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(外国語報道を読む)孤立化が進むキルギス

タジキスタンのラフモン大統領やカザフスタンのカシムジョマルト大統領がアスタナの国際会議で存在感を発揮する一方で、キルギスのサディル・ジャパロフ大統領が特にタジキスタンに対抗できるようなパワーを集団安全保障条約加盟国内で見せられくなってきた。キルギスの外交的孤立が進んでいるように思う。

事態は9月に起きた国境での衝突に遡る。最終的にキルギスとタジキスタンは9月に起きた国境での衝突に対し、お互い「停戦と軍の撤収を命じることで合意(1)」したのだが、プーチンは10月5日タジキスタン大統領のラフモンに祖国功労勲章を授与し、キルギス側の外交感情を傷つけた。

10月7日、サディル大統領はサンクトペテルブルクで行われたプーチン大統領の七〇歳の誕生日と同日に開かれた「非公式会合」に出席しなかった。産経新聞ではこの会合の狙いは「ロシアは旧ソ連諸国の指導者からプーチン氏が祝福される光景を演出し、国際的に孤立したとの印象を払拭する(2)」こととしているが、キルギスの感情を逆撫でしてまでタジキスタンの肩を持つ意味はなんであろうか。可能性としてはタジキスタンにあるロシア軍基地を維持し、アフガニスタンや中央アジアに対し影響力を持ち続けられることを意識しているのではないだろうか。

従って、キルギスが集団安全保障条約同盟国内での紛争で力を発揮することはできないであろう。プーチンへの発言力の増したラフモン大統領をキルギスのサディル大統領が外交力で抑え込むことは難しい。

キルギスの孤立化が進んでいる。とはいえ、ロシアに肩入れしすぎて過剰に国家の主権が削られることは避けなければならないと考える。従って、状況に綻びが出ない限り、ロシアと近からず遠からずの位置を維持し、タジキスタンの動きを観察していくしかないのではないか。「集団安全保障条約が「壊れることのない兄弟の絆」と呼ぶ軍事演習はキルギス国民にとって悪い冗談に響く(Ал эми ЖККУнун "Бузулгус боордоштук" деп аталган аскердик машыгуулары кыргыз элинин кулагына шылдың болуп угулууда)」とBBCキルギスで言及されるように、中央アジアの現状の安全保障の枠組みにさえも疑いの眼差しを向けている。

(1) https://jp.reuters.com/article/kyrgyzstan-tajikistan-border-idJPL6N30N08T

 (2) https://www.sankei.com/article/20221007-SSQ5AJWUIFMDDBSQTFKH4QY6Z4/

Photo 61460578 / Bishkek © Isak Wiklund | Dreamstime.com


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