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徳島市中心部サッカー専用スタジアム建設の可能性を探る



序文

徳島ヴォルティスにとって悲願とも言えるサッカー専用スタジアム。

全国的にもその数は年々増加し、最近では広島、金沢、長崎などが新たに建てられている。

本記事では徳島県におけるサッカー専用スタジアムの可能性、実現へのアプローチについて探っていきたいと思う。


球技専用スタジアムの必要性についてはこちらの記事でも言及しているため一部重複する内容もあるが合わせてどうぞ


サッカーにおける専用スタジアム

日本におけるスタジアムの現状

Wikipediaの情報を参考に最新の情報も加味し、2024年現在Jリーグで主に使用されているスタジアム59箇所をピックアップしてまとめた。

内訳はサッカー専用スタジアムが14箇所、球技専用スタジアムが16箇所、陸上競技場が28箇所、野球兼用が1箇所となった。

サッカー専用スタジアムと球技専用スタジアムを合わせた30箇所のうち、J1基準である収容人数15,000人以上なのが23箇所。


・Jリーグのスタジアム基準

Jリーグ公式HP参照
規約・規定→Jリーグ規約・規程集→Jリーグスタジアム基準


徳島ヴォルティスにおけるスタジアム


ポカリスエットスタジアムの詳細

・概要

鳴門総合運動公園陸上競技場(ポカリスエットスタジアム)は徳島県鳴門市の徳島県鳴門総合運動公園(鳴門・大塚スポーツパーク)内にあり、所有は徳島県。
一般社団法人徳島県スポーツ振興財団が指定管理者として管理運営を行っている。

収容人数は19,514人

最寄り駅の鳴門駅からは徒歩約30分

住所は徳島県鳴門市撫養町立岩四枚
徳島県内における位置がこちら

・歴史

1971年:陸上競技場としてオープン
1992年:第48回国民体育大会の開催に合わせてナイター証明設備や電光掲示板の設置、トラックの改修
2004年:証明の光度アップ、メインスタンドの一部席を個別席化
2011年:高輝度LED方式のオーロラビジョンを設置、審判専用更衣室新設
2012年:バックスタンドに776席の個別席完成(これによりJ1基準を満たす)
2014年:バックスタンドに5688席の個別席と屋根完成
2022年:陸上トラックをインターハイに合わせて国際大会開催基準に改修


・比較

さきほどのスタジアム表を、建設年が新しい順に並べたのがこちら

次に、収容人数が多い順に並べたのがこちら

建設年に関しては下から10番目とかなり古いスタジアムだが、各スタジアム改修など把握しきれない部分もあるためこの情報だけで正確な良し悪しを判断するのは難しい。
収容人数も多ければいいというわけでもないので、何の参考にもならないかもしれないが参考程度に挙げておく。


ポカリスエットスタジアムの問題点

陸上競技場とサッカー専用スタジアムの違いによる問題点は先述したサッカー専用スタジアムのメリットと重複するため省略する。

ポカリスエットスタジアムは陸上競技場のなかでは良いスタジアムだと言えるだろう。
スタンドに高さがあるため他の陸上競技場と比べても試合が見やすい方だし、オーロラビジョンや客席、トイレなど近年改修された設備は綺麗である。
そのため箱自体の話をするなら、専用スタジアムではないこと以外で挙げられる陸上競技場としての問題点はあまりない。
とはいえ陸上競技場であること以外の部分に問題点がないわけではなく、むしろその部分に最大のウィークポイントがある。

ポカリスエットスタジアムの最も大きな問題点は、箱自体ではなく立地にある。

上地図を見ても明らかなように、ポカリスエットスタジアムは徳島県の中でも北東端に位置している。
スタジアムの北側と東側は海に近く、人が多く居住している地域は時計で例えると6時~9時の方角に限られる。

徳島県の市町村分布が こちら

引用:徳島県公式HP

徳島県の市町村別人口ランキングがこちら

2024年1月時点

鳴門市と隣接する市町村の合計人口が137,683人なのに対し
徳島市と隣接する市町村の合計人口は389,522人と3倍近い差があり、
鳴門市+隣接の場合は県人口の1/4にも満たない人数だが、徳島市+隣接では県人口の半分以上の人数となる。

スタジアムを中心とした人口分布を図で表してみよう
最初に理想的な人口分布を例として挙げると、中心(スタジアム)から同心円状に距離が離れるほど人口が少なくなり、中心に近いエリアに人が多い状態が理想だと言える。

理想的な人口分布の例

これを前提に、ポカリスエットスタジアムにおける人口分布を表した図がこちら

ポカリスエットスタジアムを中心とした人口分布

先述したように人口が6時~9時の方角に集中しており、9時~6時の方角は人口の少ない地域や海に囲まれている。
近距離エリアに最も人口の多いエリアがないというのも痛い。
図には書かれていないものの1時方向には淡路島があり、実は直線距離なら徳島駅より淡路島の方が近い。
県内で2番目に人口の多い阿南市からかなり遠くなってしまうのも厳しい。

次に徳島駅を中心とした人口分布を見てみよう

徳島駅を中心とした人口分布

徳島駅は徳島市中心やや北東に位置し、10km圏内に徳島市や板野郡といった人口密集地域が含まれる。
近距離エリアは全方位的に人口が多く、中距離エリアも人口の多い自治体がバランスよく存在する。
南西は山間部のため人口は少ないものの、人口の多い阿南市や吉野川市などからもアクセスしやすい。


距離感についてはhasuyoshiさんがいい記事を書いてらっしゃるのでこちらを読んでもらえると理解が深まる。


このように、ポカリスエットスタジアムは集客面において極めて不利な立地をしている。
気軽に足を運べるのは鳴門市と松茂町、北島町くらいで、北島以西の板野郡や徳島市は少し遠い。
鉄道の本数の少なさを考えても、鳴門駅へ向かうのに徳島駅(もしくは佐古駅)で乗り換えが必要な駅から向かうのはかなりハードルが上がる。
そうなれば自家用車という選択肢がない人たちを多く取り零していることは想像に容易い。
そもそも国体用に建設されたスタジアムのため興業を想定して造られてはいないのだ。
それが徳島駅周辺にスタジアムがあればアクセス面(ひいては集客)においてこれだけ解決することができる。

もう少しミクロな視点で見ても問題点はある。
ポカリスエットスタジアムは鳴門市でも中心部から少し外れた海が近い場所にあり、周辺は住宅と企業と鳴門金時畑で、その場所で住んでいる人と働いている人以外は普段行くことのない立地である。
徳島ヴォルティスのサポーターでも試合日以外に日常生活でスタジアムの前の道を通るという人はほとんどいないだろう。
そのため、試合が開催される日であっても試合を見に行く人々以外の県民がスタジアムの賑わいを目にすることがない。
要は試合が行われていること自体が持つ宣伝効果が無に等しいのだ。
どれだけスタジアム周辺にユニフォームを着た人たちが歩いていても、そもそもそこに試合を見に来る人以外がいないという状態。
これでは試合を見に行かない人にとっては、試合が徳島県内で行われていようが東京や海外で行われていようが、実感として大差ないだろう。
多くの徳島県民に徳島ヴォルティスの試合が今この町で行われているという実感を持ってもらうことは、それが自分たちのものになるし地域の誇りになる。
今の立地では多くの県民にとって徳島ヴォルティスは他人事で、そうなっている要因にスタジアムの立地はとても大きな原因となっている。


専用スタジアムが徳島ヴォルティスにもたらすメリット

国体などの学生やアマチュアの競技大会開催を目的として建てられた陸上競技場と、プロスポーツなどのエンターテインメント用に作られるスタジアムには大きな違いがある。

前者は集客で売上を上げることを目的としておらず、観客は主に選手や競技の関係者である。
一方で後者は興行なので関係者以外の一般人を集客し、入場収入などで売上を上げることが目的となる。

目的が違えば必要な要素も違ってくる。

前者は集客が目的ではないため客が来やすい場所にある必要はない。
そして利益目的の用途ではないため建設費用をできるだけ抑えたい。
そうなると町の中心地から外れた地価の安い土地に多目的使用できる陸上競技場という答えになる。

一方で後者は集客による収益が目的なので来場者が来やすい立地にある方が有利である。
そのため地域で最も人の集まりやすい場所に、観客がその競技を最も楽しめ快適に過ごせるスタジアムが必要となる。

徳島ヴォルティスに必要なのは後者であるが、ポカリスエットスタジアムは前者の陸上競技場である。
ということは、現在徳島ヴォルティスは興行に適したスタジアムでなら得られるはずの利益を逸しているということだ。

では具体的に、興行に特化したスタジアムが徳島ヴォルティスにもたらすメリットを考えていきたい。

徳島ヴォルティスの試合を見る方法はいくつかある。
ひとつはスタジアムに足を運んで現地で観戦する方法。
他にはDAZNやテレビの中継など映像で観戦する方法。
あとはパブリックビューイングや中継を流している店へ行って観る方法。
フルマッチにこだわらなければハイライト映像を動画サイトやテレビなどで観る方法もある。

クラブとして最も利益に繋がるのは、当然現地で入場料を払って観戦してもらうことだ。
スタジアムへ試合を観に行くという選択肢を取ってもらうには、自宅などで中継を観るよりもスタジアムで試合を観ることに価値を感じてもらわなければいけない。

中継映像は毎試合同じ場所から観やすいように撮影される一方、スタジアムはスタンドとピッチに距離があり座席によって見え方も違う。
陸上競技場はスタンドとピッチの距離が遠く、スタジアムによっては傾斜がなくゴール裏からではほとんど試合が見えないようなところもある。
ポカリスエットスタジアムは先述した通り陸上競技場の中では観やすい箱ではあるものの、やはりゴール裏になると逆サイドは小さくてちゃんと見えない。
しかもゴール裏は席種の中で最も安い値段に設定されているため、初めて来た人が観づらいという印象を持ってリピーターを逃すことになりかねない。

また、中継映像ではカメラで撮られている映像、マイクで録音した音しか受け取ることができない。
それが現地観戦ではカメラに映らないものが見えたり、ボールを蹴る音やぶつかり合う音、選手やベンチの声などマイクで拾われない音が聞こえてくる。
しかし陸上競技場はトラックがあるためピッチと観客席が遠いため、そういった現地ならではの価値を失ってしまっている。

プロサッカーという興行において、現地観戦と中継映像を比べた時に陸上トラックの存在は致命的に現地観戦の価値を下げていると言える。

ホームスタジアムが陸上競技場からサッカー専用スタジアムに変わることで観客が増える要素は数多くあれど、減る要素は全くない。


立地が徳島ヴォルティスにもたらすメリット

立地は観客数に大きな影響を与える。

2023シーズンJ1リーグでは、5チームで計6試合が国立競技場をホームとして試合が開催された。
国立で試合を開催したクラブの2023シーズンホームゲーム入場者数TOP5がこちら

ホームが関東にない名古屋や神戸も含め、全てのクラブが国立開催試合で入場者数1位となっている。
それどころか鹿島は本来のホームであるカシマ開催で最も多い試合と約2万6千人差、同じく名古屋は約1万6千人差、神戸は約2万5千人差、湘南に至っては約4万人も差があるし、FC東京は同じ東京都内でありながら約1万人も差がある。
国立競技場はトラックのある陸上競技場でありサッカー専用スタジアムではないため、決してサッカーが観やすいスタジアムとは言えない。
それでもこれだけ多くの人を集める理由は、やはり立地の良さが大きいのではないだろうか。

国立競技場は新宿駅から約2km、最寄りの千駄ヶ谷駅からは約400mという立地にあり、上のスタジアム一覧表に載っている中で唯一東京23区内にある。
当然アクセスは抜群で、新宿駅には12路線が乗り入れているためナイターゲーム終了後の移動手段も多方面に困らない。
仕事後など何か別の用事と合わせて来場もしやすい。

徳島ヴォルティスにおいても立地の悪さを先述したが、鳴門市から徳島市中心部にスタジアムが移れば来場者数に大きな変化が見られると考えられる。


さらに徳島ヴォルティスにとって重大な問題がある。
それはである。

そもそも徳島県は非常に強い地域である。

上記事によれば、太平洋側から流れてくる風が四国と紀伊半島の高い山々に挟まれた紀伊水道を強いスピードで吹き抜けるそうだ。
ということは紀伊水道に近いほど風の影響は強く受ける。

これは2024年2月24日13時の風速を表した地図である。

windy.com

紀伊水道は陸地に比べ明らかに風速が強く、それに影響を受け徳島県や和歌山県の沿岸部も風が強くなっている。

改めてポカリスエットスタジアムの立地を確認すると、かなり紀伊水道に近い場所に位置しており、スタジアムから海の間は主に畑で風を遮るものは何もない。
紀伊水道に吹く強風の影響をもろに受ける立地となっている。

google earth

徳島ヴォルティスは毎試合のように強風に悩まされており、試合内容や結果にも大きな影響を与えていると考えられる。
徳島から浦和に移籍した岩尾憲は、アジアチャンピオンズリーグ決勝の試合後インタビューで試合当日の強風について問われた際「徳島は風が強いので風の難しさは分かっていた」と答えている。
この場面で例に挙げられるほど鳴門は他のスタジアムとくらべても強風で、風業とも言えるこの風は選手のプレーをかなり難しくしているということが分かる。

もしスタジアムが徳島駅周辺に移動することでこの風が軽減されるのであれば、クラブの成績においてはかなり大きな意味を持つ。

それではポカリスエットスタジアムと徳島駅周辺ではどのくらい風速が違うのだろうか。
正確に鳴門と徳島を比較したデータを見つけることは難しかったが、スタジアムから3kmほど離れた場所にあり、同じく沿岸部に位置する徳島阿波おどり空港との比較なら参考にできそうなものを見つけた。

徳島阿波おどり空港と徳島市福島二丁目の
Windyによる2024年2月18日~2024年2月25日の風速データがこちら

徳島阿波おどり空港
徳島市福島二丁目

風の項目を見てみると、阿波おどり空港の方は風の強さを示すオレンジ色や緑色が多いのに対し徳島市は白や青が多く、風が弱いことが分かる。
徳島ヴォルティスの2024シーズン開幕戦が行われた2月25日14時の風速は
徳島阿波おどり空港が8KT
徳島市福島二丁目が5KT
なので、沿岸部と徳島市中心部付近では3KTの差がみられた。
※1KT(ノット)=秒速約0.5m

次に、ポカリスエットスタジアムと徳島駅の風速予測
これは予測なので実際に計測されたものではないので参考程度に

ポカリスエットスタジアム
徳島駅

この表示されている期間、徳島駅の風速は最も強い時間帯で18KTと予測されているが、ポカリスエットスタジアムは最も強い時間帯で22KTと予測されている。
他の時間帯でもおおむねポカリスエットスタジアムの方が風速は強く、予測においてもこの2箇所ではこれだけ風速の差が示されている。
正確なデータを得るにはもっと多くの期間を見る必要があるものの、沿岸部と徳島市中心部では風速に差があることは間違いない。

これだけ風が軽減されるだけでも徳島ヴォルティスにとってスタジアムを移転するメリットは大きい。

ポカリスエットスタジアムの風についてはまたしてもhasuyoshiさんが参考になる記事を書かれているのでこちらも併せて読んでいただきたい。

この記事でも分かるように、徳島ヴォルティス公式HPの各試合ページには風の強さが記載されているが、これまでは近年の試合しか記載がなかった。
しかし2024年にHPがリニューアルされ2005年から全試合で風速が記載された。
これにより全試合分のデータを集計することが可能になったため改めて集計を行った結果がこちら。

無風はホームが36試合なのに対しアウェイが112試合で、ホームがアウェイに比べて76試合少ない。
弱風はほぼ変わらず。
中風はホームが111試合に対しアウェイが61試合でホームがアウェイに比べて50試合多い。
強風はホームが33試合なのに対しアウェイが11試合で、ホームがアウェイに比べて22試合多い。

ポカリスエットスタジアムの風が強いことはJリーグ公式記録を見ても明らかだと言える。

風の強さ別の勝率を見てみると、ホームにおける無風の試合の勝率は44.4%と、半分近い勝率を記録しているにもかかわらず、無風の試合はホームゲームのなかでは9%しか存在していない。
もっとも勝率が低いのは強風の試合で27.3%、強風に慣れているから有利だというのは幻想であるとデータは語っている。
中風はホームで勝率41.4%もあるから一見風の強さは有利に働いているように見えるが、アウェイでは勝率21.3%と最も低いため必ずしも中風が得意とは言えない。
しかし強風はホームでもアウェイでも安定して勝率が20%台であり、やはり風の強さはチームにとって悪影響を及ぼしていると見るべきだろう。


という風にスタジアムの立地が変われば徳島ヴォルティスに多くのメリットを生み出す可能性を秘めている。
しかし本記事において、サッカーや徳島ヴォルティス側のメリットというのはあまり重要ではない。

完全にクラブの資金や寄付、一般企業からの出資などで建てられるのであればそれだけでいいのだが、莫大な費用のかかるスタジアム建設においてそれは現実的ではない。
建設地の確保や建設後の運用なども含め、自治体や行政、税金が関わってくることは避けられず、そうであるなら最も必要なものはサッカーに興味のない人たちがサッカー専用スタジアム建設に税金を投入することに納得する理由である。

サッカー側の目線でいくら専用スタジアムが欲しい理由を並べ立ててもスタジアム建設の話は前進しない。

ここからが本記事の本題である。

サッカー専用スタジアムが徳島県に何をもたらせるのか、そして建設に向けどういったアプローチができるのかを探っていきたい。


まちづくりにおける専用スタジアムの可能性

中心地が活性化することは県全体にメリットがある。
中心地に人が集まり、経済が動くとそこで働く人の所得が増え、それがさらなる消費を促し地域の税収が上がる。
それが中心地以外の地域に税金として分配されることで全域が間接的にも豊かになる。

マチ★アソビを民間主導へ転換するというニュースが流れた際、県は一部の人たち一部の地域の局地的な盛り上がりしかないという主張をしていたが、疑問を感じざるを得ない主張だった。
果たして県全域県民全員が直接的に盛り上がるコンテンツなど果たして存在するのだろうか。
少なくとも徳島市の阿波おどりですらそんなイベントではないだろう。
エンタメが多様化し国民全員が楽しんでいるコンテンツなど一昔前に消滅した時代に、熱狂的なファンを持つ小中規模コンテンツの重要性が認識できないのでは時代に取り残されてしまうだろう。
2020年頃からアニメはコアファン層から国民的なブームへと変化したが、マチ★アソビが多くのファンから支持されているのはその10年以上も前から行われていたこと、要は流行に乗って立ち上がったものではない金儲けの匂いがしないイベントだったことも大きな要因だろう。
それはもう他の誰も手に入れられない価値である。
そもそも、県が公表している『「マチ★アソビ」経済効果等調査分析報告書概要』を見てみると、マチ★アソビに来場した人たちの中には祖谷のかずら橋や鳴門の渦潮など徳島市から離れた観光地に訪れている人もおり、徳島市外にも利益をもたらしているため間違いであるのは明らかだ。
運営費ばかりが論点とされているのも疑問で、重要なのは経済効果とのバランスだろう。
2018年秋に開催されたマチ★アソビは7億円以上の経済効果を算出している。
さらには、そのイベントが開催された日のみの影響だけではなく将来的な経済効果まで想定して評価すべきではないだろうか?
マチ★アソビにおいては、例えば声優など多くの出演者が来場するが、アニメとしてや声優としてラジオ番組を持っていることは多く、そこでマチ★アソビの感想や徳島県で食べたものや行った場所などの話しがされる。
実際にマチ★アソビへ来場した以外の人に徳島県の話題が届き、それが翌年のイベントや観光の宣伝となる。
番組によってはラジオCDとなら残る場合もあるため、数年越しに作品をきっかけにラジオを聞き、徳島やマチ★アソビの話題に触れることもある。
この点でも比較しなければ本当に公平な議論とは言えない。
平等というのは絶対に正しいという雰囲気を纏っている言葉だが、平等は必ずしも正しい訳ではない。
例えば消費税は全ての国民から平等に税を徴収するが、年収に対する負担率という観点では不平等である。
何か一つの指標を基に平等にすれば全てが上手くいくならあまりにも簡単だが、そうじゃないから世の中は複雑で難しい。
正しそうな言葉に盲信して思考停止するのではなく、本当の正しさを考え続けることが発展へと向かう道だ。
本当に優秀な人は平等にする人ではなく、最適な不平等のバランスを取れる人だろう。
トップが変わったとはいえ、自治体が10年以上もその地域にあるコンテンツの価値を理解できていないのは悲しい話である。

話が逸れてしまったが、県内の経済効果において10ヵ月ほどに渡り月に2回ほどホームゲームが開催され多ければ1万人以上の観客を集めアウェイからも多くの人が訪れるJリーグはエンタメの少ない地方には貴重な存在である。
阿波踊りやマチアソビなどは年に1,2回数日間大人数を集めるイベントだが、長い期間定期的にこれだけの人数を集められるイベントは別の価値がある。

2024年に新スタジアムが開業したサンフレッチェ広島の例を見てみると
広島が旧スタジアムを使用していた2022年の経済効果は約265億2400万円という試算が出ている。
それに対し、新スタジアム初年度2024年の経済効果は約860億円という試算されている。
開業後20年間の経済効果は6760億円にものぼるという。

徳島ヴォルティスで仮定すると、2022年度の経済効果は94億5200万円という試算がある。
広島の場合2022年から2024年で約3.24倍なので、それに当てはめて徳島駅前に新スタジアムができた時の経済効果を仮定してみよう。
徳島の2022年の経済効果に3.24をかけると、約306億2400万円という計算になる。

中心地が活性化するためには人が集まる必要がある。
常に人が集まることで飲食店などのお店が増え賑わっていく。
定期的に大人数が集まりその日に売上を稼いでくれれば出店のハードルも下がる。

先述したようにポカリスエットスタジアムの最も大きな問題は立地である。
鳴門市の中心部から外れた場所にあり、そこで催し物がなければスタジアムの前を通ることもない。
そんな立地のため周囲に飲食店などはほとんどない。
仮にあったとしても観客の移動手段は主に自家用車であるため自宅とスタジアムがドアtoドアで周囲のお店に恩恵が薄い。

月に数回これだけの人を集められるコンテンツなのに、現状では地域経済への貢献度が薄すぎる。
スタジアムだけでその地域を賑わわせることが難しいのは、徳島ヴォルティスがJリーグに参入して以降20年間使い続けてきたポカリスエットスタジアムの周辺が閑散としていることからも分かる。
地域経済の土台は会社や学校による人の流れが担う必要があるため、それはサッカーなど興行の役割ではない(中心地にスタジアムがあることでビジネスや教育にも活用できるため一端は担えるが)。
プロサッカー興行が地域経済に最も有効的に貢献できる役割は、今現在ある程度賑わっている中心地の経済をブーストすることだろう。

1997年に米国メリーランド州に建設されたアメフトスタジアムであるフェデックスフィールドが周辺不動産価格に与えた影響を分析した結果によると、スタジアムから1マイル(約1.6km)圏内の不動産価格が上昇し、スタジアムに近いほど価格上昇が大きかった。
そしてスタジアム整備による純便益は約45億円であると推計されている。*1

現在のスタジアム立地では地域経済の活性化において徳島ヴォルティスを全く有効活用できていない。
サッカーの試合を観た熱量そのままに大勢の人たちが街へ出ていくパワーを享受できていないのだ。

ここからはサッカー専用スタジアムを建てるとして、どこに建てるのが徳島県にとって最適化か、最適な立地にスタジアムを建てたとして徳島県にどのような恩恵があるかを探っていきたい。


徳島市中心部、徳島駅周辺である必要性があるのか?

そもそも、駅の近くである必要性はあるのかというところから問うていきたい。

徳島県というのは日本の中でもトップと言ってもいいほど車に依存した社会構造になっている。
都会と違い鉄道中心に町が作られておらず、周辺が閑散としている駅の方が圧倒的に多い。

鉄道が社会の中心になっておらず、重度の車社会である徳島県の特性を考えれば、必ずしも駅前である必要性はない。
むしろ郊外に大容量の駐車場を備えたスタジアムのほうが嬉しい人は多いだろう。

この問題に絶対的な正解はない。
行政が車中心の街づくりをするのか、鉄道中心の街づくりをするのか、どちらを選ぶのかという行政の判断次第だろう。

鉄道型にも車型にもそれぞれ良し悪しはある。
そのうえで筆者は徳島県にサッカー専用スタジアムを建てるなら絶対に徳島駅前にすべきであると主張したい。

スタジアムを中心とした街づくりを語る上で必読と言える本に「日本政策投資銀行 Business Research スマート・ベニューハンドブック」がある。
本書のまえがき部分を引用すると

「スマート・ベニュー」とは、商業・ホスピタリティ・娯楽・健康医療・福祉・災害などを備えた多機能複合のスタジアム・アリーナであり、スポーツイベントの開催時以外でも賑わいを見せる、いわば地域活性化/地方創生の切り札となるセンターです。

日本政策投資銀行 Business Research スマート・ベニューハンドブック

これまでのただスポーツをするためだけにある単一機能型スタジアムという考え方から多機能複合型という考え方に転換することで、スタジアムは地域においてスポーツ以外の様々な役割を持つことができる。
本書には美馬市×大塚製薬×徳島ヴォルティスによるコンディショニングプログラムの事例も紹介されているため是非一読いただきたい。

現在徳島県には様々な課題が存在する。
徳島駅前にスタジアムができることでサッカーとは関係ない地域の課題を解決する一手となり得る可能性がある。
スタジアムはサッカーのためだけではなく、サッカーに興味のない県民にも大きなメリットがあることを知ってほしい。

それでは具体的に、現在徳島県に存在する課題と、スタジアムできることでそれらが如何に改善するのかを考えていきたい。

公共交通機関の衰退

1つめは公共交通機関の衰退。

徳島県内の公共交通機関はJRもバスも厳しい状況にあり、赤字や廃路線の話題は毎年のように上がる。
過度なモータリゼーションが染みついた地域では公共交通機関が衰退し、未成年や高齢者など運転のできない多くの人が交通弱者になってしまう。
車を持っている人には便利で快適だが、その偏重は交通弱者を犠牲にしているという側面もある。
それは活動的な10代やお金を持っている高齢者の経済活動を阻害することになるだろう。

徳島県の年代別人口をグラフで見てみよう

表を見てわかる通り、徳島県は70代が最も多く、40代~60代がかなりの割合を占める。
高齢者ドライバーによる自動車事故のニュースは近年後を絶たないが、公共交通機関が衰退し車がないと不便な環境になっては免許を返納することをためらう人もいるだろう。
第二次ベビーブーム世代は現在50歳前後、免許を返納することが望ましい年代は今後ますます増えていく。

公共交通機関の充実は高齢者の自動車事故を減らすことに繋がるし、免許を返納した人の移動手段を確保し行動範囲を広げることで経済活動を促進する。

ただでさえ人口の少ない若者の多くが進学などで県外に流出するなか、免許を返納することが望ましい世代の人たちの経済活動は地域のベースであると言える。
しかし移動手段がなければお金を使う機会は間違いなく減少する。
免許を返納した高齢者の割合が増加していくと想定される社会において、自家用車中心の街づくりでは地域経済は減衰の一途をたどるだろう。

公共交通機関の利用者を増やしていくには現在主に自家用車で移動している人の移動手段を変えなければならない。
しかし、快適な車移動に慣れ切った人を公共交通機関に乗せるのは容易ではない。
もし可能性があるならば、鉄道やバスでしか行けない場所に、鉄道やバスに乗ってでも行きたい目的があるならば、その目的を持った人たちは公共交通機関に誘い込めるかもしれない。
その目的というのは代替品のないものでなければならない。
例えば買い物は県外や通販でもできるし、郊外型のショッピングモールが競合すれば車で行きやすい方が勝つ。
コンパクトシティに取り組んだ青森市の例に学ぼう。
青森市は中心地を活性化させるため、郊外の開発を規制し中心地に大型商業ビルを建設した。
しかし皮肉にも大型商業ビルは15年で経営破綻し、規制対象に満たない郊外の中規模商業施設は賑わっている。
それだけ自家用車で行けることはプライオリティが高いし、商業施設というのは代替の効くものなのだ。
百貨店が人を集め地域を豊かにするという考えが如何に時代遅れであり幻想であるというのが分かるだろう。
それに約20億もの融資をするという発想はあまりにもばかげている。

そもそもなぜ駅前は人が集まるのだろうか。
それは当然、鉄道を利用する乗降客がいるからである。
鉄道を利用する人たちがいることで駅前は賑わうし、賑わうことで鉄道の利用者が増える。
鉄道は自家用車に比べ圧倒的に輸送力が高い。
この循環により駅周辺は発展していく。
郊外ではなく駅前を発展させたいのであれば、鉄道利用者を増やすというところに軸がなければ矛盾が生じるのだ。
徳島県はなぜか駅前の駐車場無料化実験などして駅前エリアへ車で行かせようとしているがあまりにもバグっている。
それがいいのなら先述したように駅前である必要がない。

阪急電鉄の創業者である小林一三は沿線に人の集まるコンテンツを作ることで鉄道利用者を増やすという手法を用いた。
私鉄各社も模倣し、現在まで都市開発のスタンダードになっている。

特にプロ野球は大人数を集めるコンテンツとして私鉄の沿線開発にこれまでも多く活用されてきた。

鉄道のためにコンテンツがあり、コンテンツのために鉄道がある。
その相互作用により公共交通や駅周辺の地域は発展してきた。

車の駐車料金と鉄道の運賃の違いとして、駐車料金は時間に比例して料金が上がるが運賃はいつ来ていつ帰ろうと値段は変わらないという点がある。
中心地で多くお金を落としてもらうためには滞在時間が長い方がいいことを考えると、滞在時間で交通費が変わらない鉄道は中心地を活性化させるのに向いているし、サッカーという長時間拘束されるコンテンツは鉄道移動向きだと言える。

ではそれらの事例をどう徳島県に当てはめていけばいいのか。

JR四国の鉄道事業は国鉄からの民営化以降一度も黒字になったことがない。
民営化と言いつつ、国や自治体からの補助金に頼って運営しているのが現状だ。

そのため都心の私鉄とは異なり資金面で厳しい状況にあるため、国や自治体も資金面などで協力してもらう必要がある。
JRは私鉄のよう柔軟に動けないことを考えるとコンテンツを自社だけで創出するのも難しい。
そのため鉄道,自治体,集客力のあるコンテンツの3者が協力して街づくりに関わらなければこのような手法で公共交通を賑わわせることは不可能だろう。

そして徳島県において代替品のない集客力のあるコンテンツというのが徳島ヴォルティスである。
スポーツ観戦に興味のない人からすればサッカーチームは徳島以外にもチームはあるから代替品はあると思われるかもしれないが、応援しているチームというのは何物にも代えられなく唯一無二の存在だ。
県内にはバスケのガンバロウズや野球のインディゴソックスなどもあるが、現状最も集客力があるのはヴォルティスである。
県下で最も人を集めたい場所に最も集客力のあるコンテンツを誘致するのは当然の選択と言える。
JR四国、徳島県(徳島市)に加え、徳島ヴォルティスの3者が協力し合うことで、「徳島駅周辺へ鉄道で行く」という本来当たり前なはずの街の形を取り戻せるかもしれない。

とはいえただスタジアムを建てただけで鉄道利用者が大きく増えるとは思えない。
そのための協力体制である。
では、スタジアムを中心とした鉄道利用者増加のために必要な策を考えていきたい。

まず絶対にできなければいけないのが、徳島駅前へ行く手段として車で行くより鉄道で行く方が得になる状態を作ることである。

そのために最も重要なのは駅周辺の駐車料金である。
駐車料金無料化の実証実験があったことは先述したが、鉄道の運賃より自動車の駐車料の方が安ければ当然みんな駅前へ車で向かうだろう。
しかしそれでは鉄道利用を増やせない。
本来やるべきは無料化ではなくむしろ徳島駅から半径1Km圏内の有料駐車場料金を上げることだ。
これは自治体の出番で、徳島駅周辺へ行くには公共交通機関を使うのが最安となるよう条例でコントロールして欲しい。
ただでさえ駐車場は無料のところが多い徳島県だが、駅周辺の駐車料金が低い限り公共交通機関の衰退が止まることはないだろう。

参考に、徳島駅前にある藍場浜地下駐車場の利用料金がこちら

平日休日関係なく最初の1時間が300円で以後30分毎に150円ずつ加算され
上限が1000円、3時間半で上限に達する。

徳島駅前衰退の象徴とも言える駅前モータープール第2駐車場も、上限有無の差はあれど1時間300円という価格は同じ。

極端な例として、国立競技場近くのパーキングを調べてみたところ、15分220円の上限3200円くらいだったので、それに比べると格安である。
とはいえ、それくらいの金額設定にしないと今現在車で移動している人の交通手段を変えることは難しいのではないだろうか。
併せて障害があるなどどうしても車でしか移動できない事情がある人には安く利用できるよう登録制度など仕組みを作れると良い。

しかしこれでは家が最寄り駅から離れている人は行きにくくなる。
そのための策として、徳島駅以外の駅周辺に無料駐車場を整備しよう。
最寄りの駐車場がある駅まで車で行き、そこから鉄道で徳島駅まで向かうという仕組みができれば、家から駅が遠い人も鉄道を利用しやすくなるし、徳島駅周辺に駐車場を減らせるため、その分空いた土地を商業に活用できる。

次にJRやクラブができる施策
例えばドイツには、サッカーのチケット代に鉄道の運賃を組み込んでいるという事例がある。

鉄道の運賃をサッカーのチケットに組み込むことで観客は鉄道を使わないと損になり、なおかつ他の移動手段で来ると追加でお金がかかるという状態になる。
ドイツの例のようにあらかじめクラブがJRに一定の金額を払っておくという仕組みを取るなら、JRはサッカーで言うシーズンパスのようにまとまった収入が得られるため他の事業への投資がしやすくなる。
そしてサッカークラブ側は運賃を上乗せした価格でチケットを売るため、チケットが売れれば売れるほど得をする、これもシーズンパスで客が試合を多く見に行くほど1試合当たりの価格が下がるのと同じ仕組みである。

この仕組みのメリットとして、遠くに住んでいる人ほど得をする点がある。
例えば三好市の阿波池田駅や海陽町の阿波海南駅から徳島駅までは片道1830円もする。
こういった地域に住んでいる人からすると、徳島市は気軽に遊びに行く場所ではない。
往復3660円というのは何か特別な用事がないと払える額ではないだろう。
例えば現在のバックA自由席2500円に運賃1000円が上乗せされるとして3500円となる。
そのチケットで鉄道に乗車したとすれば本来の運賃より安い価格で徳島駅まで行けサッカーまで見られる。
観戦料+交通費と考えればかなり安い。
価格差は160円だし運賃だけの値段としては安くないので、運賃のためだけにチケットを買って試合は観に来ないという人もあまり現れないだろう。
徳島市から離れた地域に住む人たちが徳島市内へ遊びに来るきっかけとなるし、遊びに来たついでにサッカーを観て帰るでも良い。
県南部県西部の人々が徳島市中心部を訪れる機会が増えれば、駅前の賑わいも一層増すだろう。

都市部と居住区の棲み分け

2023年の徳島市阿波おどりで紺屋町演舞場が設置されなかったことは記憶に新しい。

紺屋町演舞場といえば東新町商店街や秋田町に隣接している県内最大の繁華街エリアである。
阿波おどりのような大量の人を集めるイベントは繁華街の店にとって年間で最も繁忙期となる重要な存在であるはずだ。
しかし2023年は騒音やごみを理由に町内会の反対で演舞場の設置が見送られた。
近年は公園で遊ぶ子供の声がうるさいだの、除夜の鐘の音がうるさいだの、社会性を著しく欠いた苦情というのが増加しているように思うが、それにしても繁華街で騒音がうるさいというのはさすがに理解に苦しむ。

そもそも繫華街というのはもともと騒音もごみも出るエリアである。
逆を言えばそれは多くの人で賑わっていることであり、そこで働く人々はそれを享受してビジネスを行っている。
つまり繁華街には周辺の騒音やごみなどを受け入れてもメリットのある人たちが住んでいるはずなのである、本来。
しかし多くの人がある集まることに苦情を入れる人たちというのはそれにメリットがない、つまり今は繁華街で何もビジネスを行っていないただそこに住んでいる人たちだろう。
都市部に閑静さを求めることは経済発展の阻害となる。

これは商店街の衰退にも当てはまることだが、旧時代的な街づくりのデメリットである。
イオンモールやゆめタウンなど郊外型ショッピングモールは建物の運営会社が出店している店舗に場所を貸し出すという形態だ。
そのため売上が落ちれば出ていくしかないため新しい店舗が循環するシステムとなる。
一方商店街などでは各店主がそれぞれ地権者であることが多く、自宅兼店舗という場合も多い。
そのためお店を廃業してもそのままその場所で暮らす人たちが多く、新陳代謝が行われないため廃れていくし大規模な再開発も土地の買収や地権者の物言いで難易度が高い。

苦情をなくすには地域住民の理解を得るとかいうめんどくせぇことをしなくてよくなるよう、都市部と居住地をはっきり分ける街づくりをしていく必要がある。
現状のように都市部と居住地が混ぜこぜになっている旧時代的な現状を変えなければ活性化と騒音苦情で永遠に板挟みにされる。
今の社会はクレームを言ったもん勝ちのような傾向が強いが、街づくりによってクレームを言う側が悪いという状況を作り出せるといい。

都市部と居住地をはっきり区別できれば、先述した駐車場料金と同じように自治体が徳島市中心部ではイベントなどで発生する音は許容することを定めることができる。
そうすれば野外イベントは行いやすくなり、騒音が気になる住人はそもそもそこに住んでいる方が悪いという状態が明確になる。
現状スポーツの鳴り物などは22時までと決められていることが多いが、都市部で騒音の心配がなければオールナイトイベントなども可能になる可能性も秘めており、新たなコンテンツ創生の可能性もある。

しかし都市部から住人が去るということは、そこでの経済活動は間違いなく減少する。
そのためまずは都市部にわざわざ行く理由となるコンテンツなどを作らなければいけない。
先述してきたようにその役割を担えるのは徳島ヴォルティスなのではないだろうか。

ぶっちゃけ別の場所に中心地を遷都できれば一番早いのだが、それは徳島県の規模間ではなかなか難しいだろう。


全国屈指の糖尿病死亡率

徳島県は長らく人口に対する糖尿病での死亡率が全国でも屈指の数字である。

原因としては甘いもの好きな県民性であったり運動不足といった生活習慣が挙げられる。

特に運動不足に関しては、先述してきたモータリゼーションは大きな要因になっていると考えられ、車移動によるドアtoドアなので都心部で家から最寄り駅まで毎日歩いて出かけている人たちと比べれば歩行距離は大幅に少ないだろう。

先述した公共交通機関を中心とした街づくりは県民の健康維持にも恩恵をもたらす。
自家用車より鉄道で移動するだけでも歩行距離は増えるし、家と目的地のドアtoドアではなくなることで寄り道をする可能性が増える。

保険料というのは当然税金の中から捻出されるため、国や自治体としても健康増進による医療費の削減を真剣に考えなければならない。
先述した高齢者ドライバーの事故を減らすことは医療費の削減にも繋がる。

ではJRや徳島ヴォルティスはどのような施策でその問題にアプローチできるだろうか。

ポカリスエットスタジアムの最寄り駅である鳴門駅からスタジアムまでの地図がこちら

googleのルート検索によると鳴門駅からポカリスエットスタジアムまでの距離は2.1kmあり徒歩で29分。

新スタジアムが徳島駅北にできたと仮定し、徳島駅と隣の佐古駅,阿波富田駅の地図を見てみよう

佐古駅から徳島駅までは1.5kmで徒歩21分。
逆隣りの阿波富田駅からもほぼ同じ距離である。

お分かりのように、鳴門駅からポカリスエットスタジアムまでよりも、佐古駅,阿波富田駅から徳島駅までの距離の方が短い。

例えば、クラブとJRが協力して1つ前の駅で降りた観客の方にはグッズをプレゼントする、スタンプカードを作って貯まれば特典があるなどの施策はできそうだ。
試合を観ている2時間ほどが座りっぱなしなら、試合前後に多少長い距離を歩いても問題ないだろう。
健康増進にもなるし、両隣の駅の間にある飲食店などで買い物をすれば経済も回る。

鳴門と違うのは、鳴門の場合は鉄道で行けば絶対にスタジアムまで2km歩かなくてはいけないが、徳島駅の場合は歩きたくない日は直接徳島駅で降りればいいし歩きたければ1つ前で降りるという選択肢がある点である。
選択肢があることで鉄道を使うハードルも下がる。

また、一般社団法人日本老年学的評価研究機構による高齢者とスポーツの関りについてのアンケートによると、スポーツが盛んな地域に暮らすだけで高齢者に健康改善効果があったとする研究結果がある。*1
具体的には、月1回以上運動グループに参加する人たちは月1回未満の人たちに比べてうつになるリスクを40%以上抑制するという。
このように月に2,3度ホームゲームがあるJリーグが地域の健康問題改善に役立つというのは実例も存在する有効な手段である。


環境問題

徳島県は人口の少なさや森林率が高いこともあり、全国的に見てもCO2排出量が高いというわけではない。

とはいえ自家用車というのは公共交通機関と比べれば排気ガス量は多く、自動車中心の社会は決してクリーンとは言えない。

日本の二酸化炭素排出量のうち輸送部門は17.9%を占めている。
その中でも自家用車は最も多く46.2%にも達しており、これに対し鉄道は4.1%に過ぎない。
鉄道が旅客1人を1km運ぶときに排出するCO2は、自家用乗用車の7分の1だそうだ。

徳島県は電車が走っておらず、鉄道はディーゼルエンジンで動く汽車(気動車)のため電車と比べればCO2排出量は多いものの、それでも自動車よりはエコである。
公共交通機関の利用者が増え、1車両当たりの輸送量が増えればますます環境負荷は減るため、環境問題という観点でも公共交通機関での移動を軸にした街づくりはメリットがある。

徳島駅周辺は公園など緑は多いが、ビルなど建物が密集しがちなエリアにおいて大部分を芝生が占めるサッカースタジアムは緑地面積の増加に貢献できるため都市部向きな建物と言える。

上勝町がゼロ・ウェイストタウンと謳いリサイクル率80%以上を達成し環境問題に高い危機意識を持っていること県としても誇っているなら、自家用車の排気ガスにも問題意識を持ちたい。

ここまで車か公共交通かという2択でここまで話してきたが、エコロジーという視点でみれば自転車はありなのではないかと思う。
健康増進という観点からも推奨できるし、車より駐車スペースをとらないという点で中心地向きでもある。
新スタジアムに併設するなら駐車場よりも駐輪場を充実させたい。
自転車で行きやすければ近距離エリアに住む人々もスタジアムに足を運びやすくなるり、特に日頃自転車で通学している学生層を取り込みやすくなるというサッカークラブ側の集客的メリットもある。

Jリーグも環境省と提携しサステナブルな取り組みを行っており、サッカーを通じて環境問題改善に取り組むのは地域としても非常に意義のあることではないだろうか。


サッカー専用スタジアム建設のためのアプローチ

ここまで、徳島駅周辺にサッカー専用スタジアムが建設されれば地域にとってどのようなメリットがあるのかを論じてきた。
とはいえ実際、スタジアム建設には莫大な資金が必要なこともあり簡単に動けるものではない。

徳島県には現在、徳島駅前中心地の再開発計画が立ち上がっている。

しかしこの計画の中にサッカー専用スタジアムは含まれていない。
Jリーグもといサッカー専用スタジアムが街づくりにとってどれほど有用な武器になり得るかは上記してきた通り。
ここからは県の計画をベースにサッカー専用スタジアムを組み込むとすればどのようにすべきかアレンジ案を書いていきたいと思う。

まず、県の計画によると徳島駅北の再開発事業として挙げられているのが
・鉄道高架化
・市立体育館をアリーナに新築
・徳島中央公園と内町小学校の間を公園エントランス化
である。

徳島駅に隣接しており、開発可能な土地として駅北は街づくりにとって非常に価値が高い。
駅と北エリアは現状線路で分断されており、駅北エリアを開発するなら鉄道の高架化は避けては通れない。
なので鉄道高架化の計画は妥当で絶対条件とも言える。
そして動線が確保された駅北エリアに人を大量に集められるコンテンツを置くことが徳島駅周辺の街づくりの重要なキーとなる。

現行案では徳島市立体育館をアリーナに新築することでガンバロウズの試合を開催できるため、それも悪くない発想だ。
とはいえ、現状県内で最も集客力のあるスポーツクラブを利用しないのは客観的に見てももったいない。
県が発表している計画を見てみると、アリーナ以外では徳島中央公園と内町小学校の間のスペースを賑わい交流憩いを軸にしたエントランスにするというものがある。

この点には疑問が多く、まず中央公園があるのに同じような役割のスペースを隣に設ける必要があるのかということ。
仮にそのスペースをイベントなどに利用するにしても、藍場浜公園など徳島市中心部には阿波おどりで使用しているイベントスペース複数があるため新設する必要性は全くない。

もう一つの疑問としては内町小学校はそのまま残すのかという点である。
現在は線路で分断されていることで駅から距離のある場所になっているが、鉄道を高架化すれば内町小学校のある場所は駅徒歩1分の超好立地となる。
問題点のひとつは、人が多く行き交う場所にあるメリットのない小学校が駅前好立地にあるのはもったいなく、よりメリットの大きい施設があるべきだ。
それ以上に大きな問題は、人が多く集まる場所に小学校があるデメリットである。
当然それだけの中心地ということは騒音も大きくなり授業への影響が懸念される。
さらに、多くの人が行き交うということは登下校時に犯罪に遭遇するリスクが大きくなる。
駅北を開発することによる内町小学校が受ける影響は考えられるべきである。
具体的には移転や統合が妥当だろう。

内町小学校が移転することで駅北には大きなスペースが生まれる。
理想はそのスペースにアリーナとスタジアムがどちらも建設されることだ。
2つの競技が徳島駅北に来れば中心地の集客は大幅に増えるだろう。
しかし駅北のスペースにも余裕はなく、実際にアリーナとスタジアムどちらも建設できるかは実際に計画を立て測量してみないとわからない。

もし仮に駅北にはアリーナとスタジアムどちらかしか建設できるスペースがないとすれば、どちらを建設するべきか。
その場合筆者はサッカー専用スタジアムの建設を推したい。
そう言うと、筆者が徳島ヴォルティスサポーターだからサッカースタジアムが欲しいだけだろと思われるかもしれないが、当然それもある。
しかし、客観的な視点でサッカーとバスケ双方の事情を考えた結果そう思い至ったと理由を書き記していきたい。

まず駅北に施設を建設する問題点を考えてこいう。
駅北エリアを開発したいとはいえ、まずは鉄道を高架化しないことには駅北を活性化させることなど不可能といえる。
そのため最優先事項は鉄道高架化だ。
それに伴い徳島駅に併設されている鉄道基地は移転する必要がある。
まず最初にこの2つの事業を進めることから始めなければならない。
そして次にアリーナを現徳島市立体育館跡地に建設するならば今建っている建物を取り壊す必要がある。
それが終わりようやくアリーナ建設に着工できるという運びだ。
これだけでかなりの予算と時間を要することになる。
徳島県といえばホール建設が二転三転し、計画が立ち上がってから30年近く経った今もトップが変わるたび計画が白紙に戻るという愚行を繰り返している。
そんな自治体で果たしてこれだけ長期間に及ぶ計画を当初案通りスムーズにこなすことが出来るだろうか。
少なくとも信頼はできない。

徳島ガンバロウズは現在県内各所の体育館を転々としホームゲームを開催している。
そのどれもが学生の大会などで使用される体育館で、プロスポーツが興行に使うには不向きなものだ。
徳島ヴォルティスは陸上競技場とはいえJ1基準に増築されたスタジアムがあるため、状況としてはガンバロウズの方がアリーナの必要性は高い。
そのためガンバロウズとしてはとにかく早くアリーナが欲しいはずだ。
しかし現計画ではかなり時間がかかりそうなうえ、実現するかどうかの保証もない。
しかも市立体育館が取り壊されてから新アリーナ建設までの間、貴重な徳島市中心部での試合開催が出来ない状態となる。

徳島県が発表した再開発計画の動画内には徳島駅北以外にも徳島東工業高校跡地(現イオンモール徳島駐車場)がアリーナ建設の候補地として記載されている。
こちらは前知事がアリーナ建設候補地として挙げていた場所だ。
徳島東工業高校跡地は現在駐車場なので駅北のように取り壊す必要のあるものはほとんどないため着工までのスピードという点においては圧倒的に優位性がある。
建設までの間も徳島市立体育館を使用できるため徳島市内の試合会場も確保できる。
イオンモール徳島がすぐ近くにあるため周辺地域の経済効果も期待でき、イオンから路線バスが徳島駅へ1時間1本ほどの間隔で走っているため公共交通機関でも足がある。
徳島東環状線の沿線にあるため交通渋滞にも比較的強い。

このように徳島東工業高校跡地も県内ではかなり良い立地であると言える。
アリーナが早くできることでそれによる経済効果が生まれ、徳島駅周辺の再開発への予算を稼げる。
鉄道高架化や私立体育館取り壊し、小学校移転など費用のかかる下準備が多いことを考えると、その間の経済をアリーナに支えてもらうというのは現実的な案なのではないだろうか。


必要な設備

ここからは新スタジアムを建設するとして、必要な設備などを理想も交えて考えていきたいと思う。

試合日以外の活用

サッカースタジアムにおける永遠の課題とも言えるのが試合日以外の活用方法だろう。
アリーナや野球場と比較しても、アリーナはイベントやコンサートの利用がしやすく、野球場は年間の試合日数が多い。
サッカーは芝生養生の関係でコンサートなどの利用は積極的に行えないし、競技の特性上試合数を増やすというのも難しい。
そのためサッカーという競技の人気で支えていかなければいけない側面が大きい。
しかし国としても地域としてもサッカーが飛び抜けて人気が高いというわけではないため、サッカー以外の部分で活用法を見出すことは必要不可欠であると言える。

とはいえ徳島駅北の立地である場合周辺には既に多くの施設があるため、長崎スタジアムシティのようにホテルやショッピングモールを敷地内に建てる併設する必要はないし、そもそも土地が足りない。
そのためスタジアム内に組み込む形で試合日以外の活用を模索しなければいけない。

サッカーファン側の意見としてはオフィシャルショップやミュージアムという意見が多くなるのではないだろうか。
それも必要だが、先述したようにサッカーファン以外が価値を感じる施設の存在は重要になる。

広島の新スタジアムの例を見てみると、貸会議室やキッズスペースなどがあり、コンコースやスタンドもイベント等に貸し出す対応をしている。

どれも真似できそうだが、特にキッズスペースは可能性を感じる。
徳島中央公園は遊具などが設置されている訳ではないし、アミコビル屋上の遊園地もスポーツコートになってしまった。
そのため徳島駅周辺エリアに子供の遊び場は不足していると考えられる。
ポカリスエットスタジアムの敷地内にも遊具が設置されており、試合の日にも子供たちが遊具で遊んでいる光景を目にする。
そのようなイメージで室内キッズスペースを設置できれば試合日以外にも子供を連れて行く人はいるだろうし、特に雨の日の遊び場として重宝されるのではないだろうか。

スタンドやコンコースの活用についても、阿波踊りやマチアソビに開放できる可能性はあるし、美馬市で行っていたコンディショニングプログラムの徳島市版として開催場所にできそうだ。


サッカー専用or球技専用

サッカー専用スタジアムと球技専用スタジアムではどちらがいいのだろうか。

サッカー専用は文字通りサッカーのみに用いられ、球技専用はサッカー以外にもラグビーやアメフトなど複数の球技での利用を想定した作りになる。
サッカー専用のメリットとしては、他の芝生に負担の大きい競技で使用されないため芝生の状態が良好に維持されやすいことや、サッカーのピッチはラグビーやアメフトよりも小さいため観客席をよりピッチに近くできるなどがある。
一方球技専用のメリットとしては、複数の競技で利用できるためスタジアムの稼働率が上がる。

では徳島県においてはどちらがいいのだろうか。
まず、徳島県にはラグビーやアメフトのプロチームがなく、学生チームや地域リーグを戦う社会人チームがメインとなっている。
学生やアマチュアのような利益を目的としない試合は興行向きのスタジアムで試合を開催する必要はなく、むしろ利用料を考えると特別な試合以外では利用できない可能性が高い。
そのため新スタジアムを使用するほどの試合はほとんどなく、球技専用のメリットである稼働率の向上にはそれほど貢献しない。
それならばサッカーで価値を最大化できるスタジアムを作る方が効果的なのではないかと思う。
以上の状況を考えると、徳島県に建設すべきはサッカー専用スタジアムが望ましいと考えられる。

キャパシティはまず1万5000人で建て、将来的に2万人収容へ増築可能にするのが良いのではないだろうか。


観戦環境

サッカー観戦において最も大きな障害とも言えるのが雨。
サッカーは屋外で行われるスポーツなので当然観戦も屋外となるが、観戦環境が天候によって左右されてしまうというデメリットを持っている。
屋根がない席での観戦では、雨の日は雨に濡れながら、暑い日のデーゲームでは直射日光に晒されながらの環境となり、入場者数を減らす要因になってしまう。
観戦時以外にも、場外広場でグッズや食べ物を販売している場合は傘やカッパで雨をしのぎながら買い物をする必要があり購買意欲を落とす。

ホームゲームの天候別入場者数を見てみよう

2023シーズン終了時点で徳島ヴォルティスのホームゲームにおいて、公式記録に「晴」と記載されている試合は通算247試合で平均入場者数は4869.8人。
一方で「雨」と記載されている試合は通算71試合で平均入場者数は3958.9人。
晴の日と雨の日では約900人ほど入場者数に差が生まれていることが分かる。

理想は駅からスタジアムへ行き試合を観て帰りの鉄道に乗るまで一度も傘を差さないでサッカー観戦が完結できることだ。
駅の横にスタジアムがあれば駅からスタジアムまでの間を屋根付きの通路で繋ぐことも不可能ではない。
それが難しくても最低限チケット提示や手荷物検査で手が塞がる入場口までには傘を閉じられ、それ以降帰るまで一度も傘を使わないカッパも必要のない構造を作りたい。
入場後は観客席やコンコースなども含め雨に濡れるエリアが一切なく、ピッチは屋外、客席は室内と言えるようなスタジアムが理想的。
吹田スタジアムはグッズ売り場や飲食店などが全てスタジアム内に集約されており、入場後は雨に濡れず再入場の必要性が全くない形を実現している。
さすがに最寄り駅からスタジアムまで屋根はないため、それが実現できると凄い。

ポカリスエットスタジアムの現状は、2014年の改修によりバックスタンドの全面とメインスタンドの一部に屋根がついたもののゴール裏は屋根がない。
本来メインとバックでは価格差をつけるものだが、ホームとバックの自由席で屋根の有無という差があるため同価格にせざるを得なくなっている。
場外広場にグッズ売り場やグルメ、イベントスペースなどを設けているため屋根のある座席でも場外で買い物をしようとすれば雨に濡れる場所へ行かなければならない。
入場口は屋根のない場所にテントを建てて対応しているため、雨に濡れないエリアが少なく雨天時はかなり不便となる。
傘とチケットと荷物と場外で購入した飲食物を全て持って配られるフライヤーなどを受け取り、おまけに小さい子供を連れているなどであればかなり不便となる。


また、近年座席の多様化も注目されている。
広島のピースウイングスタジアムは席種が42種類
プロ野球日本ハムのエスコンフィールドも多種多様な座席が用意されている。
様々な楽しみ方を提供することで多様な人々のニーズに答えられ、スタジアム自体を楽しむことがエンタメのひとつとなる。
普通のスタジアムではピッチを縦から見るか横から見るかくらいの違いしかなかったが、席の違いで楽しみ方が変化することで次は違う席で観戦してみようと思えることがリピーターの獲得にもつながる。


その他

クラブがスタジアムの指定管理者となることも見逃せない

クラブが指定管理者となることでクラブのスタジアム利用に関して自由度が増し、試合に出店している飲食店の売り上げに応じてクラブに収入が入るなどメリットが大きい。


最低限の設備を持ったスタジアムを建てるだけでもかなりの資金が必要となるため、それ以上のオプションをつけるのは難しいところも大きい。
とはいえ出来るならして欲しいというものも多くある。

例えばスタジアムの外観。
吹田スタジアムと京都スタジアムは似た作りとなっているが、低コストで機能的なサッカー専用スタジアムを建てようとするとそれが一つの答えとなってしまい、後から建てるには個性がなく埋没してしまう。
出来れば徳島ならではの要素があるとうれしい。
筆者は建築に関して全く知識はないが、2021年にウッドデザイン賞を受賞している徳島ヴォルティスのクラブハウスをスタジアムにも応用できないだろうか。
国立競技場は鉄骨と木材のハイブリッドで作られており、これを参考に徳島県産の木材と鉄骨、藍色のカラーリングができれば日本国内のみならず世界的に見ても個性的なスタジアムになりそうである。
あとは阿波青石なども組み込めればさらに特色が出せそうだ。


筆者が徳島駅北にこだわる理由はもうひとつあって、それが大型ビジョンの設置である。
スタジアムの中ではなく、スタジアムの外壁に徳島駅側に向けて設置したい。
徳島ヴォルティスは近年映像制作に力を入れているが、サポーター以外の人たちに見られる機会はほとんどないのが現状。
同じく試合のハイライト映像なども夕方のニュースなどで流れるのみで、そういった映像を不特定多数の人が目にする機会を作りたい。
さらに試合日はスタジアム内の客席などをライブで流すことでスタジアム内の雰囲気をサッカーを観に来ていない多くの人に伝えることができるし、試合日以外にはチームが練習している時間に練習風景をライブ配信するなどできれば理想的である。
それだけで人が集まる理由になるし、試合日以外に人を集める手段となる。

当然広告料収入も期待できる。
近年広告に関する状況は変化しており、テレビを見る人の減少に伴いテレビCMの価値は減少している。
それに対して増えているのが動画サイトやウェブサイトの広告である。
しかしそういった広告は目的を邪魔するように発生するのでスキップされたり邪魔だったりして、広告を見る人に届きづらかったり印象が悪かったりする。
そのどちらでもない街頭ビジョンはその場所にいる人にしか届かないことやコストが高いというデメリットはあるが、街中で信号や鉄道の待ち時間に、見る側が主導的に見るタイプの広告のため印象の悪さは感じにくい。
駅北のスタジアムに徳島駅構内から見える位置にビジョンを設置すれば高い宣伝効果を生む可能性はある。
街頭ビジョンの宣伝効果はビジョンが見える場所にどれだけ人が集まるかによるため、駅利用者増加や駅周辺の活性化がうまくいかなければ価値は発揮できないが、とはいえ3Dに見える猫が話題になったクロス新宿ビジョンなど街頭ビジョンの広告価値はその場にいる人に限らずSNSを通じて効果を大きくなる可能性も秘めている。
同じく新宿にあるユニカビジョンではミュージシャンやアイドル、アニメなど様々なコンテンツで○時○分からライブ映像や重大発表を流すという告知をすることでファンが集まりパブリックビューイングのような状態を作り出すことが一つのエンタメになっている。
徳島ヴォルティスがオフシーズンに選手の加入発表を事前に時間を告知してビジョンで行うということも可能だし、サッカー以外でも県内の様々なコンテンツがみんなで集まって同じ映像を見る場として活用できる可能性を持っている。


その他に活用できそうな施設だと、通年で営業している飲食店がスタジアムに併設されるなど。
大塚製薬がタニタ食堂的なのやってくれないかなあと思っている。
先述したビジョンについても大塚製薬はCMの映像制作にかなり力をいれているため放映場所として活用できるし、鳴門市のイメージが強い大塚製薬の徳島市に向けた営業拠点として活用するために出資してスタジアム建ててくれれば万々歳である。


結文

スタジアム建設に税金が使われることは、サッカーが好きな人たち以外にメリットがないと思われがちだが、実際にはそうではない。
これから投入されるお金ばかりに注目するのではなく、公共交通機関の維持費や医療費など現在既に使われている多額の税金を減らすという視点で見れば、スタジアム建設はサッカーに興味のない多くの徳島県民に利益をもたらす可能性がある。

ここまで読んでくれた人のなかには、車で行きにくい構造にしたら行かない人が増えるんじゃないかとか、それでも自分は絶対に鉄道は使わないと思っている人も多いのではないかと思う。
筆者もここまで書いてきたのは理想論だと分かっているし、実際にはなかなか難しいんじゃないかとも思う。
それくらい徳島県民にはモータリゼーションが染みついているし、変えるのは容易ではない。
でもここまで書いてきた通り、駅前に建てるというのはそういう事だし、駅前がいいけど車で行きたいというのがエゴであるというのは明らかだ。
しかし、そんな人々のエゴを赦しエゴで出来上がってしまった徳島という街を変えられる可能性があるのは徳島ヴォルティスとサッカー専用スタジアムだけしかないのではないかとも思う。

とは言っても、どれだけメリットを掲げたところでスタジアム建設に否定的な県民は多いだろう。
実際に公共事業でスタジアムを建てることは現実的ではない。
長崎のように民間主導でできればどれほど楽なことか。

この夢と妄想と根気で書き上げた記事が、全てではなくとも実現する日が来れば嬉しいし、そうなるよう祈っている。



【引用】
*1「日本政策投資銀行 Business Research スマート・ベニューハンドブック」




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