ連人の平均月収の3分の1も使ってしまいましたが、トビリシでのお金の価値は、よくわかりませんでした。地下鉄やバスはどこへ行っても5カペイカ(100カペイカで1ルーブル)。新聞が10カペイカ、公園で売ってたアイスクリームが35カペイカ。小高い場所にある公園で、新聞を読みながらアイスを食べてゆっくり過ごす。1ルーブルに満たない小さな幸せ。それはそれで、良いような気もします。

グルジアこども (2)

しかしながら、物不足もソ連ならでは。卵屋のショーケースは空っぽで、店員がおしゃべりをしている。歯磨き粉だけたくさん売っている雑貨屋や、一種類のサンダルだけ売っている靴屋。物欲があまり無いワタクシですが、日本の暮らしになれていると辛いですな。

マルボロはソ連の通貨?

ルーブルよりもマルボロの方が信用がある、通貨の代わりになっているという噂も本当でした。マルボロのパッケージがぺたぺた壁に貼ってあり「18」と書いた看板が下がっている店に入ると、マルボロ1箱が18ルーブルで換金できました。

メンソールの緑マルボロを見せると、珍しそうに眺めて「これはマルボロじゃない」と却下。それより日本の「マイルドセブン」はないのかと聞かれました。

そして「アメリカ」という名前のチューインガムを10ルーブルで売っていました。平均月収の30分の1のお値段です。そしてお味は…。「タイガーバームを食べたらこんな味」のようなチューインガムでした。グルジアにおけるアメリカのイメージとは一体?

次はグルジア正教の聖地ムツヘタへ。





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