三軒茶屋とtoe

2024年7月18日
 日記ではないが、日付を入れる。
 今日は三軒茶屋へ。柴田啓佑監督と久しぶりに会いいろいろと話す。柴田さんはクレバーで先のことを多様に考えている。眩しい存在だ。

 柴田さんに会う前にキャロットタワーのTSUTAYA BOOKをぶらっと見てまわる。TSUTAYA BOOK STOREではなく、TSUTAYA BOOK。ロゴもピンクだったか黄緑だったかになっていた。レジの脇にある新刊コーナーをぼけーっと眺めていたら、売り場からスタッフさんがやってきて、ぼくの隣で立ち止まった。道を空けるとスタッフさんはその場を通過しカウンターの中に入っていく。こういう時に、心のなかで「一言『失礼します〜』とか言ってくれたらいいのになあ」と思ってしまって急に疲れてしまう。そんなモードになってしまい、退店し、エスカレーターの脇でぼうっとしていたら、柴田さんがエスカレーターを上がってやってきた。「めちゃめちゃ目が死んでますよ(笑)」と笑っていた。

 三軒茶屋は駅の真上を246が走っていて、激しい車通り沿いには無数のお店が賑わっているというのが改めて新鮮だ。都市の大動脈上の歩道には人がひしめいている。幹線道路を走る車は速くて、街なかとの速度のコントラストが一際くっきりしている。視覚的な速度の差異が他に比べても大きい。立ち止まっている人、杖をついて歩く人、歩いている人、走っている人、自転車、原付きバイク、自動車、トラック。それから空中を占拠している首都高速道路の高架とキャロットタワー。商店街の店。緑は少ないけど、大学や学校が区画にまとまってあり、近くに世田谷公園があることで、憩うための場は確保されている。こうして考えるとやっぱりおもしろい。

 咳止めの薬を飲んでいるからなのか、眠気と全身を覆う倦怠感に抗えず帰りの電車では立ち寝をしてしまう。地元の駅ではHELLO CYCLINGを利用して家の近くまで。スーパーに立ち寄り、無糖のパックコーヒーと牛乳とハーゲンダッツのクリスピーサンドを購入。ハーゲンダッツを買うのはいつぶりだろう。数年ぶりだ。昨夜YouTubeで見た、toe「レイテストナンバー」のMVで、若い女性グループがコンビニでわいわい言いながらクリスピーサンドを手にとってて、「これ美味しいよね〜」みたいなことを言っていた。きっかけはそれだ。シーンは演奏が休止して音声が聞こえる。他愛ない会話なのに印象深い。MVのあの4人のにぎやかで遠慮のない空気、本当に「閉じ込めた」という感じがあってすごいなあと思うし、カメラの前でああいった佇まいを見せてくれている彼女たちに感動する。

 toeは音楽性とバンドアンサンブル、ライブでのパフォーマンスを見て、すごく心の近いところにある気がしていて、つまりファンなのだけど、立ち上げたレーベルがMachu Picchu Industrias Inc.というのを、先日発表された新譜を聞いた後にいろいろチェックしていて、知った。ぼくは4才〜6才半まで父の仕事の関係でペルーのリマに住んでいて、帰国する時に、マチュピチュにも行った。今自分の頭で思い浮かんでいる景色が後づけなのか、親や写真から再生産されたものなのか、当時の記憶そのままなのかはわからないけど、はっきりと思い描くことができる。数ある国の中で、ペルーとタイは、ぼくの中で特別な国のひとつだ。だからtoeに、そういう人生的な繋がりもできちゃった、と思った。さらに親近感が増した。何度聞いても「グッドバイ」は名曲だし土岐麻子のボーカルがもたらす、全てが鳴っていて圧倒的な生命力に満ちた空白に、他のどの音にも混ざらないで届いてくるアナタの声、みたいな感じがもう、言葉にならない。だし、新譜「NOW I SEE THE LIGHT」も全曲すばらしい。中でも「todo y nada」。日本語では「なにもかもがない」とか「すべてがなにもない」ということになるのかな。演劇もそうだけど、音楽も、自分が大事にしているのは ”空白のあり方”、な気がする。そこに意識が向いているのかどうか。ないものが受け手の中で立ち上がるのは、そこに心が向いた時だ。

全然関係ないが、仕事をしなければ。もっとたくさん。いろんなことを。興味ある方、お気軽にお声がけください。演劇の台本や、それ以外にも書けます。書きます。どうか。という営業をしてしめくくり。

いただいたサポートは、活動のために反映させていただきます。 どうぞよろしくお願いいたします。 ほそかわようへい/演劇カンパニー ほろびて 主宰/劇作、演出/俳優/アニメライター