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シナリオ1からやり直し、と思った話。

シナリオが上達しているかどうか、というのは本当によく分からない。体調と同じように調子がいい時悪い時があるし、自分では書けたと思って納品したものが全然ダメだったり、時間がなくて慌てて出したものが褒められることもある。本当によく分からない。

人によって評価が変わることもたくさんある。上野さんの書くものが好きだからと何度も指名して下さる方もいれば、この方の前では何を書いても全くダメ……みたいなケースもある。すごく”生もの感”というか、自分がどれぐらい書けているのか客観的に判断するのがかなり難しいと思う。

仕事をしていると明らかに「この人めちゃくちゃ書けるな……」という方との出会いがある。今年は特にそういう機会が多かった。(まだ半年残っているけど。)それはベテランの方だったり、自分よりも駆け出しの方だったり、キャリアとか年齢は全く関係なくて。そういう方の脚本は冒頭から、なんか、違う。台詞にオリジナリティがあるし、キャラがいきいきしていて、展開に強いうねりがあって、読み手の感情が動く。というかただただシンプルにめっちゃ面白い。今年は人が書いた脚本を読んで泣いたことも何度かあった。

コンクールから離れて、頂いたお仕事に真摯に取り組んできたけど、ここに来てまた「イチから脚本を勉強し直したい」という気持ちが膨らんでいる。とはいえ脚本は誰かと作り上げていくものだから、現場にふんばって居続けないと鍛えられない筋力みたいなものがあることも分かっていて。(特に直し作業とか。)上手く仕事とのバランスを取りながら、学び直しできたらいいなあ……と模索中。

『エルピス』の脚本のあとがきで、脚本家の渡辺あやさんとプロデューサーの佐野亜裕美さんが対談されているページがある。私はこの対談が大好きで、何度も読み返している。その中でも、佐野さんと初めて会った渡辺さんが、佐野さんについて語っておられるお話がすごく印象的で。
ちょっと一部抜粋。

私は会う前に、宮本さんや大根(仁)さんから、佐野さんは気骨のある優秀な若手のプロデューサーだと聞かされていたので、さぞ自信に満ち溢れた人が来られるのだろうと想像していたんです。でもいざ会ってみると、ものすごくしょぼくれていて(笑)。話をしていても、ずっと反省していて、これはおもしろいなと思いました。  私自身もそうなんですが、真剣にものをつくろうと思えば思うほど日々「反省」するのは当然で、常に自信満々ではいられないんです。だから、佐野さんの内省的な感じは、信頼できそうだなとも思いました。

渡辺あや. エルピス ―希望、あるいは災い― (p.500). 河出書房新社..

渡辺さんのこの言葉を読む度に、シナリオに対する自信の無さや、反省だらけの日々を、「真剣にモノづくりをしている証拠だから」と言ってもらえているような気がして、何度も背中を押されている。

最近、久しぶりに色んなシナリオ教本を読み返している。右も左も分からないまま読んだ当時よりも腑に落ちることが多くて、昔よりもするする内容が入ってきて驚いた。そういう意味では少しは上達してるのかもしれない。

自信を持つ日はそう簡単には訪れそうにはないけれど、真剣にモノづくりに向き合っているうちに、知らない間に上達してた……なんてことになればいいなあと目論む日々である。