【創作小説】猫に飼われたヒト 第26回 初授業
授業当日。
「それでは、授業を始めます。今日勉強するのは、人間の言葉についてです。言葉の授業に入る前に、皆さん、人間についてどう思いますか?」
「怖い…かも」
「凶暴な獣だよ」
「誰かを傷つけるのが好きな生き物」
「…私たちと同じ」
「「…は?」」
クラスの視線が女の子に集まる。
「出たよ。この間も変な絵描いてたんだぜこいつ」
「変な絵じゃない」
アドが慌てて間に入った。
「はいはいはい。皆さん意見を言ってくれてありがとう。人間は怖いって思う人が多かったかな。じゃあ、何でそう思うの?」
「この間の写真だよ。猫に乱暴してた。あれは嘘の写真だって言う猫もいるけど、俺のパパは本物だって言ってるよ」
「私のおうちもそう」
「僕も」
「そっかあ…でもね、あれは嘘の写真なんだよ。人間はみんな研究所にいるし、あの写真は教科書に載ってる人間の写真なの」
「でもママが…」
「私は、みんなに人間はそんなに怖くないよって知って欲しいんだ。だから、特別ゲストを呼んじゃいました!どうぞ〜!」
教室の戸が開く。
教室は騒然とする。
「じゃじゃーん!今日の特別ゲストは、人間のレオくんです!」
「マジだ…」
「嘘でしょ…」
「本物だ!」
「初めて見た!」
「あ、暴れたりしないの?!大丈夫?!」
「大丈夫です。担任の先生も、私もいますし、それに私の大学の先生もいます。この子は研究所の人間で、今日だけ特別に今日来てもらいました。今日は、この子と一緒に授業をしましょう!」
教室がざわざわとする中、レオがレックスに促され開いている席に着席する。レオは辺りをきょろきょろとしている。
「では授業を始めましょう!私たちが使っている言葉、これは人間の言葉です。改めて、私たちが使っている言葉にはどんなものがあるか、皆さん教えてください」
「おはよう!」「こんにちは!」「おやすみなさい!」「おかえり」「ただいま」「いただきます」
「いいですね。他には…」
「ばーか」
「あほ!」
「うんこ!」
「…はは、まあ、それも言葉ですね。他には…」
「ありがとう」
教室の全員がレオを振り返る。レオから発せられた言葉だった。
「わあ!レオくん上手!」とアドが言ったのも束の間…
「人間が喋った!」
「人間が喋ると、争いが起きるってパパが言ってた!」
「ニュースにもなってたよ!」
「怖い!先生どうしよう!」
教室がパニックに。
「こら!みんな静かにしなさい!」と担任の先生。
「待ってみんな!とにかくみんな落ち着いて!えーっと、えーっと…」慌てふためくアド。
その時、教室の後ろから手が挙がった。
「先生質問です」
「へっ?!」アドは驚いた。
教室の後ろで、レックスが手を挙げたのだった。
次回に続く
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