アイドルと名前が被ったお馬さんの話。
競馬を長いことやっていると、馬の生き様が自分と被って映る時がある。そのような人は歴が長いひとは割と経験しているのではないだろうか。
ジャーニー。某アイドル事務所のグループ名と一緒であるがゆえに、テレビでふとこの馬が映りこむ度に「ジャーニーって名前の馬が出てるんだけどwwwウケるwww」とツイートされるのが常の馬である。
いや、別に自分はアイドルをやっていた時期はない。(当たり前)
この馬はこつこつと2歳から多くのレースに出走し、こつこつと賞金を稼いで、6歳になった今、獲得賞金が1億円を超えている。
なんか、そのこつこつ具合が自分と被って見えた。
そして、この馬はオープンに上がってからは全く精彩を欠いていたところも被って見えた。
自分は自慢じゃないが、それなりの大学を出て、それなりの一流企業でこつこつ働いて課長にまでなった。しかし、会社の業績悪化もあり、最近リストラ要員として指名されてしまい、次をどうするかを考えていたのだ。
ジャーニーも最近の成績を考えるといつリストラされてもおかしくない。
それでも、この馬に出資していた自分はなんとかこの馬が持ち直してくれないかとぼんやり思っていた。
そして、ジャーニーが迎えたレースは関門橋ステークス。芝もダートも障害も全て成績が振るっていない今、完全にこのレースがラストチャンスとなっていた。
レース当日。ジャーニーの単勝オッズは50倍を越していた。(最終的には75倍まで落ちていたらしい)しかし、ジャーニーの調子は一時よりは悪くない。むしろジャーニーを預かっている石上調教師は密かにこのレースを狙っているように見えた。
「いっちょ賭けてみるか・・・」
退職金の一部(ここで全部にいかないところが、今までのコツコツを示している)をジャーニーの単勝と馬単に突っ込んだ。思い通りきたら、たぶん数百万くらいにはなるんじゃないか。
最近ポジティブなことがなかったこともあり、現実をつい忘れ、このレースに賭けたことにかなり盛り上がってきていた。
しかし、ジャーニーはスタート後、前の馬に全くついていけず、ずるずると下がる一方。最後にバテた馬を数頭交わしたのみでゴールした。
「まぁ、そんなものだよなぁ」
退職金を全部突っ込んでいたら、お先まっくらになっているところ。まぁ、そんなもんだよなぁと思えるくらいの余裕はまだあった。
「やっぱり、今まで通りコツコツ頑張るかぁ。就活しないとな。ジャーニー、お前も頑張ってくれよ」
おそらく、ジャーニーに残されたチャンスは少ないか、ない。そして稼いだ馬でも特に牡馬は第二の生活が全く保障されないのが常である。
競馬を長くやっていれば、そんなことはわかっているが、自分にも言い聞かせるように思わずつぶやいたのであった。