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「生きてる」を感じる。

今朝、会社に行く前に書いた記事。
そこでも書いたが、今日はカウンセリングの日。

いつもは車通勤だか、今日は電車通勤。
繰り返しになるが、カウンセリングに行くからだ。

会社の最寄駅から会社までは歩いて20分強。
一応、本数は少ないながらバスもある。
最近欲張りつつあるお腹をケアするなら徒歩一択なのだが。。。

「今日はバスの気分」
行きの電車の中で決めた。
天気良いんだから歩けよと、自分に突っ込む。

6:20 駅に着く。
バスの時間までは約20分。
歩いた方が会社に早く着くのは間違いないが、それでも私はバスを選ぶ。
駅前のファミマで朝飯のおにぎりを買う。
最近のコンビニおにぎりは買う度に小さくなってる様に感じる。
だから、ちょっと高い「大きいサイズのおにぎり」を買う。
ホットのほうじ茶も外せない。
ほうじ茶は本当に美味しい。

バス停前のベンチで座る。
一口頬張る、美味い。
職場復帰をしてからは、朝ごはんを意識的に食べるようにしている。

ふと、「隣いい?」の声。

そう、いきなり知らない女が声を掛けて掛けてきた。

瞬間的に「絡まれたわ、ダル!」の感覚。

「一緒に食べても良い?」
女は、小さいワンタンのカップスープを持って隣に座る。
あれは確かに美味い。
私の聞き間違いでなければ、疑問系で聞いてきたはず。
だが、既に女は座っている。
断る余地はない。

「なんか、人殺しそうな目をしてた」
私の聞き間違いでなければ、確かに彼女はそう言った。

「ん?」
当然僕はそう返す。

「いや、なんか目を細めて何かを睨んでる様な感じだった」
女なりに言葉を選んだのだろう。
あわせて、私の顔真似までする始末。

女は明らかに酔っ払っていた。
ワンタンスープと一緒に持っていた割り箸の片方を落としてた。
しかし、何故か醸し出す言葉・空気には魅力があった。

2つ隣の駅のキャバクラで働いているという女。
仕事終わりになんとなく飲み足りなくて、この時間まで飲んでいたとの事。
第一感はとにかく信用に置けない感じ。
でも、根っこの所では嫌いではない。それは自分でもわかっている。

テンション高くしゃべり倒しているが、ワンタンスープが今にも溢れそう。
というか、ほとんど飲んでないだろ、これ。
私は当然声を掛ける。
「溢れちゃうよ」と。。。

どうも、彼女はヒップホップを愛好しているようだ。
私は彼女のヒップホップへの思いを聞かされるのだが、あいにく私はヒップホップへの見識が殆どない。
それでも、彼女の言葉を何とか聞こうと目を見て聞き続けた。
当然ほとんど理解出来ない。すまない。

でも、今朝、ブックマークから消したYouTubeに会話のヒントがある事にはすぐ気づいていた。
YouTube(特にショート動画)は、時折、全然自分の知らない世界がおすすめで出てくる事がある。
そのおすすめから、新しい世界を見つけることは少なくない。
実際、ラップバトルというのかMCバトルというのか、キチンとした名称は良く知らないが、そんな世界がある事をYoutubeから教えてもらっていた。
彼らの即興性は本当に凄い。どんな脳みその構造をしてるのだろうか。その世界を知らない自分からすると、あの数分間は、ある意味で究極のコミュニケーションにも見える時がある。

私はヒップホップに見識が殆どない事を前提として、少しその話を彼女にした。その会話の中で、私がとあるラッパーの方の名前を出した時、彼女は、ちょっと目を見開き僕の左肩をバシッと叩いた。

僕は久しぶりに「生きてる」と感じた。
それを私はのちに気づくことになる。

話をしている内に、彼女は、必ずしもそのラッパーを認めている感じではないのは何となくわかった。
だが、酔っ払いの最中、駅前で適当に声を掛けた男からその名前が出てきた事に刺激を感じたのだろう。
彼女の言葉は止まらなかった。
その頃になると、実は私も何とも言えない居心地を深いところで感じていた。それも、のちに気づくことになる。

バスがやってきた。

駅前なので始発だが、2分もすれば出るのを私は知っている。

「ごめん、俺、あのバス乗って会社行かなきゃいけないんだ」

何のためらいもなく、呟いた。

「そうだよね。マジ楽しかったわ。ありがとう」
彼女は言った。
その奥に何があったとしても、その言葉は単純にうれしかった。

3分後、発車したバスの車内から外を見ていた。

正直、ちょっと探してる自分がいた。

彼女はもういなかった。

そう、少し後悔していたのである。

何でバスに乗ったのか。

確かに、早めに会社に行こうとして1日がスタートしたのは間違いない。
始業前に処理しておきたい仕事も確かにあった。。。

でも、そんなことどうにでもなる事だった。

会社の最寄駅とはいえ、多分もう会う事はない。
仮にすれ違ったとしても、お互いに気づく事はないだろう。

ただ、あの15分の中で、私はいろんな事を教わった気がしている。
気づかせてくれる人だったのではないか。
あそこでバスに乗らなければ、更に何か得られたのではないか。
固く考え過ぎだろうか。

周りから見たら、「朝から酔っ払いに絡まれてかわいそう」だの、「あのおっさん、なんか騙されたりしなきゃ良いけど」みたいな目線で見られていただろう。私が、第三者なら多分そう見る。

それでも、私は今日初めて会って、多分もう会うことは無い彼女のあの一叩きで何か「生きてる」を感じたのである。
その「生きてる」が何なのかを今直ぐにうまく解す事はできないが、とにかく感じたのである。それは間違いない。

彼女の一言一言には力があった。
コピペではなく、創りだされてる言葉。

なんか羨ましかった。
私に無い何かを彼女はたぶん持っていた。

それでも、私はバスに乗る選択をした。
それもまた事実であり、明確な私の現在地である。
それを完全否定してはいけない。

10分も掛からずして会社に着いた。
結局、始業前にやろうと思っていた仕事にも手を付けず、最近常に携帯しているノートにこの15分の事を書いた。

その内、忘れてしまうのかもしれないが、何となく忘れたくない15分だったので、その一部をここに残すことにした。

明日からまた車通勤である。

何とか、4月10日中に書き終える事が出来てほっとしている。

おやすみなさい。


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