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45歳独身狂う説は克服できるのか?

筆者は以前より独身のまま45歳になった男性は狂うと主張してきた。そして今まさにアラフィフに突入し始めている氷河期世代の独身男性が中心となった事件が世間を賑わし始めている。

中でも最近特に目立つのが色恋沙汰による様々な事件である。いくつかの事件は大きな刑事事件にまで発展し世間の大きな話題となっている。

独身のまま50代を目前にするところまで来てしまった男性は、親の健康問題や周囲の友人たちが少しずつ大病を患ったりする姿を目にすることで、自分の人生に”終わり”があるという当たり前だが目を逸らして生きてきた事実に向き合うことになる。

フランスの貴族でありモラリスト文学家であったロシュフコーは『太陽も死もじっと見つめることはできない』という言葉を残している。10代の頃から人は自分が死ぬという事実を知って生きているが、死を直視して生きることは、太陽を見つめて歩くのと同じく人には不可能だ。人は身は若いうちは死をどこか遠くのこととして見て見ぬふりをして生きている。

しかし時が経ち、夕暮れ時になればあれだけ眩しかった太陽も赤い夕日となってはっきるとみることが出来る。人生の後半戦になれば、死も大きくはっきりとした姿で私たちの眼前に現われるのだ。

少しずつ近づいてくる死から目を逸らすことはとても難しい。しかしそんな逃れようのない死の恐怖を緩和してくれる存在がある。その最たるものが子供だ。老いて日々出来ることが減っていく自分とは真逆に、日々成長して出来ることを増やしていく子供の存在は、人生の後半戦における死の恐怖や老いの痛みを和らげてくれる。ジジババが孫に会うと発狂して喜ぶのは、中年よりも高齢者の方がより死の恐怖と老いの痛みを強く感じながら生きているからである。

子供や孫のいない中高年は、老いと死にたった一人で挑んでいくことになる。結婚の機会を逃してしまった中年は、一体何をどうすれば人生の後半戦を出来る限り健やかに過ごすことが出来るのだろうか?

趣味はどうだろうか?若い頃から続けてきた趣味を生きがいにすればどうだろうか?しかしこれがなかなかに難しい。独身で特定の趣味にのめりこんでしまうと、よほど素質や環境、業の深さに恵まれない限り、アラフィフになる頃にはやりつくしてしまう。そして情熱を失ってしまう。そして他に何かやることがあるわけでもないので、いつしか生きがいだった趣味を惰性で続けるだけになってしまう。

友人はどうだろうか?若い頃から気心の知れた友人たちと楽しく暮らしていければどうだろうか?こちらもあまり期待できない。年齢を重ねるごとに身近な独身友達はどんどん減っていく。同年代は結婚し子持ちになって飲みに誘いにくくなり、40代に入る頃には後輩たちも続々と既婚者になっていく。あれだけ悲惨な経済状況に追い込まれていた我々氷河期世代ですら、既婚率は7割であり、生涯独身はわずか3割しかいないのが現実だ。そしてそんな数少ない残った独身友達も、親の介護のために地元に帰ったり、もしくは健康問題から飲みに行くことが難しくなったりして会う機会は減っていく。そうこうしているうちに、自身にも介護問題や健康問題が降りかかってくるのだ。

そんな中で、独身中年は孤独と人恋しさに苛まれ始める。そして、いつしかこれまでの人生のマイナスを帳消しにしてくれる”運命の人”の存在に期待を抱き始めるのである。そんな時に、飲む相手がいなくて通い始めたスナックやガールズバーで、話し相手が欲しくて始めたSNSで、偶然知り合ったアラサーアラフォー辺りの女性に徐々に入れ上げていってしまうのだ。

独身アラフィフの心は乾ききった砂漠で水を求める遭難者のような状態だ。そこへ、女性からのちょっとして優しさという水を与えられると、すぐに飛びついてしまう。最初は理性で『相手は客だから優しく接してくれているだけ』『彼女にとって俺はSNSに沢山いるフォロワーの1人に過ぎない』と必死に自分の気持ちを抑え込んでいたとしても、付き合いが長くなるほどに理性の衣は剥がれ落ち、グロテスクな願望が露わになっていく。

気が付けば『彼女は俺のことを理解してくれる運命の相手だ』『彼女は明らかに俺を特別扱いしてくれている。もしかして俺に惚れてるんじゃないのか?』と勘違いし、ガチ恋アラフィフおじさんとなってスナックを出禁になったり、コミュニティでBANされ追い出されたり、頂き女子に美味しく頂かれたりしてしまったりするのである。

アラサーのスナック嬢やSNS友達の女性にガチ恋する50歳前後のおっさんに対する世間の風は冷たい。ツイッターなどでは思わせぶりな女が悪い!とおっさんに加勢してくれる勢力もいるが、現実ではイタイおっさんとして笑われたり、非難されたりするだけである。

では、勘違いしたりその結果傷ついたりしないように、ずっと独りで暮らせばよいのだろうか?しかし、その先に待っているのは暴飲暴食、酒、たばこ、ギャンブルなどへの依存である。現実から目を逸らしたい人々を、資本主義社会がぽっかりと大きな口をあけて待っているのだ。アルコールやニコチン、乱高下する血糖値、ギャンブルやスマホガチャによる射幸心煽り……それらは死や老いを忘れさせてくれる効果を持つが、その代償として健康や精神は確実に蝕まれて行く。

実際のところ、SNSやアプリ、スナックやガールズバーなどで若い女にガチ恋するおっさんは、SNSで女と楽しく話せる程度のコミュ力や、スナックに足げく通える程度の財力、バツイチなど異性との交際経験のあるおっさんが多い。残念ながらコミュ力や財力、女性経験どれにも恵まれなかったおっさんは、職場と家の往復をして、酒タバコギャンブルに身を焦がしながらこの世を去ってしまうのである。独身男性の平均寿命が67歳と、既婚者に比べて極端に低い理由がここにある。

婚期を逃し45歳を越えてしまった独身おじが、心身を健康に保って人生の後半戦を可能な限り楽しんで生きていくため、出来ることは何なのだろうか?45歳独身狂う説を克服するための答えはあるのだろうか?非常に難しい問いであるが、出来ることがあるとすれば……

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