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【企画応募作品】或る恋の話Part4

今回は 松下友香「Happy Life Creator」さんの企画に参加させていただきました
初めての企画参加にドキドキです
まだまだ募集期間はあるのですが、皆様の素敵な作品を読んでしまうと、ひよっこの私は書けなくなってしまうと思い、心の中の「you やっちゃいなよ」の言葉に背中を押されてえいっっと投稿してしまいます(笑)

或る恋の話 Part1

或る恋の話 Part2

或る恋の話 part3


安住さんが上司になって私はまた少し生きていくのが軽くなった気がした

公園での事を覚えてないのだろう
ただの上司と部下
ここへ来てとても忙しそうに働いている彼は
昼休みに公園に来なくなった

毎朝、安住さんはフロアー全体に響くような元気な声であいさつをする
おはよう!今日もよろしく!
今まではそんなあいさつをする人は居なくて
何となく仕事が始まっていた
最近はほかの人も自然にあいさつをするようになった
少し風通しが良くなったように感じる
私のデスクの横を、着ていたジャケットを脱ぎながら通り過ぎる

フワッといい香りがする
シトラス系
強くないからこの瞬間だけ香ってくるのだ
この香りスキ…

彼の歓迎会の日、私はまた仕事でミスをした
はぁ…これから飲み会なのに最悪…
そんな気持ちを隠して何とか参加した
肝心の安住さんは
ごめんっこの後一本打ち合わせあるんだよ
と言って会の中盤で抜けてしまった

それからモヤモヤした気分で少し飲みすぎた…
二次会に少しだけ顔出したけれど、また仕事のミスを思い出して
心がギュッとしてきたので途中で店を出た

酔い覚ましにサイダーを買って
自然と私の足は会社の裏の公園へ向かった
ふぅー……つらぁ……
小さく心の声が漏れる
しばらく夜風に当たっていたら後ろから聞きなれた声がした

ん?青山?

顔を上げると安住さんが立ってる
いつものパリッとしたスーツ姿ではなく
真っ白いTシャツに細身のデニム
コンビニの袋を持って

安住…さん?え?なんで?…

あー、部署変わって忙しくてさぁ 近所に越してきたんだよ
さっきあんまり食べられなかったからこれ
コンビニの袋を顔の横まで上げて照れくさそうに笑う
中には、おにぎりが2つとサイダーが見える
今帰りなのか?1人?駅まで送るわ

私が安住さんから目が離せなくて見つめていると早口でそんなことを言って
ついてこいと言わんばかりにゆっくりと前を歩きだした
その瞬間、フワッとシトラスの香りが私の中に入ってきてモヤモヤとした感情が押し出された

今日、またミスしちゃって…へへへ

そういう私に
またくよくよしてたのか?前にも言っただろ?
カンペキを目指さなくてもいいよ
それにオレは今上司なんだから相談してくれよ

振り返って少し私の顔を覗き込んで言った

おぼえてたんだ…

彼はまた背中を向けて歩き出したけれど
私はあふれてくる涙を抑えきれなくて鼻をすすりながら追いかける

涙をぬぐうと進んでいたはずの背中が目の前に来ていた

あ…振り返らないでもらえますか…
え?あ…うん
泣き顔は見られたくない

夜風が空気を動かして真っ白い背中からのシトラスの香りが私の体を包む
吸い寄せられるように顔が近づく

コツン

おでこを背中に当てて思い切りシトラスを感じる
1分だけこのままで…



次の月曜日
安住さんはいつもと変わらずに
「おはよう!今日もよろしく!」
と入ってきた
ジャケットを脱ぎながら横をすぎる
こっそりとシトラスを待機している私に

「おはよう」
あいさつ付きの香りをくれた初めての朝だった






大丈夫かしら…
まだまだ修行中です!
皆様の作品を楽しみにしています
素敵な企画へのお誘い、ありがとうございました!


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