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ソムニウム(30)十九歳


大学の仲間と
映画のロケハン
3台のオートバイで海沿いを走る
丘の上に廃墟が並ぶ
ガラスの破片が
きらきらひかる
撮影が始まる
女優の少女がカメラを見つめる
クランクアップ
一晩で編集
上映会で評価をもらう
大学を出て映画を忘れる
二十年後に思い出す
実家を探すが見つからない
仲間もデータを持っていない
途方に暮れてあきらめる
深夜にチャイム
宅急便が届く
8ミリフィルムと大きな映写機
壁に向かって上映する
映っているのは
十九歳の自分
バイクに乗って海沿いを走り
デジカメを持って廃墟を歩き
ここで撮ろうと仲間と笑い
少女を演出する
自分の姿
ガラスの破片が
ぎらりとひかる


(終わり)

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