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【創作小説】猫に飼われたヒト 第33回 提案

大学近くのカフェ。

レックスとキャロル、2匹の元にドリンクが運ばれてくる。

「先生もこのカフェ使うんですね。私も学生の頃は、大学に近いからよく友達とここを利用してました」

レックスはキャロルに食べたいものを食べさせた。
よほど腹が空いていたのか、キャロルは勢いよくご飯を食べ始めた。

なぜそんなにも腹が空いていたのか、レックスは尋ねた。

キャロルは俯いた。そして…

「う…ぐすっ…先生、どうしましょう。私、仕事をクビになっちゃったんですう…」

そしてキャロルは泣き出してしまった。おろおろとするレックス。

「そうだったのか。それは大変だったね…とりあえず、落ち着きなさい」

「うう…私、この先どうしたらいいかわからなくなっちゃって…新卒で入った職場なのにミスばっかりで、上司には愛想を尽かされちゃったんです。貯金もないし、食べるものにも困っていて。これからどうやって生きていけば…」

「そんなに思い詰めなくても大丈夫さ。仕事ならいくらでもあるよ」

「それがないんです。私、たった半年で仕事をクビになっちゃったんで、なかなか働き口が見つからないんです。書類選考や面接の時点で落とされちゃって。そこで、先生に卒業前みたいにキャリア相談をしたくって…」

「なるほど。そういうことだったのか。そういうことなら、元教え子の頼みだ。協力するよ」

「本当ですか…!ありがとうございます…!早速、面接指導をお願いしたいのですが…」

するとレックスは考え込むように腕を組んだ。

「ふうむ…仕事はいくらでもあるねえ…」
「先生?」
「確かに、君の職歴では受かる企業は限られてくるかもしれないな」
「うっ…」
「それなら、私の研究所で働かないか?」
「え?」

「このお茶だよ」
「…お茶?」
「うちの研究所には給仕の猫がいないんだ」
「…ということは」
「ああ。研究所で、給仕係や電話番として働くのはどうかね?」
「い、いいんですか?!そんな急に…」
「構わないさ。私が所長だしね」
「あ、ありがとうございます!」

そして、レックスは研究所内の見学を提案し、キャロルはそれを喜んで受け入れた。

次回に続く


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