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6弦ベースの不満を考える。

■テキトーベースみち(6)


「6弦ベースに不満がある!」

って、いきなり穏やかじゃない感じですが、別にあのメーカーが嫌いだの何だの、あれこれ悪口を言いたいわけではありません。

「6弦欲が凄い!久々に試奏するぞ!」と、改めて数本弾いてみた結果、ま~、微妙でビックリしてしまった為、そのモヤモヤ具合を言葉にしてみたくなった次第です。

こんなにしっくり来ないか、ピンと来ないか、弾きたくならないか、この微妙な気持ちを解消する一本が見つからない限り、こりゃ無理だなと。

で、その原因って何なのか、それをちょっとまとめたくなりました。


【1】パンチが弱い


真っ先に気になるのはこれ。

小綺麗で大人しい、とにかくパンチが無い、音が前に出てこない、そのストレスがヤバイぞと。

高域特性も良くない、素直に抜けてこない、そのレンジの狭さにびびるってぐらい、6弦は何か変な癖がある物ばかり。

シンプルなパンチ、音抜け、実用性、それがまず欲しいのに、凝ろう凝ろうとして音がどんどん引っ込んでいく印象が強い。

何でこんな木材を使うのか?豪華にしようとするのか?変わったシェイプにするのか?

ストレートな気持ち良さがまず欲しいのに、変な凝り方をするんだよなぁって。


「多層構造じゃないと駄目なんだよ!6弦を活かせない!」なんて主張するのも、なかなか厳しい。

フルオーダーして作ってもらった経験から言っても、シンプルなアルダーボディ、アッシュボディに特に問題は感じませんでした。

余程に上手い調理が出来る職人、工房でもない限り、思い付きや目先のプレミアム感で作るとロクな事にならない。そうであっても銘木系は扱いが難しい。それを芯から痛感。

必死こいて複雑な構造、構成にする意味が本当にあるのか、何で無暗に重く硬くするのか、やはり疑問が湧いてしまいます。

「6弦ならでは=音がピンピンになる」

これじゃ悲しいですよね。

特にハイCのペラペラ感、薄さ加減は何とかならないものか、頭を抱えてしまいます。


【2】パッシブがほとんど無い


「あんたが求めてるのは要するにフェンダーな感じなのか?」

と言われたらまさにそれ、一番分かりやすい答え。

シンプルで実用的なジャズベース、プレシジョンベース、そのテイストを持っていた方が圧倒的に好みです。

となるとまぁ、そのほとんどがアクティブとかハムバッカーだったりする6弦ベースというのは、そもそも致命的なぐらい相性が悪い世界なのかもしれません。

「フェンダーな6弦なんかそもそも求められてないよ!素直に4弦弾け!多弦は5弦までにしておけ!」

それも納得の答えだからこれまた悲しい。


とは言え、いくら何でもアクティブ前提すぎないか、ハムバッカー頼りじゃないか、それが疑問になるのも必然だし、まずパッシブで満足できる6弦が欲しいと思う事自体は、何もおかしくないはず。

パッシブじゃ駄目、アクティブが絶対前提、ほんとにそうなんかいなって。

シングルコイルが好きだし、高出力なのも好きではありません。癖の強いサーキットを載せるのも抵抗があります。

ボディに穴を増やしたくない意味でも、バカでかいハムバッカーを複数積むスタイル、これまたバカでかいコントロールキャビティを設けるのは避けたくなります。

一見は贅沢なようでも穴だらけ、実はボディスカスカとか、あまり歓迎したい事じゃないですよね。


「パッシブに切り替えも出来るぞ!」

って、そういうこっちゃない。

多機能の一つ、選択肢としてパッシブもありますよってんじゃなく、まずそれでまともに使える6弦が欲しいなぁって、心底思ってしまいます。


【3】4弦の方が気持ちいい音がする


「だったら4弦弾けよ!」

本当にそりゃそうだよなって話なんですが、でもね~、そういう音と手応えが6弦が欲しいんですよねぇ。

いくら何でも違いすぎる、あの差がどうにかならないモンか、そこを解消できたらまた気持ちも高まるのかもしれません。


弦が増える、構造が変わる、だから違う音になるってそのまんまな話だし、どうやったって無理なのは分かってます。

ところがこれ、4弦テイストを感じる6弦があったのも事実なので、そこ、非常~に興味深いんです。

何となくな印象、とにかくコンパクトにまとめる、ヘッドも軽く小さくするって方向性だと、それだけ縮こまっていくような、小ぢんまりしちゃうような、そんな印象を覚えます。

勿論、そうしないとバランスが取れない、どうやってもヘッドが大きくなりすぎて崩壊する、それも分かりすぎるぐらい当然の話だから困ります。


手応えある気持ちいいボディ鳴りってトコについても、6弦=それが全く無い、全部ダメダメって話じゃなく、良い感じに仕上がってる物ってやっぱりありました。

でもそうは言っても、

【ネック比率が圧倒的に上がる】

そもそもの問題があるし、それで結局、心地よいボディ鳴りを感じる物に出会えないんだろうなって、悲しい実感としてあります。

ほとんどが24フレットになる事も大きそうだし、演奏性に配慮してジョイントを削りまくる点も多大に影響してそうですし、本当に難しい。

まずひたすら演奏性を求めようとする。そしてボディ鳴りを感じない、電気的に加工して何とかしようとする物が出来上がる。

そりゃ好きになるワケがないよな、そういう物が多くなるワケだよなと納得でもあります。


ただこれ、

「そうなっちゃうのも仕方ないんだよな….」

と思うのも本音だったり。

「そんな事やってるから駄目なんだ!」と断罪するのは簡単。

でも根本的な話、

「ベースって楽器はそんだけしんどいモンなんだよ….難しい事ばっかりだよ….そんな上手くいかねぇんだよ….」

それを容赦なく痛感させられるのも確か。

演奏性に無配慮な6弦?そりゃ~キツイよな、欲しがる人間はいないよなってのもめっちゃ分かります。


異常とも思える幅になってしまうネックがまず前提・・・

なのに心地よいボディ鳴りを出せ?絶妙な演奏性を実現しろ?4弦と同じ鳴り方をさせろ?シンプルでストレートな魅力を凝縮しろ?最高のレベルで成立させろ?

どう考えても無理難題ですよねこれ。


【4】弾き手に配慮しすぎなんじゃないの?


何だか支離滅裂になってるようですが、弾く側として真面目に考えるべき問題なんじゃないかとも思います。

分かりやすい話、コントラバスです。

「もっと低い音出せ!でかくしろ!全然足りねぇんだよオラァ!」

って歴史があったのかどうかは知りませんが、まぁでも本当、そういうアホらしいぐらいのノリもなければ、あんなサイズの楽器は生まれなかったんじゃないかと。


「どうすんねんこれ....」ってレベルまで巨大化した物なんかもあったりしますし、ああいうのは完全な悪ノリでしかないと思います。

でも、もしかしたら、それすらも必要な過程なのかもしれません。

理想的な音の実現、実用可能な判断、その吟味があって定着に至っていったのではないか?

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