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酢豚パイナップルの存在論

「俺は酢豚に入ったパイナップルは好きじゃないな。なんでパイナップル入れて甘くするんだよ」

と昔友達が言っていた気がする。逆に私は酸っぱいものの中にパイナップルが入っているのは好きなのだが、「なぜ入れた」感が強いことは否定しない。

しかし最近パイナップルin酢豚の存在意義が分かった。それを教えてくれたのは北アフリカの料理、タジン鍋である。

梅雨だったと思う。雨ばかりで気持ちが晴れないので中東料理を食べたくなったのだった。そこでちょっと離れたモロッコ料理店に足を運んだ。

「自然のままの美味しさをご堪能ください」と言われて出てきたのが某モロッコ料理店のタジン鍋だ。

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スパイスと野菜の水分だけで煮込まれたシンプルな料理でとても美味しい。野菜自体がスープを吸って味が染み込むことに加え、焦げ付かずふっくらと野菜を煮込んでくれる。スープも野菜の旨味が出た極上だ。

そこで驚いたのはレーズンの使い方だ。砂糖を使わない代わりにレーズンが甘味を調整するために使われていたのだった。そしてその甘味もスープに混じって邪魔しない。鍋の中で全ての天然素材がハーモニーを生み出すのである。

ところで普通、甘味というとまず砂糖を使う。次に和食ならみりんだったり、洋食や中東料理だと蜂蜜を加えたりする。じゃあ砂糖も蜂蜜もみりんも使わない場合はどうするのか?

タジンの回答は「レーズンを使う」であった。形は違うが酢豚のパイナップルの存在意義もモロッコ料理を通して理解した。

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今日はお肉を使わず、刻んだナスやアボガド、カットエリンギをチーズと一緒に焼き、タコスソースとレーズンで甘味をつけたものにタコスをディップして食べた。

まずこれは私のようないわゆる「ゆるオボラクトベジタリアン」の人には全く問題ない食べ物だ。でも、チーズはビーガンやベジタリアンの人にはお勧めできない。

次にハラールかどうかという観点。これが厄介だ。タコスソースはお酢が使われているため、イスラム教徒によって食べられるかどうかは出身国の食文化により左右されるため、事前に確認が必要だ。

酢は微量なアルコールを含むが度数が低く自然に発生するものであるため、イスラム教を国教とする国の食品管理の基準によりオーケーだったり、アウトであったりする場合とバラバラだ。そもそも論でいうならば、アウトが疑われる食品、グレーなもの(シュブハ)自体を検討するくらいなら、提供を控えるべきという観点も当然ある。

このように語学にも言えることだが、料理も文化とのつながりを考えるのが楽しい。どのような人々が手元にある食材を知恵を活用し、手元の限られたリソースでどんな調理法を開発するのかということを知るのが面白いのだ。まさにタジン鍋の例がよい前例である。このように考えると、酢豚のパイナップルも分析するとなかなかどうして侮れない存在理由があるのである。パイナップル嫌いにならず食べてあげてください。

代替肉で酢豚作れないかな。

写真:Photo 187225201 / Berber Desert © Stefano Zaccaria | Dreamstime.com


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