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アートのお値段(ネタバレ注意)

8月の初めだったと思うけど、アートのお値段の先行試写会に参加した。日本語字幕付きで見ることができるのは助かる。

映画はオークション開始2週間前、オークション準備の緊迫した場面から始まる。

沢山のアーティストがスクリーンに映し出される。ジェフ・クーンズ、ラリー・プーンズ、ステファン・エドリス、ジデカ・アクーニーリ・クロスビー、マリリン・ミンター、ジョージ・コンド、それぞれの作品への取り組み、制作に関する思いが語られているだけでも勉強になる。

サザビーズのエイミー・カペラッツォも登場。カタログ作り。とりわけ作品の値段が上がるように演出する。カタログに込める思い、作品の価値の上昇とストーリー付け、赤は人気が高いとか、他の作品の権威を借りてきて、価値付けをするなどの工夫を凝らす。

金に対するアーティストの姿勢は様々で

・ ゲルハルト・リヒターは、金は汚いという。
・ キュレーターのポール・シンメルは、バブル経済と評する。そして、(潰れないように)バブルはゆっくりふわふわと漂わせておけばいいと続ける。
・ ジェフ・クーンズは、ゲイジングボールシリーズについて、積極的に欲しい人に欲しいモノを提示するとしているし、LVともコラボしている。
・ ジデカは作品に高値がついたときに、冷静でいられるかわからない。
・ ラリー・プーンズは、金はあった方がいいだろうが、金のために作品作りを変えるのはごめんである。

コレクターのステファン・エドリスは、孫が居ないためにコレクションの一部を美術館に寄贈する。美術館としても、これだけの(高騰している)現代アートを収集するのは難しいから助かるということ。

先日、訃報を目にした。

彼のお気に入りのアンディ・ウォーホルの作品は、コピーを家で飾る。現代の複製技術を使うとマスター・ピースに見劣りしないコピーを作ることができるらしい。

ラリー・プーンズは代表作である水玉の作品をオープンに、ギャラリースペースで描いている際に、観客に作品について意見を求めた。観客はそのままでいい(同じように水玉を描いて欲しい)と伝え、ラリー・プーンズは表舞台から消えた。アーティストとして変化しない。新しいものを作り出さないというのは死んだも同然である。

そんな表舞台から消えたラリー・プーンズは画商によって再び世に出る。その画商はアーティストと画商は二人三脚と言う。

復活展とも言える展覧会は成功、以前からのファンと新しいファンでギャラリーがあふれていた。

教授から共有されたこの記事を思い出す。


コレクターのステファン・エドリスは、作品を欲しいから買う。買った後に値段が上がるのは二の次としている。

映画の終盤、オークションが始まる。ジデガの思惑とは別に、かなりの高値で落札されてしまった。アーティストと作品に付けられた値段、お金による自身の創作活動への影響。コレクターが収集したコレクションに対する価値の上昇。そうした事象に対するそれぞれの思惑を描き出していた。


試写会後のトークは、参加しなくても良かったかな...。

いただきましたサポートは美術館訪問や、研究のための書籍購入にあてます。