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ソムニウム(59)新世界


街灯の光の輪から輪へと夜の道を歩いていく
ピーラーで自分の皮を剥く
しゅら しゅらら しゅぱしゅぱ しゃ
脂肪と筋肉が剥き出しになる
いくら自分の皮を剥いても世界は新しくならないよ
うるさいなあ ピーラーを使う
脂肪と筋肉を削り落とす
みじゅ に ぎゅる りにに
骨だけになって歩いていく
いくら肉を削ぎ落としても世界は新しくならないよ
声を無視して ピーラーを使う
がぎ ぎ ごりりり がり
いくら骨を削っても世界は新しくならないよ
ほんとにうるさい ピーラーを使う
もう削り落とすものがない
どうすればいいかわからない
こうだよ、と声が言う
目の前に人の輪郭が浮かぶ
虹色に光っている
止まれず輪郭を通り抜ける 
瞬間 世界が反転する
自分の中が虚ろになって 自分の外に自分が満ちる
ああ
夜が俺だった
逆だと思い込んでいた
ドボルザークの新世界が聞こえる
三つ先の光の輪の中で誰かが立って待っている


(終わり)

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