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こんな時代だからこそ、藤井風という存在。
彼との出会いはYouTubeだった。
何気なく"おすすめ"に出てきた彼の動画をクリック。
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スマホ一つで撮影したのだろう画質と音質は、今時のユーチューバーのそれとは程遠い。
しかし画面の向こう側にいる彼の奏でるピアノと深みのある歌声、さらに人懐っこそうな笑顔と少しコミカルな演出に、気付けば彼の動画を見るのが日課となり、見るも簡単に虜になっていた。
もちろん、こんな才能の塊を世の中は放っておく訳がなく、注目されて間もなくデビューに至る。
彼のオリジナル曲は全く期待を裏切らなかった。
今までYouTubeではカバー曲を投稿していた訳だが、それが彼の言葉を彼のメロディーにのせたオリジナル曲では、より彼の色を強く感じられた。
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岡山弁の特徴的な歌詞とは裏腹に滑らかなR&Bサウンド。まさに彼を印象付ける一曲となり、そこから彼の知名度も上がっていった。
よく好きなアーティストが有名になると興味が薄れるという話を聞くが、私もそうでは無いとは言い切れない節がある。
しかし、彼に対する"惹かれる"感情は少し違っていた。
彼の知名度が上がれば上がるほど、私の持つ感性と人々の持つ感性とが同じなんだとコンセンサスにも似た安心感を得られた。
それはこのコロナ禍で生まれた距離感を埋めてくれている様な不思議な感覚だ。
そして彼の1stアルバムの最後に収録されている『帰ろう』を聴いた時、その繊細さと温かさに思わず涙した。
その時の感情を言語化するのはとても難しい。
ただ、彼が奏でる響きに心が洗われる訳でも、そっと寄り添ってくれる訳でもない。
いくつもある自分の中の感情、その一つである一番繊細で純粋なものに、一直線に結びつき、共鳴した。
藤井風。
この時代に与えられるべくして与えられた存在なのかもしれない。
さわやかな風と帰ろう
やさしく降る雨と帰ろう
憎みあいの果てに何が生まれるの
わたし、わたしが先に忘れよう
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