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ソムニウム(58)阿修羅像


整形外科で診察を受ける
たっぽり太った女性の医師で
切れ長の目が美しい
両手と右腿が痺れるんです
医師がパソコンでカルテを作る
机の棚に阿修羅像の小さなフィギュアが置いてある
作り込みと塗りが美しい
いい阿修羅ですね
無視される
レントゲンを撮影する
末端神経障害です 生活に運動を取り入れて
薬は出ない 家へ戻る
部屋の真ん中に阿修羅がいる
虚しいのか、と阿修羅が言う
虚しいです 涙がこぼれる
阿修羅が剣を振り下ろす
体をスパッと縦に割られる 断面がMRI画像のようだ
巨大な女性医師の顔が現れ 切断面を覗き込む
うんうん、と頷き ふっと消える
養生!と言って阿修羅も消える
虚しさが自分の本体と知る
起きると体がくっついている
裏山の山道を毎日歩く
鶯の声が清々しい


(終わり)

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