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最初の関門 洗い場

おそらく多くの飲食人が初期にぶつかるであろう、洗い場の話です。

料理人であれ、サービスマンであれ

「洗い場をうまく回すこと」は必要な技術でしょう。


「そんなニッチな部分の話するの?」

そんな声が聞こえてきそうです。


えぇ、しますとも。

洗い場は一見地味な仕事ですが、営業を回す上での重要度は高いですから。

単純に見えるこの仕事を、しっかり考えて、効率よく回す。

いい仕事の土台になるであろうこのポジションを細かく解説していきましょう。

自分の経験をもとにしてるので、店に洗浄機があることを前提としてお話ししますね。

少し自分の話をします。

専門学生時代、冬休みを利用して都内の有名イタリアンで研修させてもらいました。

オープンキッチンでありながら、新人社員さんは、お客さんに見えないように背中をど突かれてる風景。

前の世代の激しさがまだ少し残ってる空気

それを感じて、心の中でここに就職はしないと誓いました(笑)

主な仕事は、そう洗い場。

これが辛かった...

皿や調理器具を洗って返すだけなんです。

でもその仕事がとにかく追いつかない!

営業中の殺伐とした空気の中、溜まっていく皿

素早く片付けていかなければ

でも焦って割ってしまっては終わりだ...。

営業が終盤に入り、下がってくる皿も少なくなってくる。

そこでほっと一息...    とはいかないんです。

今度はキッチンから調理器具がどんどん洗い場に雪崩れ込んでくる!

皿より場所を取る機材たちによって洗い場はスペースをどんどん失っていく。

たかが皿洗いで追い込まれていく自分...

自信を失い、トイレでこっそり泣いてました。

自分の苦い思い出です。

さぁさぁ

そうならないためにもしっかり頭に入れときましょう!

まずは洗い場の作業を細分化しますと

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・置かれた洗い物を流しに移す

・事前の手洗いが必要なものを、スポンジで洗う

・洗浄機のラックに並べる

・洗浄機を回す

・洗浄機から出す

・必要なものは水分を拭き取る

・元の場所に戻す

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となります。

言葉にするとやけに簡単に見えてしまいますね(笑)

ではこの動作の中で何を気を付けていけばいいか。

動きの解説の前に、洗い物をいくつかの種類にカテゴライズしておきます。

1 調理器具

鍋とか、ボウルとか、金物が多いですね。

割れ物では無いし、ステンレス製のものは軽く水気を取れば、後は自分の熱で乾いていきますので、他よりは神経を使わなくても大丈夫。

ただ、サイズが大きいものもがあり、1つでスペースを取られたりしますね。

あと割れない代わりにぶつけたら大きな音がしますので注意です。

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2 食器

磁器を扱ってる店が多いかと思います。割れ物です。

大小様々ですが、同じ種類の食器は1つのスペースで重ねて貯めておけるものが多いです。

高級店などでは、拭き跡を残してはいけなかったりしますので

事前の手洗いでしっかり汚れは落としときましょう。

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3 ガラス

主にドリンクを提供するグラス、また食器の一部もガラス製品があります。

サイズは小さいですが、やはり割れやすい。

また指紋などの汚れが分かりやすので、拭き取りはしっかりと。

一番神経使わないといけないカテゴリーかと思います、特にワイングラス。

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4 カトラリー

ナイフやフォークのシルバーたちです。

シルバー専用の平らなラックやスペースを使うことが多いかと。

数が多いので繰り返しの動作スピードを上げる必要があります。

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以上4種類です。

では参りましょう。

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・整理整頓、同じ種類のものをまとめて動かす

何事もそうですけど、整理整頓は大事です。

私生活が大雑把でも全然構わないんですが、仕事では心がけましょう(笑)

ゴチャゴチャした環境は自分の判断を遅らせます。

そして、出来る限り同じ種類のものをまとめて動かすことで

同じ動きの繰り返しで作業ができるので、効率的。

洗い上がりを一旦置くスペースも、お店によっては狭いので

同じ皿や、同じ型の調理器具は重ねることで、限られたスペースの中で仕事がしやすいです。

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・割れ物と金物を接触させない

主にラックに洗い物を並べるときは

割れ物と金物は一緒に入れるにしても、十分な距離を持つことが必要です。

理由はもちろん、ぶつかって割れる可能性があるから。

ラックはスライドさせて洗浄機の中に入れるので、その際金物が動くかもしれませんし

洗い終わりを取り出す際に、金物を食器にぶつけてしまうかもしれません。

その時に破損が起きなくとも、この小さなダメージの蓄積から、いずれ壊れていきますので注意しましょう。

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・目を見切らない、動作を最後を丁寧に

これは別の記事でも繰り返しお伝えすると思います。

物を倒したりぶつけたりの大きな要因です。

忙しい営業中にはすぐに次の動作に移っていかなければなりません。

ただ、今やっている動作が終わる。その直前に

次の動作に意識が完全に行ってしまう。

そうして目を見切ってしまい、物を倒す、壊すことにつながります。

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また、動作の最後こそ丁寧に意識する必要があるでしょう。

持ってる物が作業台に着く最後の最後

物を置いて、かかってた指を引く瞬間、手を引く瞬間

時間にして1秒にも満たない、ほんのあと少しを急ぐことによって

置ききれなかったグラスが落下の衝撃で割れる

引いた手に食器が引っかかり、床に落ちてく

そんな光景を何度も見てきました。

素早い動きは大切ですが、それ以上にミスをしない事が重要です。

ミスによるタイムロスは甚大です。お気を付けて。

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・導線の邪魔になるところにものを置かない

・背の高いものを手前に置かない

配置についてです。2つまとめて解説します。

レストランのどんなポジションでも言えるのですが

作業は物を移動させることの繰り返しです。

先ほどお話しした

物を手前に引く、横にずらす時に、近くの物のぶつけて倒す、壊す

このもう一つの原因として、配置が考えられます。

「そもそも、そこになければぶつからないじゃん」ということ。


イメージしてみてください。

あなたは洗い場にいて、洗い物しています。

そして手に取った洗い物

この持っている洗い物がどのような動きをするのか、頭の中で線を引いてみてください。

その導線上に、別の洗いものが置かれて、通行の邪魔をしていませんか?

導線上にあるもの、つまりこれは接触の可能性があるものです。

自分にとって奥にある物を引き寄せれば

当然その導線上にある障害物は増え、接触する可能性が高くなります。

自分の作業の流れを線で引いて、なるべく障害を除いておきましょう。

とはいえ奥のものを取らなければいけない時もたくさんあるでしょう。

そんな時、自分は最短距離より、迂回させるように遠回りさせて手前に引き寄せてます。

また、背の高いグラスやボトルなど

これはなるべく奥に追いやっておきましょう。

手前にあると、とにかく引っ掛けやすい。

また、導線を塞いでる範囲が広すぎるので、すごく作業しづらい。

背の高いグラス、その奥の小さなものを取ろうとするとか最悪です。

やめましょう。

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・ラックに物が残ってないか確認する

これは洗浄機を通した後の話ですね。

洗い終わった物をスペースに置いて

ラックを縦にして洗浄機に立てかける、その時

ラックのスミに残ってたカトラリーが

がしゃーーーーーーーん!!!

透明で見落としてたグラスが

ぱりーーーーーーーーん!!!


はい、怒られる。

そうならないためにも、一度確認してからラックはしまいましょう。

自分はしまう前にラックを軽く揺らして、何も無いか確認しています。

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・皿とグラスは熱いうちに拭く

同じ物をもう一度洗う二度手間を防ぐためのものです。

グラスの水跡はもちろん

レベルの高いお店では、お皿のわずかな水跡も許しません

洗浄機にかけた食器やグラスは、熱湯のため熱くなってますし

洗浄機の薬品によって乾きやすくなってます。

だからこそすぐ拭きあげれば綺麗になるのですが

置いておくと、すぐ乾いて水跡が残ります。

またグラスの場合、熱いうちに拭かないと、水臭さが出てしまいます。

冷めてしまったら、洗浄機のすすぎ機能でもう一度状態を戻しましょう。

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・洗い回しがいるものを把握しとく

よっぽど機材が潤ってない限り、一つの営業では洗いまわしが必要になります。

グラス、食器、カトラリー

必要なものはそれぞれのお店で違ってきます。


たとえあなたが、スムーズに洗い場を回せていたとしても

欲しいタイミングで欲しいものがなかったら

それはいい仕事とは言えませんし、全体の進行の遅れに直結します。


ですので

このお店で洗いまわしが必要なのは何か

お店にある数はいくつか

いつもどれくらいの時間に補充が必要か

しっかりと把握しておきましょう。

また、使う機会が少ないが故に、数もまた少ない機材があったりします。

特別なグラスとかですね。

たまたまその機材を使う事が多かった時

先輩が使おうとして、機材がもう無いことに気づきました。

アワアワする先輩に

サッと洗い上がったソレを差し出す。

デキるヤツだと思いませんか?

そんな仕事を目指しましょう。

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・洗浄機を止めない

これで最後です。

洗浄機は、ラックを入れ、扉を閉め

稼働が始まったら、あとは洗い上がりを待つことになります。

この稼働中の動きが重要です。

理想的なのは稼働が終わったら、すぐに次のラックをスライドさせて

できるだけ絶え間なく洗浄機を稼働させ続けること。

ですから

洗浄機が稼働しているうちに、次に洗浄機に何を入れるか考えて行動しましょう。

例えば

スペースを取るけど手洗いが楽な、大きいボウルなどの機材を洗浄機へ

回してる間に手洗いに少し時間のかかる食器に取り掛かる

終わったら、すぐに手洗いした食器のラックを洗浄機へ

大きいボウルは拭き取りが簡単なのでサッと拭いてとりあえず放置

そしてまた回してる間に次の手洗いへ取り掛かる

洗い上がった食器は機材よりラックに入ってる数が多く、拭き上げに時間がかかるので

拭き上げに時間がかかる分、次に入れるラックにはまた手洗いが楽な機材たちで埋める

拭き上げたもののスペースが無くなってきたら、同じ種類を重ねておいた物をまとめて元の場所へ戻す


こんな感じで

ラックスペースをどれくらい埋めるか

手洗いにはどれくらいかかるか

拭き上げにはどれくらいかかるか

それぞれ違う特徴の機材たちを組み合わせ

うまく動かしていきましょう。

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以上、洗い場に関するアドバイスになります。

いかがでしょうか?

自分でも洗い場一つでここまで書けるとは思いませんでした(笑)

皆さんの手助けになれば幸いです。


ではまた。


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