死と美

死と美。

『鬼滅の刃』で煉獄さんというキャラクターが、こんかことを言う。

老いることも死ぬことも

人間という儚い生き物の美しさだ

老いるからこそ

死ぬからこそ

堪らなく愛おしく

尊いのだ

捉え方によっては対極にあるようにも思える死と美はどのように結びついているのか。軽くこれについて考えてみたい。

仮に、死がなかった世界を想像してみる。その中で人々はどう生きるのだろうか。

思うに、怠惰に耽るのがオチではないか。本来人は怠惰な生き物なのだから。死なないなら、食のために狩に出かける必要はないし、日々を無為に過ごしても何にも思わない。なぜなら明日は無限に続くのだから。過ぎ去った日々を反省することもない。

逆に言えば、死があるから人は日々を精一杯生きるのだ。精一杯生きるから、文明は進歩するし、文化は絶えず生み出される。つまり、死がなければ文明や文化はここまで進歩しなかったのではないか。

トロイア戦争を描くホメロスの『イリアス』が2500年以上も人々を魅了して止まないのも、死と向き合う人間が見せる勇姿に惹かれるからなのではないだろうか。その姿、あるいはそれを高らかに歌い上げる詩は美しい。

文明や文化などに美が宿る理由の淵源には死があるように思える。死なくして美はないと思えば、日々精一杯生きる人々の姿が愛おしく感じる。

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