あとがきのつづき
世界にはたくさんの人がいる、ということを言葉では理解したつもりでも、この世界には本当にたくさんの人がいて、言葉の上でするような簡潔な理解はできそうにない。
今日参加した文学フリマ東京で、それを改めて認識した。
書き手と読み手、広いホールの中をたくさんの人が行き交って、それぞれの会話や動作からたつ小さな音が会場の空気の中を満たしていた。
ありがたいことに自分の書いた本にたくさんの人が目を止め、買っていただけることまであった。
しかし、その誰もが、その場所でそうして出会うのだろうとはまったく想像すらしていなかった姿や、声をもっていた。
会場には、本当にたくさんの、「わからない」人がいた。
こう書くと当然のようにも思えてくるが、この世界には「わからない」ことがたくさんある。
ブースに座って、目の前で知らない人が自分の書いたものを眺めているのを見ている時でさえ、その人の胸の中はどうなっているのか想像してみてもまったくわからず、途方にくれながら、買ってもらえたときには喜んだ。
ふだん、自分ではない「あなた」のもつ「わからなさ」について書くことが多い。
というか、何かを書いていると自然に、わからないこと、わからないものがでてきて、それとの距離をはかりながら文章を書いていく、という感じ。
わからなさを抱えた目の前の「あなた」にどう向かい合っていけばいいのか、ということをこれからも文章を書きながら考えていきたい。
…などといろいろ書きましたが、書き手のこちらからはわからない、あなただけの読み方で文章を読んでもらえるとうれしいです。
ありがとうございました!
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