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自分だけのアルハンブラ物語を紡ぐ(スペイン・グラナダ)

グラナダ編

グラナダと言えば1492年のグラナダ陥落。親の名前より聞いたフレーズ。キリスト教によるイスラム勢力からの国土回復運動のレコンキスタが完了した出来事である。

世界史旅をしている僕が、こんな重要な歴史を抱える街に行かないわけがない。グラナダ陥落を象徴するアルハンブラ宮殿へ向かった。

アルハンブラ宮殿

イベリア半島最後のイスラム王朝であるナスル朝によって建てられた宮殿である。今まで宗教が混在した建築を見てきたため、イスラム様式単体の建築が見られることを非常に楽しみにしていた。

アルハンブラ宮殿はW.アーヴィングの『アルハンブラ物語』がきっかけとなって、世界中で有名になったらしく、彼の像が宮殿の入口に立っている。
僕はヨーロッパ渡航前に、読み疲れてしまう程に長いこの本を読んだ上でアルハンブラ宮殿を訪れたため、アーヴィングの像を見つけて感激した。皆が素通りする中で僕を感激させる力を秘める知識の大切さを改めて感じる。

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チケット

渡航前に友人からアルハンブラ宮殿は数ヶ月前に予約しないと入れないと言われたが、確かにその通りで、サイトを見ると数ヶ月後まで予約が埋まっている。
しかし、直前でもチケットを購入できるチャンスは十分ある。ひたすらサイトを確認していると、稀に空き日程が現れる。結果的に、運良くグラナダ到着の2日前に購入することができた。

簡単にアルハンブラ宮殿の概要を説明しておくと
①カール5世宮殿(無料)
②ナスル宮殿(有料)
③アルカサバ **(有料)
**④ヘネラレフェ
(有料)
の4つに大きく分けられる。

①カール5世宮殿

レコンキスタ完了後、カール5世が建てたもの。円形の建築物で円形闘技上を彷彿とさせる。

彼はスペイン王カルロス1世であるのみならず、神聖ローマ皇帝カール5世でもあり、道理でヨーロッパの至る所でシャクれ顎を見るわけ…。イタリアの巨匠ティツィアーノは、彼の肖像画を描くとき、いかにシャクれ顎を目立たず、立派な顔に仕上げるかを試行錯誤したらしい笑。


②ナスル宮殿

アルハンブラ宮殿のメイン。有名なライオンの中庭もここにある。

以前にメスキータ等でキリスト教と融合したイスラム建築に触れてきたが、イスラム単体は初である。その特徴である幾何学模様アラベスクを存分に堪能できる。

言葉を失ってしまう程に美しい装飾。
床のタイルにも注目してみると、それぞれ違う絵柄が描かれている。

天井の壁画にも着目。

意外に小さい宮殿で60分程でくらいで見学終了。アルハンブラと言えばナスル宮殿!とだけあって見応え満載。現イスラム教圏に行って建築を比較してみたいものだ。

ちなみに、ナスル宮殿はライトアップされた夜間に見学することが可能で、昼とは違った顔を見せる(らしい) こちらは予約が非常に困難なので、早め早めにどうぞ。次回行くときは夜の部に必ず行こう🤔

③アルカサバ

軍事的衝動が絶えなかったことを象徴する要塞。今はグラナダを一望できる場所として機能している。

旗は手前から、グラナダ・スペイン・アンダルシア・EUを表している。手前の旗を一瞬ナスル朝に関係するものかと思ったが、勿論違う…。

ヘネラレフェ

広大な庭園。豊かな緑に囲まれて、ナスル宮殿とアルカサバ見学で疲れた体を癒してくれる。

シェーンブルン宮殿、ヴェルサイユ宮殿、そしてナスル宮殿といい、共通して庭園が置かれ、欠かせない要素となっている。庭園は富の豊かさを誇示するツールとしてでもあるのだろう。

最後に…

苦労してチケットを取って良かったし、アルハンブラ宮殿のために、マドリードから少しアクセスしにくいグラナダに行く価値はあると思う。

しかし一方で、冷静に振り返ると「1492年 グラナダ陥落」を感じられたことが、そう思える大部分を占めている気がする。机上の世界史が目の前に現実として広がる感動は筆舌に尽くし難い。逆に、知識がなければ楽しめなかったような気がする。

実はもう一つ、世界史を感じられるグラナダの王室礼拝堂にも足を運んだ。レコンキスタを完了させたイサベル1世フェルディナント2世が眠っており、棺が公開されている。(撮影禁止)
不謹慎極まりないが、上記と同様の理由で棺を目の前に感激してしまった。

僕は世界史を軸に観光を楽しんで旅をしているが、やはり個々人で色んな楽しみ方があると思うので、自分なりの楽しみの方の軸を見つけることが大切なのかなと思ったりしている。反対に、一番良くないのが、受動的な態度なんだろうなぁとも。

【余談】

その夜、宿で出会った方にオススメして頂いたタパスバーでディナーすることに。お酒1杯2€で小皿もついてくる。非常にお得なのでオススメ。

そこで出会ったスペイン人の方がアジアが好きなことで意気投合。最終的には3時間も語り続けた。しかも、全て奢って頂いて本当に感謝の言葉しかない…。

そこで気付かされたのは、日本人である自分が日本のことを全く知らないこと。歌舞伎・能・浄瑠璃などの伝統芸能、ジブリ作品・マンガなどの日本の有名作品を見たことがなく、語ることが出来ない。これは致命的なことで、海外において自分が日本人であることの価値が皆無である。

語学は当然だが、それに加えて、海外の人との交流には日本人たるアイデンティティを確立する必要があることを痛感した。帰国後はその方面にも努力していこうと思う。

楽しさと同時に挫折を感じさせられる、ほろ苦いディナーとなった。




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