とりとめもなく・8
あっという間に7月が終わろうとしています。声帯のリハビリも兼ねて、できるだけ戯曲を音読しようと思って何作か実践していますが、黙読よりも体への入り方が違うのでとてもいいです。読んでいて楽しいのは別役さんや岩松さん。特に別役さんのは不条理劇ということもありうずうずします。大声で言いたいなあと思うのは今のところテネシー・ウィリアムズです。
「ガラスの動物園」の新潮文庫版解説で、テネシー・ウィリアムズの姉がロボトミー手術を受けていたということが書いてあり驚きました(知らなかった)。ロボトミー手術というのは精神疾患患者に施されるもので、眼窩などから機器を脳に到達させて物理的にいじくってしまうという医術。1900年代後半に一部に広まり実践されていたんですよね。脳細胞は一度失われると再生しないので、今では禁忌となっています。
先日、ある方との話で出てきたブッツァーティ『七階』を読んだばかりだったこともあり、そちらは作者の生い立ちとのどうしようもない符号も特にないのですが、同じようなやるせなさを両作に見てしまいました。
「ガラスの動物園」では、男を家に招いてローラの縁談を進めようとするエピソードを読みながら、ジェンダーによる強い呪縛のことを考えました。今の日本で描くなら婚活アプリでしょうか。トムがローラに黙って婚活アプリを登録して知り合ったジムと話を進め、家で会おうと決める。ジムが訪れてみると母はいるしトムは高校の同級生で、同じ職場の同僚だしで思い切り面食らってしまうのだけど、ジムの持ち前のコミュ力で食事は円満に進む。肝心のローラは兄が勝手に婚活アプリに登録していたことを一時は怒っていたけど、訪れるのがジムと聞いてからは昔の恋心が良くも悪くも疼き出して元気を失ってしまったり。やはりジムの持ち前のコミュ力で……。
ついついどうでもいい婚活アプリ版を妄想してしまいました。本作、僕は2018年のダニエル・ジャンヌトー演出版を見たのが最後です。
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