#北朝鮮拉致問題について

 横田めぐみさんの父、滋さんが87歳で亡くなった。

 めぐみさんが北朝鮮に拉致されたのは1977年11月15日のことだ。拉致事件の多くは、韓国と北朝鮮の対立が厳しかった70年代から80年代初めに起きた。工作員への日本語教育係確保などが目的だ。ただし物証は乏しく、メディアも強い関心を払わなかった。娘が拉致被害にあったと横田さん夫妻が知ったのは、事件から19年余り経ってからだった。帰国を待つ家族の高齢化が進み、未帰還の政府認定被害者12人の親で存命なのは、早紀江さんと有本恵子さんの父・明弘さんだけだ。

 北朝鮮の金正日総書記は、2002年の日朝首脳会談で拉致を認め謝罪。そのうえで、国交正常化を視野に拉致を含む包括的解決を目指す「日朝平壌宣言」をした。生存者5人の帰国が実現した一方、北朝鮮は、めぐみさんら8人については詳細な説明なしに「死亡」、4人は「入国していない」と伝える。また、被害者とは別人の遺骨を提出してきた。その後の対応も不誠実で、到底信用できるものではない。

 横田さん夫妻がモンゴルで孫娘と面会したことで機運が生まれ、2014年「ストックホルム合意」が出来た。合意では「拉致問題は解決済み」としていた北朝鮮に、拉致被害者を含む日本人行方不明者の再調査を約束させたが、何も得られないまま終わった。

 その後、日本はトランプ米大統領の「最大限の圧力」に同調し、核ミサイル問題と同時に解決を図ろうとした。昨年5月には一転して無条件の首脳会談を金正恩委員長に呼びかけたが、いまだに反応はない。

 政府は、この間の経緯をいったん検証して戦略を立て直す必要がある。早期解決を図るための取り組みを強化すべきだ。

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