マガジンのカバー画像

現代アート研究

220
現代アートを学び始めた外資系IT企業のプリセールス。 難解な現代アートを探求する学びの記録。
運営しているクリエイター

#リオタール

山口勝弘『新生パリ・ビエンナーレとリオタールの企画展に見るバランス・オヴ・パワー』 読書メモ

古い美術手帖を入手した。といっても1985年8月号だから、ルーシー・R・リパードのテキストが掲載されている美術手帖より新しい。1985年の8月号。インスタレーション特集として藤枝晃雄氏のテキストも読むことができる。 この美術手帖を手に取ったのは、星野太氏が、表層文化論学会の発表で、リオタールの『Les Immatériaux』展について日本語で書かれたテキストが、ほとんど確認できておらず、本誌に掲載されていた山口勝弘氏の海外レポートくらいのものであるとしていた。 日本語で

Les Immatériaux or How to Construct the History of Exhibitions 考察メモ

非物質化または展覧会の歴史の構築の仕方。TATE PAPERSとして公開されているテキストを読んでみたメモ。JOHN RAJCHMAN の2009年に書かれたテキスト。 1985年の『Les Immatériaux(非物質的なものたち)』展は、哲学から現代アートへ接続する展覧会だった。それは、アートの境界を解放し、何にでも接続できるように捉えなおした、ある種の実験的な取り組みだったのだろうと推測する。その後の展覧会においても、考え方の拡張を提示することとなった。これほど重大

表象文化論学会 第10回大会 パネル2: 今日のLes immatériaux

2015年に、表象文化論学会のパネル2でジャン=フランソワ・リオタールの『非物質的なものたち』展について、発表が行われていたらしい。 「Les immatériaux(非物質的なものたち)」とは、哲学者ジャン゠フランソワ・リオタールが共同企画し、1985年にポンピドゥー・センターで開催された展覧会のタイトルである。芸術作品が、さまざまな科学的イメージ、そして工業製品やポピュラー・カルチャーなどと無差別に並置され、定まった順路のない会場を鑑賞者は無線レシーバーを装着して歩きま

ジャン=フランソワ・リオタール『知識人の終焉〈新装版〉』読書メモ

リオタールの『知識人の終焉』を読んでみた。この本を手に取ったきっかけは、あまりにも『ポスト・モダンの条件』が分かりづらかったから。この人の言うことを、違った翻訳で著した本からアプローチしてみようと思った次第。この『知識人の終焉』は、『ポスト・モダンの条件』の姉妹書とされている。 科学者、技術者とは、その領域で最高のパフォーマンスを発揮することを目的としている。インプットとアウトプットを収入と支出という観点で整理し、それに手を貸すテクノロジー。複雑な科学技術が何を表しているの

ジャン=フランソワ・リオタール『ポスト・モダンの条件』 読書メモ

先日のゴドフリー『コンセプチュアル・アート』の再読に引き続き、リオタールの『ポスト・モダンの条件』を手にした。未だにモダニズムが継続しているとか、既にポストポストモダニズムであるとか議論があるけれど、ひとまずリオタールをおさえておかねばならない。 モダンは、大きな物語としてリニアな世界にあった。ポスト・モダンとは、そうした大きな物語からの決別と、並列的な並行な世界が出現したとする主張と認識している。 ポスト・モダンとは何か? 序論に短い定義が出てくるが、何のことかさっぱ