Kazum Ueda |クリエイティブ・ディレクター
時をデザインする道具 「トキヲクム」 (コクヨデザインアワード)
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時をデザインする道具 「トキヲクム」 (コクヨデザインアワード)

Kazum Ueda |クリエイティブ・ディレクター

頑張ろうとすればするほど、人は時間に追い立てられ、そんな暮らしがいつしか日常になってしまっている。本来なら、ただ悪戯に過ぎていくだけの時間にも「自分が今ここに生きている」という確かな価値があるはずなのに。ウェルビーイングへの第一歩は、時間と人の関係を見つめ直すことではないだろうか。そう思い、私たちは「自分自身で時間を組み立てる」道具を考えた。

concept

僕らmrk(マーク)という名のユニットで手がけた作品「トキヲクム」がコクヨデザインアワード2022で優秀賞とオーディエンス賞を受賞した。

トキヲクム by mrk

「トキヲクム」は、自分が「これから過ごす時間」をプログラムする道具だ。これからの小一時間を「どう過ごしたいか」を考え、お香のブロックから最大6つを選び取り、積み上げる。ブロックにはそれぞれ香り・効能が割り当てられており、例えば「勉強」だったら上から「集中・集中・リラックス・集中・集中・リラックス」などのように積み上げることができる。深いことを考えず、使い手の好きなように積んでもいい。人や目的によって異なる造形となり、自分でつくった作品のような愛着がそこに生まれる。

目的に応じて様々なカタチに

何かを始める前にこのように「トキをクム」行為を、私たちは一つの「儀式」であると定義づけた。その背景にあるのは、「今この時に集中する」という、いわゆるマインドフルネスの考え方だ。「クム」行為が自分の内に意識を向け、これからの時間を大切に感じるための「意識のスイッチ」となる。

天辺に火をつければ、自分の考えた時間の消費が緩やかにスタートする。嗅覚への刺激は、視覚や聴覚に比べて意識を邪魔せず、最も「やさしく」時間を伝える方法だと私たちは考えた。次のブロックに燃え移るたび、香りに変化が訪れる。この香りの移ろいが、時間のflowを優しく伝えると同時に、集中やモチベーションの維持に貢献し、過ごす時間にさらなる充実感を生みだす。

「トキヲクム」の構想はコロナ禍で生まれた。「おうち時間」という言葉が生まれたように、人は「時間の価値」を突然考えさせられるようになった。郊外の少し広い家に引っ越す人、家族と夕食をとる幸せに気づいた人、それが恒久的な企業価値にもつながると考え始めた企業。自分にとっての「大切な時間」の価値に改めて気づくことは、本当の人生の価値に気づくきっかけとなる。そう考えていたことが、今回のコクヨデザインアワード2022のテーマ「UNLEARNING」(学びほぐし、学び直し)とリンクした。

理屈っぽい話をつらつらと並べたが、これら「作り手の理屈」は、「使い手」に伝わる必要はないと思っている。誰も、そんな難しいことを考えてモノを買わないし、使わない。だからこそ、僕らは「ひと目見て、使いたい」と思う、ワクワクするようなプロダクトデザインを目指した。「なんだか触って見たくなる」、「部屋に置いておきたい」、「移ろう香りを作業BGMのように使いたい」。深いコンテキストを、シンプルで、直感的な感情で欲しくなるデザインに落とし込んだところに、このプロダクトの奥深さがあると思っている。

「時間をつくんなきゃ」って僕らはよく言う。でも時間なんて、常に目の前にあるものだ。その時間をちゃんと使う気持ちになれるかどうか。ぜひこの道具が、自分らしい時間をつくり、感じるためのきっかけになれば嬉しい。

ユニットmrkとして共に取り組んだ武市美穂さんと小林諒さん、模型制作に貴重なノウハウをご提供頂いたside.incの大木さんにこの場を借りて御礼申し上げます。

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Kazum Ueda |クリエイティブ・ディレクター
広告 / ブランディング / マーケティング / 地域活性分野の戦略やクリエイティブを専門。ここでは主に社会のサステナブル・スイッチ(食、農業、教育分野)とクリエイティブについて、つらつら考えていることなどを記していきます。