見出し画像

家に湧き出てくる虫は殺す?

いつからか、家に出てくる虫を殺さなくなった。特に蜘蛛。見かけたら透かさずティッシュを持ってきて潰して殺していた。

どうやら家にいる虫を見ると拒絶反応を示すらしい。当時の不快感を思い返せば、そこには間違いなく、外のものが内に入ることを拒む意識が働いていた。養老孟司先生は、自然と都市を二分した文明が誕生した時期からこの意識が芽生えたと指摘されていて、ごもっともだと思う。

例えば、都市に鳥の死体があれば不気味に思うが、森にそれがあっても何ら驚くに値しない。コンクリートに横たわる鳥の死体が気味悪く見えることは容易に想像がつくが、以前山で見かけた鳥の死体は土と調和して全く自然であった。死は自然の法則に従うが、自然を排除する都市はそれを受け付けない。それをまざまざと見せつけられた瞬間だった。

これはちょっと極端な例だが、われわれ文明人は無意識のうちに外と内を分けている。しかし、都市と自然の性質の違い、そしてその違いが認識の問題に過ぎないことを理解すれば、不思議と内と外の境界がぼやけてくる。

自然を相手に仕事をしている友人は虫を愛しているようだが、彼の意識には内と外の境界が全くない。彼自身が自然と化している。それまでではなくとも、僕が家に湧いてくる虫を殺さないのは、恐らくこの境界線の薄さに由来している。

もしよろしければサポートお願いします〜 (書籍購入代に充当させていただきます。)