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ストレスに押しつぶされている人たちへ

令和日本はストレス社会である。かつてないほど社会は豊かで便利になっているにもかかわらず、心を病む人の割合は年々増加しており、精神科はいつも満員御礼だ。

体罰やパワハラセクハラが当たり前であった日本社会も、昭和から平成、令和と時代が進むにつれて浄化され、今の時代は部活で選手にボディブローをする顧問もいなくなったし、新入社員の女性の肩を揉んでくるエロジジイも絶滅した。

こんなにも社会はクリーンで効率よく進化したにもかかわらず、人々の心を支配するストレスは一向になくなる気配がない。なぜなのだろうか?

ストレスの難しいところが目に見えないし数値化できないところである。稼ぎは良いが仕事の人間関係で悩むビジネスマンと、人間関係に問題はないが稼ぎの少なさに落ち込む父親のストレスを、定量的に可視化して比較することは不可能だ。そのせいでストレスの有無は個人による自己判断にゆだねられる場合がほとんどである。

最近はなんとかストレスを数値化、可視化しようと色々研究されており、筆者も会社のアンケートで『最近仕事どう?上手くいってる?』みたいな内容を手を変え品を変え質問されたが、とてもあのアンケートが各々が抱えるストレスを正しく定量化できるとは思えない。あんな毒にも薬にもならぬアンケートを作って金を儲けている人事コンサルの営業力は大したものである。

可視化も定量化も出来ないストレス、その正体とはなんなのだろうか?見えないストレスの姿を暴く上で重要な気づきを与えてくれるのがAmazonの創業者であるジェフ・べゾスが”ストレス”について語った動画である。

べゾスはストレスについて問われたい際に『ストレスは自分でどうにかできる問題に対して何も行動出来ていない時に強く感じるもの』と解説している。これは非常に正しく、人は自分が”どうにかできる”と思っている問題が上手く解決へ向けて進んでいない状況に対してストレスを強く感じる生き物だ。

べゾスはそんなストレスへの対処法として『とにかく問題に手を付ける』ことを勧めている。たとえそれを綺麗に解決するのに時間がかかったとしても、前進している状況であれば人はストレスを感じにくいからだ。無職であることがストレスの原因なのであれば、とにかく就活して面接の予定を入れるなど問題解決へ向けて行動することが、ストレスへの一番への治療法になる。

つまり、ストレスを感じやすい人というのは『自分がどうにかできる問題があるのに、それに中々手を付けられない人』ということになる。確かに夏休みを宿題に全く手をつけずに放置している状態で1日1日と夏休みを消化していると、残り日数が2週間を切ったあたりから少しずつ子供心にストレスを感じ出していたことを思いだす。やれば出来る問題をつい先送りしてしまう人ほど、ストレスを感じる機会が多くなるというのには納得である。

確かに現代社会は非常に便利で効率的になった半面、仕事や育児など人生で乗り越えなくてはならないイベントの難易度は上がり続けている。

数十年前までなら中小企業で銅線を切って軽トラで運んでいるだけの仕事で家族を養えるだけの稼ぎを得られていたが、今ではそんな仕事は派遣社員や外国人労働者が安価な給与で受け持っている。家族を養うだけの稼ぎを得るためには昔以上に身体か頭か気を使わなければならない時代となった。

育児に関しても同様で、昔は子供が多少怪我しても勉強が出来なくても仕方がないで済まされていたのが、今は少しの怪我でも許されないし虫歯菌を移すスプーン使いまわしなどもNG、歯の矯正から頭の形の形成まで行う親が増えてきている。幼児教育もどんどん進歩して東京ではお受験をする家庭が25%にまで上昇している。ドラえもんのように子供たちだけを公園に放置して遊ばせておいたり、クレヨンしんちゃんのようにお兄ちゃんに妹の世話を任せて親が買い物に行くなども、子供安全を守るうえで言語道断の時代になっている。丁寧で正しい育児を全ての親が行うことが求められる時代になっているのである。

このように仕事のプライベートもやらなければならない、やった方がいいタスクで溢れかえっているのが現代社会なのだ。自分で解決すべき問題に次々と着手して片づけられる人間であればよいが、それが難しい人はどんどんタスクを積み上げてしまう。そしてタスクが山積みであるというストレスで頭も両手もいっぱいになってしまい、何もできなくなりさらにストレスを背負っていくことになってしまう。そうして行きつく先が精神科である。

『ストレスは自分でどうにかできる問題に対して何も行動出来ていない時に強く感じるもの』とした場合、日々重ねられていくタスクを効率よく処理できる有能な一握りの人々以外は、常にストレスを抱えてながら人生を耐え続けるしかないのであろうか?否、そうではない。

ここで着目すべきなのが、人は自分が”どうにかできる”と思っている問題が解決へ向け前進していない時にストレスを感じるという部分である。つまり問題があっても”自分にはどうにもできない”と思っていれば、その問題が中々解決できなくても大きなストレスには感じないのである。

特別有能ではなく、また有能になるために必死に努力するエネルギーも今はないよ……という人がストレスフルな社会を生き抜いていくために必要なこと、それは問題やタスクを”今の自分ではどうしようもないこと”のフォルダにぶち込んでしまうことなのである。

特にタスクが重なっている時にこの思考方法は効果的である。誰しもが経験のある事であろうが、仕事の繁忙期と結婚や子の誕生などが重なってしまうと、あまりに膨大な数の問題とタスクの雨の中で、それなりに有能な人でもパンクしてしまうことが多々ある。そういったときに全てのことを”どうにかできるんだ!”と無理にできるフォルダに保存してしまうのではなく、”もうどうにもできない”フォルダに移して諦めてしまうのだ。そうすることで肩の荷を下ろすことが出来る

筆者もNISAやiDeCo、ふるさと納税を”情弱のためどうにもできない”フォルダに入れているため、いまだに何もできていない自分にストレスを1ミリも感じることはない諦めることがストレスを軽減させる最も簡単な方法なのだ。

ここまでストレスのメカニズムと解決方法を書いてきたが、では今の令和日本において最もストレスを貯め込みやすく、精神科へ一直線な人々とはどのようなタイプなのだろうか?問題に中々手を付けられない、夏休みの宿題を後回しにして遊んでしまう我々のような怠惰な人間であろうか?実はそうではない。

最もストレスを感じやすいタイプなのは……

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