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現代アート研究

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現代アートを学び始めた外資系IT企業のプリセールス。 難解な現代アートを探求する学びの記録。
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2019年12月の記事一覧

交流という鑑賞 岡山芸術交流2019

岡山芸術交流では、新しい現代アートの楽しみ方を見つけられたような気がする。作品を鑑賞しながらの議論、解釈を巡る交流。 リヒターを見た後、ある意味でバーンアウトしてしまっていた。 現代アートの体験が、満足する地点にまで到達してしまったのではないか。残りの大学院生活が惰性になりそうな、そんな感覚さえ起こった。 今は、現代アートというのは、リニアなものではなく、同時多発的に起こるものだと分かる。アーティストが提示した世界を鑑賞者がどのように解釈するか、鑑賞者にどう響かせるか。

シネマ・クレール丸の内での発見 岡山芸術交流2019

11月半ばの日程で岡山芸術交流に来ている。シネマ・クレール丸の内で映像作品の上映(1日1回!)があり、その時間に合わせて行動する必要がある。 もう一週間後の日程だったら、マシュー・バーニーのリダウトが上映されていた。 会期中のほとんどの日程で上映されるファビアン・ジロー&ラファエル・シボーニの「反転資本 公理」(58分14秒, 2018)が上映される。お昼過ぎから先着順。 映像作品は暗視カメラを使って野生動物を撮影したもの。だと思う。 というのも、カメラは固定されてい

岡山芸術交流2019 もし蛇が

一足先にK先輩が岡山芸術交流に来ていた。 そして、是非とも見るべきと指令がきた。 十一月中旬に日程を組んで、初めての岡山、改札を潜ると横断幕。そして岡山大学で細胞学会が開催される日程だったらしく、岡山駅は人混みでごった返していた。カオスである。朝早く到着したこともあり、駅前の案内所がオープンしていなかった。あいトリの時も朝早かったためにウロウロしてしまったが、なんてことない案内場は9時に開場、展示会のチケットとあらかたの説明(展示を見るべき順序、移動方法(路面電車が便利)

リヒターの衝撃

やはり、ゲルハルト・リヒターは凄かった。衝撃にしばらく身動きできなかった。 カミーユ・アンロの流れから恵比寿にやってきた。K先輩が見たというゲルハルト・リヒターを見たかった。東京都写真美術館で開催している『イメージの洞窟』を見るのが目的。といっても、美術館に到着するまで、ゲルハルト・リヒターの作品が、どの展覧会に展示されているのかを知らなかった...。 現代アート、写真こそ気になるところ。どうやったら写真がアートになるのか、しかも現代アートになるのか。写真というと夏にロバ

カミーユ・アンロ 蛇を踏む

ゼミで話題になっていたカミーユ・アンロ展。 神楽坂のアンスティチュ・フランセ東京、旧日仏学園でカミーユ・アンロ本人とキュレーターの対談を通じて、展覧会の魅力を伝えるというもの。日仏学園としては、フランスの魅力を発信するということだろうか。 この日は東京オペラシティギャラリーでも本人を交えた作品解説があった。その時は英語で話していたらしいけれども、このセミナー会場ではフランス語で話をしていた。 セミナーで話をしていたのは、展示に関する説明。日本で展示をするにあたって、オリ

研究の方向性 その1

大学院入学前、デザイン思考に関する問題意識を持っていた。アート思考という言葉もできはじめていた。2000年代はロジカル思考が全盛だったよな、なんて思う。 VUCAの時代、先の見通しがつかない中で、世界が溺れているような、そんな印象がある。かなり大きなパラダイムシフトに直面している。そうした社会に対して何がどうなっているのか、問いを投げかける役割、そこにアートの可能性があるのではないか、そう思ったのが現代アートを学ぼうと思った理由のひとつ。 入学と同じくらいの時期に始まった

アート漬け 物量という学習方法

某テレビ局で番組制作をしているゼミの同級生。彼女のお世話になっているというアーティストの個展があった。 ストライプハウスギャラリーで開催していた小堀令子展。 残念ながら、愛知県のグループ展の準備だったかで、アーティストは不在、他に人はおらず、貸切状態で鑑賞することができた。 壁面を覆う大型の作品、包み込まれているよう。 ネットワークと表現される。見ているうちに引き込まれてしまう。作品の大きさという圧。 同級生の説明によると、このペイントはベースに風景画がある。そこに

土砂降りの中、バスキアを

塩田千春展と連チャンしようと思っていたのだけど諦めた。ゼミでも話題になっていたし、日を改めて鑑賞にきた。土砂降りの六本木...。 前回の塩田千春展の note にも書いたのだけど、展覧会に参加する際に無手で行く。バスキア展では失敗だった。アートのお値段に少し登場していたけれど、夭逝したこと、思い悩んでいたこと、ストリート出身くらいの認識だった。もう少し、背景とか、きちんと予習しておけばよかった。 ニューヨーク出身の英会話講師、彼はバスキアのファンであり、英会話レッスンを始

魂がふるえる

塩田千春展。 会期が終わる間近に滑り込みで出かけてきた。チケットを購入するまでに1時間待ち、バスキア展も一緒に見ようと思っていたのだけど、時間的な制約とアートを感じる僕のキャパシティから、別の日にしよう。早々と心に決めた。 本来、アートを学ぶ身としては、展覧会に出かける前にアーティスト研究をしておくべきであり、作品についても予習しておくべきだと思う。そうなんだけど、無手で出かけることにしている。作品に関する新鮮な感覚を得たいということが一番の理由だから。 旅行などの計画

アート×ブロックチェーン

僕が勤務している外資のソフトウェア企業、かなり広い製品ラインを持っていて、エンタープライズ向けの製品が中心なんだけど、AI *1 , IoT, Blockchain, Big Data系の製品もある。もともとのキャリアのスタートはプログラマ。ハードウェアを動かすようなプログラムやら、工場の自動化のプログラムを書いていた。コンピューターの仕組みにディープダイブしていた。最近のキャリアはビジネスプロセスのスペシャリストとして、プロセス改善だったり、システム化の計画だったり、テクノ

マックイーン モードの反逆児(ネタバレ注意)と初ギャラリー訪問

ファッションの仕事に関わっている。裏方的な役割として。サプライチェーンとEC、デジタルマーケティングなどの相談をしている。デジタルの破壊力にどのように対処するのか。そうしたことの対策をしている。最近、ファッション業界へのデジタル破壊が、服の企画・デザインにまで侵食してきた。 アパレルデザイン。 これまでアパレルデザイナーの仕事からは距離を置いていたが、それでは済まなくなってきた。とりわけハイブランドのデザイナーが、どのような思考なのかが気になる。日本のアパレル各社は苦戦し

構造と表面展@駒込倉庫

8月の頭くらい。齋藤恵汰と堀崎剛志との二人展。駒込倉庫で週末のみ、14時から開始という展示。なんと、展示期間中は毎晩アーティストトークを開催するというもの。 齋藤恵汰の代表作『渋家』。実際の不動産を所有し、地図に署名するために登記簿謄本上の手続きを行った作品は、ゼンリンの白地図のみの展示であった。(価格表によると5万円。どこまでが販売範囲なのかは不明で、地図一枚なのか、署名をした行為なのか...。) 渋家は実際にアーティスト、エンジニアなどが住むシェアハウス。このシェアハ

アートのお値段(ネタバレ注意)

8月の初めだったと思うけど、アートのお値段の先行試写会に参加した。日本語字幕付きで見ることができるのは助かる。 映画はオークション開始2週間前、オークション準備の緊迫した場面から始まる。 沢山のアーティストがスクリーンに映し出される。ジェフ・クーンズ、ラリー・プーンズ、ステファン・エドリス、ジデカ・アクーニーリ・クロスビー、マリリン・ミンター、ジョージ・コンド、それぞれの作品への取り組み、制作に関する思いが語られているだけでも勉強になる。 サザビーズのエイミー・カペラッ

ドレス・コード?ー着る人たちのゲーム ファッションとアート

8月、京都で開催していた「ドレス・コード?ー着る人たちのゲーム」を見に行った。ゼミのT先輩が、アートとファッションの接続に関する研究を行っている。僕も、ファッション企業のデジタル化に関するコンサルティングを行っていることもあり、ファッション系の話題にはアンテナを張っている。 アートとファッションの接続。 様々な作品の中のファッション 広い展示室は、スーツの展示から始まる。様々なブランドのスーツ、一言でスーツと言っても様々な様式があり、クラシカルなスタイルながらモダンに見