人生の真実

花組公演『巡礼の年』『fashionable empire』を観劇してきた。

この公演、とても宝塚的スタンダードな作品だというのが全体を通しての感想。お芝居ショー共に新作オリジナル、芝居の内容こそトップと娘役トップの関係性が他の作品と比べて少し希薄だけど、19世紀のヨーロッパに生きる1人の男の物語、絵的に美しく、役も多くて、胸焼けするほど大作すぎず、かと言って薄味というわけでもない、すごく宝塚的良作だなあと思った。

ショーの方も、とても宝塚らしいなというか。どれが王道とは言い難いくらい宝塚のショーは多種多様だけれど、曲のチョイスや使い方、作品の重さがすごく宝塚のスタンダードだなとぼんやり思いながら観劇していた。

とまあ全体的な感想はこんなところにして。
私は音大出身なので、授業でリストは勉強したしある程度の知識があるつもりでいたけれど、それこそ私が知っているのは「ピアニスト フランツリスト」だったなあとすごく思い、それがすごく衝撃だった。

よくよく考えてみたら、リスト以外の作曲家に関しても、私が学生時代沢山歌ったロッシーニやドニゼッティでさえも、曲や作曲家としてのその人に関する知識はあっても、1人の人間としてどんな人生を歩んだかというところはあまり理解していないことに気づいた。

不勉強なので当時のヨーロッパの国々がどういう状態だったのかもふんわりとしか認識していないし、人々は何を食べて、何を着て、何が流行っていて、という視点で見たことがなかった。

私は、そういった、音楽そのものとは少し離れたところへの理解がすごく足りていなくて、自分が演奏する曲に対してすごく表面的なところしか見えていなかった、いやそもそも見ようともしていなかったのだなと、だから私の演奏はあんなにチープだったんだなと要らぬ反省などしてしまう。

今回の芝居を観て、音楽家としてではなく1人の人間として、時代の寵児として、1人のハンガリー人の男としての彼をもっと知りたいという知識欲がすごく高まった。

そして、当時の女性、ジョルジュサンドやマリーがどう生きたのか、彼女たちはあの時代にどう位置したのか、すごく興味が湧いた。

彼らを、彼らの生きた時代を、同じ空気を吸うように感じることができたら、私の人生はもっと豊かになるはず。

私という人間が持っている、私ならではの欲求。
ネバセイでジョルジュとキャサリンが言っていた、「人生の真実」(私にとっては人生の本質の方がしっくりくる言葉だけど)を見つけるためには、リストやマリー、ジョルジュサンド、ショパンなどなどあの時代のことをもっとよく知る必要がある、と直感的に感じた。


ということで、手始めに、劇中すごく良い芝居をされていた星風まどか様へのリスペクトも込めて、マリーの日記でも読んでみようかと思っている。

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