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最低限の努力で。『1%の努力』読書感想

(A)はじめに:「2ちゃんねる」と「ニコニコ動画」

20年~10年ほど前からインターネットをある程度使っていれば、「2ちゃんねる」と「ニコニコ動画」の名前を一度は耳にしたことがあるだろう。前者は日本で最大級の匿名型インターネット掲示板で、そのまとめサイトも含めれば、一度は誰しもが目にしたことがあるはずだ。後者は、当時は会員制の動画投稿プラットフォームであり、アングラに寄ったコンテンツと、視聴者によるコメントが人気を博した。「○○やってみた」やアマチュアの歌い手、ゲーム実況動画といったコンテンツは、Youtubeが全盛を誇る前はニコニコ動画が主戦場だったように思う。

そして、その「2ちゃんねる」を創立し、「ニコニコ動画」の管理に携わったのが、本書の筆者であるひろゆき(西村博之)だ。歯に衣着せぬ物言いで度々話題に上がる彼の人生のモットーは、「人生を楽しむコツは暇な時間をいかに楽しく過ごせるのか」。本書も人生を楽しむための考え方が散りばめられている。

(B)著者について/あらすじ

筆者は西村 博之(にしむら ひろゆき)さん。通称ひろゆき。前段でも書いたが、1999年に「2ちゃんねる」を開設した。その後、未来検索ブラジルを立ち上げ、ニコニコ動画の管理人に就任しその命名や運営に携わるなど、00年代の日本のインターネットに大きな影響をもたらした。現在ではパリに移住し、英語圏最大の匿名画像掲示板「4chan」や、新たなコミュニティサービスである「ペンギン村」を管理している。

本書は、努力信仰な社会に対し、努力で変えられる部分はごく僅かであると述べる。無駄な努力はかえって人を不幸にするとして、個人個人が頑張りどころを見つけ、最小限の努力をすることを推奨している。ひろゆきがそのように考えるに至った自身の7つのエピソードが語られる。

(C)感想:サボる≠悪

本書はいきなり、『「サボる才能」はあるか?』と問いかけられる。「頑張れば何でもできる」は安全圏からの物言いで、本当に身一つでできることは数少ない。様々なしがらみから解放され、常に浮き身であることで、自分に本当に必要なチャンスを得ることが出来る。「1%のひらめき」という有名な言葉は、努力があればなんとかなるという意味の言葉ではない。むしろ、「1%のひらめき」がなければ、99%の努力は徒労になってしまうのだ。

そんなメッセージが込められた本書は、本当に肩の荷が下りるような読了感がある。社会にはいまだに努力信仰が根強く残っているが、頑張らなくてもいいというメッセージは少しづつ増えてきているように思う。頑張るだけで右肩上がりに成長してきた時代とは違うのだと、皆が少しづつ気づいてきたのかもしれない。

7つのエピソードでは、それぞれこんな話が展開される。
・「前提条件」の話
・「優先順位」の話
・「ニーズと価値」の話
・「ポジション」の話
・「努力」の話
・「パターン化」の話
・「余生」の話

前半では、環境の力や、余白・片手を空けておく重要性が語られている。そもそも自分が今まで欲しがってきたものは本当に必要なもので、それらを手に入れる為に何を犠牲にできるのか。皆が思っているほどに、世の中は複雑で難しくできているのか。
後半では、ビジネス書らしい考え方が。自分はどこにいればよいのか、どんな働き方をすればよいのかを、自身の適性や、最後に勝つという観点から解説していく。

一般的に信じられていることの中でも、人生の幸福度を最大化するためには、意外とやらなくてよいことは多い。そんな風にサボる勇気を持ち、自身に余裕を作っておくことで、幸せの為に本当に必要なことが見えてくる。そのための「1%の努力」だけを大事にすればよいのだ。

(D)ためになる一節

「ダメなものから目をそらすより、ダメをダメとして直視した方がいい」

ダメも自分の一部だ。目を逸らすのではなく、受け止める。ものによっては強みに置き換えられることだってある。

「自分にとっての『大きな岩』はなんだろう?」

大事なものは色々あっても、粒度は一律ではない。本当に大事なものから順番に、大事にしていこう。

「好きでやっているやつに、努力で追いつけるわけがないからだ」

努力を努力と思わない人に、努力で勝てる訳がない。そんな意味でも、努力で何でも何とかなると思うのは間違いだろう。

(E)まとめ:最低限の努力で。

2ちゃんねるを巡って様々な訴訟に巻き込まれたり、どんな相手にも臆せず自身の意見を言い、時に衝突している姿を見ると、一見胡散臭い人のようにも思えるひろゆき。一方で、こうして価値観や自身のエピソードに触れると、人生の幸せを大事にし、等身大で物事を考える姿に感銘を受けたりもする。良い意味でも悪い意味でも目が離せないインターネット時代の申し子の内側をすることが出来る本書を是非お勧めしたい。



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