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コーヒーは健康の味方?コーヒーに秘められた2大成分と炎症性腸疾患の関係

こんにちは。みなさま、コーヒーは飲みますか?
僕はコーヒーが大好きです。
毎朝、目覚めとともにコーヒーを淹れて、その香りと味に癒されます。

仕事用のマイボトルにもコーヒーがいつも入っています。
コーヒーを飲むと、気分がリフレッシュされて、仕事や勉強にも集中できます。

コーヒーは、僕にとって、生活のエネルギー源なのです。

そんなコーヒーが、僕たちの健康にも良い影響を与えてくれるかもしれない
ということは結構ちゃんとしたエビデンスがあり、
特にポリフェノールの健康効果と、カフェインによる脳の覚醒はよく知られています。

先日、コーヒーと炎症性腸疾患の関連についての最新の研究が
臨床栄養のトップジャーナルである『American journal of clinical nutrition』
という雑誌に掲載されたもので、紹介したいと思います。

コーヒーの健康機能は上記の通りポリフェノールやカフェインで
ほとんど説明されてしまいますが、僕のイメージでは炎症性腸疾患は
ちょっと遠いかなあと思っていたのですが、
メンデル化ランダム試験というしっかりとしデザインで研究がされていたので、
ぜひ紹介したいと思いました。

コーヒーに秘められた2大成分:カフェインとポリフェノール

コーヒーには、カフェインとポリフェノールという2大成分が含まれています。
今回の論文紹介の前に、簡単にこれまでコーヒーの健康機能として報告されてきた、
カフェイン、ポリフェノールの健康機能を紹介します。

カフェイン

カフェインには、眠気を覚ます、消化を促す、基礎代謝を上げるなどの効果があります。
また、集中力を高める効果もあります。

主要なメカニズムとしては、脳神経を刺激して、
ドーパミンやノルアドレナリンといった物質を放出させます。
これにより、脳の活動が活発化されて、注意力や記憶力が向上します。

また、カフェインは、脳が疲れるとたまってくるアデノシンという物質の働きを妨げます。
アデノシンがたまると、脳は「休まなくちゃ」と判断して眠気を催すのですが、
カフェインがアデノシンの受容体と結びつくことで、その作用を阻害します。
これがカフェインを摂ることで、眠気を覚ますことができるメカニズムです。

コーヒーポリフェノール

コーヒーに限らずポリフェノールには、抗酸化作用や抗炎症作用などの効果があります。
ポリフェノールは植物の機能性成分の最も代表的なものの一つと言って良いでしょう。
ポリフェノールは

  • 糖尿病予防

  • 脂肪の燃焼促進

  • 肝臓の健康を守る

  • がんを予防する

などの効果が期待されています。
また、ポリフェノールは血栓を作りにくくする、溶かすなどの作用もあり、
動脈硬化性疾患の発症リスクを下げるという報告もあります。

コーヒーには、カフェインとポリフェノールという2大成分が含まれており、
これらが僕たちの健康にも幸せにも貢献してくれる素晴らしい飲み物なのです。

ちなみに、目安としてブラックコーヒーを1日に2杯以上飲むのがおすすめですが、
緑茶にも同様の機能性成分が含まれていますので、
必ずしもコーヒーにこだわる必要もないと思います。

コーヒーと炎症性腸疾患の関連についての最新の研究

研究の概要

では、ここから今回の論文についてもう少し詳しく書いていきたいと思います。

コーヒーには、健康効果が報告されていますが、
炎症性腸疾患の発症や進行にどのような影響を与えるかについては、
これまでの研究では明確な結論が得られていませんでした。

一部の研究では、コーヒーの摂取が炎症性腸疾患のリスクを低下させる
という結果が出ていましたが、
一方で、炎症性腸疾患の症状を悪化させるという結果も出ていました。
また、摂取量や種類、個人の遺伝的な特徴などによっても、
効果が異なる可能性がありました。

そこで、この研究では、コーヒーと炎症性腸疾患の関係を、
血液中のカフェイン濃度という指標を用いて調べました。

血液中のカフェイン濃度は、

  • コーヒーの摂取量や種類

  • 遺伝的なカフェイン代謝能力

に影響されます。
つまり、血液中のカフェイン濃度は、
コーヒーの摂取に関する”個人差”を反映するものと言えます。

そこで、この研究では、血液中のカフェイン濃度を測定するだけでなく、
カフェイン代謝能力に関係する遺伝子の変異(SNP)を調べることで、
カフェインの利用を比較しました。

このような試験デザインをメンデル化ランダム試験と呼びます。
メンデル化ランダム試験は、遺伝子の変異がランダムに生じることを利用して、
ある因子と疾患の因果関係を推定する統計的な手法です。

コーヒーの摂取量及び代謝能力に関する個人差を考慮しながら、
コーヒーと炎症性腸疾患の関係を客観的に評価することができるので、
近年急速に広がっている、頑健で新しい解析方法です。

研究の結果

この研究では、欧州の15カ国から約50万人の参加者を対象に、
カフェイン代謝能力に関係する遺伝子の変異と炎症性腸疾患の発症の関係
を調べました。
主な結果は下記の通りです。

  • 血液中のカフェイン濃度が高いと推定される人は、炎症性腸疾患のリスクが低いことがわかりました。

  • 特に、潰瘍性大腸炎のリスクは、血液中のカフェイン濃度が高いと推定される人で、約30%低下していました。

  • クローン病のリスクも、血液中のカフェイン濃度が高いと推定される人で、約10%低下していました。

この研究の結果は、コーヒー好きにとっては朗報ですね。

研究の特徴と研究デザインの解説

この研究の特徴は、なんと言ってもメンデル化ランダム試験という手法を用いたことです。
上述しましたが、メンデル化ランダム試験の利点は、
因果関係を推定することができることです。

最近ではたくさん報告がされるようになってきましたが、
それでも試験デザインだけでも、かなりのインパクトを感じます。

通常の観察研究では、コーヒーの摂取と炎症性腸疾患のリスクの関係を調べることはできますが、
その関係が因果関係であるかどうかはわかりません。
なぜなら、コーヒーの摂取と炎症性腸疾患のリスクの間には、
他の要因が介在する可能性があるからです。

例えば、
・コーヒーの摂取量や種類
・個人の遺伝的な特徴
・食生活やストレスなどの環境的な要因
などが、コーヒーと炎症性腸疾患の両方に影響を与える可能性があります。
これらの要因をすべて考慮することは極めて困難です。

メンデル化ランダム試験では、遺伝子の変異を用いることで、
これらの要因の影響を理論上排除することができます。
なぜなら、遺伝子の変異は、他の要因に影響されないと仮定しているからです。

ただし、実際には、遺伝子の変異が因子に影響を与えるかどうかは、
必ずしも明らかではありません。

例えば、カフェイン代謝能力に関係する遺伝子の変異が、
血液中のカフェイン濃度に影響を与えるかどうかは、
必ずしも明らかではありません。

したがって、メンデル化ランダム試験は、あくまで統計的な推定であり、
確実な因果関係を証明するものではありませんが、
観察研究で因果にまで言及できる優れた研究デザインと言えます。

緑茶と炎症性腸疾患について

ここから、だいぶ話が変わりますが、
最後に、日本人と関連が高い緑茶についても、
東北大学の研究チームによる研究を紹介したいと思います。

緑茶は、日本では昔から親しまれている飲み物ですが、
もはやお馴染みというレベルだと思いますが、
緑茶には、カテキンというポリフェノールが豊富に含まれており、
これが抗酸化作用や抗炎症作用を持っています。

この研究では、緑茶が機能性便秘との関連を調べています。
日本の約1万人の参加者を対象に、
緑茶の摂取量と機能性便秘の発症の関係を調べ、
その結果、緑茶を1日に5杯以上飲む人は、飲まない人に比べて、
機能性便秘のリスクが約40%低下していました。

アウトカムが機能性便秘なので、炎症性腸疾患については、
直接は言及されていません。
また、炎症性腸疾患の主な症状は下痢であるため、
機能性便秘は炎症性腸疾患のメジャーな症状ではありませんが、
機能性便秘も炎症性腸疾患も、お互いにリスク因子であることや、
緑茶にも抗炎症効果のあるカテキンが含まれていることから、
炎症性腸疾患についても、今後研究がされると良いなあと思っています。

この記事では、コーヒーと炎症性腸疾患の関連についての最新の研究と、
緑茶と機能性便秘の関連などについて紹介しました。

個人的にはポリフェノールはコーヒーやお茶などの
飲み物として摂取することもあり、
体内に吸収されやすく、健康機能が発揮されやすい機能性成分だと思っています。

緑茶とコーヒーのどちらが良いというのは
僕はそんなに気にしていなくて、
どちらでも良いので、自分の生活習慣、食習慣に合ったもの
を摂取すると良いと思っています。

しかし、どちらも飲みすぎると、胃や腸を刺激したり、
脱水を引き起こしたり、睡眠に影響したりすることがあります。

そういったデメリットには注意をしながら摂取していただければと思います。

それでは、また別の記事でお会いしましょう。

参考文献

  • Unreaveling the link between plasma caffeine concentrations and inflammatory bowel disease risk through Mendelian randomization. American journal of clinical nutrition, 2023.

  • Caffeine and cognitive performance: a meta-analysis. Neuroscience and biobehavioral reviews, 2010.

  • Caffeine and the central nervous system: mechanisms of action, biochemical, metabolic and psychostimulant effects. Brain research reviews, 1992.

  • Coffee consumption and risk of type 2 diabetes: a systematic review. JAMA, 2005.

  • Coffee polyphenols suppress diet-induced body fat accumulation by downregulating SREBP-1c and related molecules in C57BL/6J mice. American journal of physiology. Endocrinology and metabolism, 2011.

  • Coffee consumption and reduced risk of hepatocellular carcinoma: findings from the Singapore Chinese Health Study. Cancer causes & control, 2007.

  • Coffee consumption and risk of cancers: a meta-analysis of cohort studies. BMC cancer, 2010.

  • Coffee consumption and risk of cardiovascular events and all-cause mortality among women with type 2 diabetes. Diabetologia, 2009.

  • Coffee consumption and mortality due to all causes, cardiovascular disease, and cancer in Japanese women. Journal of nutrition, 2012.

  • Coffee consumption and risk of stroke in women. Circulation, 2009.

  • Green tea consumption and the risk of incident functional disability in elderly Japanese: the Ohsaki Cohort 2006 Study. The American journal of clinical nutrition, 2012.

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