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孤独に強い

中学1年の時、約半年間1人の時間があった。言葉の通り教室で1人だったのだ。

多くの一人っ子には頷いてもらえると思うのだが、一人っ子は『孤独』にめっぽう強いと思う。かく言う私もその一人。
小さい頃から、1人でいる時間の豊かさを享受して生きてきた。

中学1年生の春。
小学校の仲良かった友人は全員違うクラスになり、私だけ一人になった。教室でイチから友達作りをしないといけなくなった私は、どういうわけか一軍女子のメンバーに入った。

一軍女子には面倒くさいルールがあった。
化粧をしていること、縮毛矯正をかけたまっすぐな髪であること、制服のスカートを短くすること。
そしてKinKi Kidsの堂本剛のファンであること。(説明するまでもないがリーダー格の女子がKinKi Kidsの堂本さんのファンだった)

当時の私は、父親がコンサートホールで働いていた事もあり、小学生の頃からクラシックガチ勢だった。
「好きなアーティストは?」と聞かれれば「先月はリスト、最近はストラヴィンスキー」みたいなことを真顔で答える中学生だった。さらに中学に入ってからビートルズにもハマり、当時はクラシックかビートルズしか聴いてなかった。(平成の話)

KinKi Kidsは大変素晴らしいアーティストであることは大前提として、どちらが剛でどちらが光一かすら心底どうでも良かった私にとって、休み時間になる度に「剛カッコいい!」「剛ラブ!」と会話を続けることは苦痛極まりなく、早々にギブアップした。
そしてリーダー格の子に「ごめんやけどKinKi Kidsも堂本剛も好きじゃない」と言ったら、翌日から見事にハブられた。

その日からクラスでは基本ひとり。
他の女子グループに「ハブられたんで入れてもらえませんか」なんて言えるほど図々しくもなれなかった。

そんなこんなで始まった穏やかな日々。
これはこれで結構楽しかった。
休み時間になると、小学校時代のメンバーが心配して教室に遊びに来てくれるなど人の優しさに触れた半年でもあった。
しかし原則お昼ご飯は他クラスへ行くことは禁じられていたので、MDプレイヤーでベートーヴェンの交響曲を聴きながら昼食を食べた。当時の昼休みだけで相当数のクラシックを消化した気がする。
もちろん授業と授業の合間も、本を読んだりしてなかなか楽しく過ごした。

なぜ半年だったのかというと、リーダー格の女子がワンマン政治の果てについにハブられてしまい、私の所にやって来たのだ。
よくよく腹を割って話してみると、彼女も一人っ子だと言う!
「やっぱさー、うちら一人っ子はマイペースやからハブられるよなー」みたいなことを言われたが一緒にしないで欲しい。

ありがたいことに、歳を重ねれば重ねるほど色んな人に出会い、こんなマイペースな人間を面白がって受け入れてくれる人は増えた。
しかしその一方で、孤独な時間も恋しくなる日もある。

あのリーダー格の女子とは、社会人になってから一度会った。少しだけKinKiKidsの話をしたが、やはりお互いさほど相手に興味がなかったのか、結局そのまま音信普通になってしまった。

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