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#8 歌舞伎町 KさんAさんPさん

ポイです
↑の画像は真夜中のサンテグジュペリ空港のエントランスホールです
Aéroport de Lyon-Saint-Exupéry
だーれもいません、夜中に働く人はフランスでは極々少数です
コンビニもありません
公衆トイレは有料です

Kさん

夜番長
元和食調理師
だいたいアルコール摂取済

Kさんは稀な方
和食部門がある会社で何故に多国籍、フュージョンと言われる店に勤務したのか
和食店舗にいけばいいのに
同じ調理師とはいえ部門が違う人があかるのは珍しかった

生活時間が夜型であり
酒好き、隠れて飲んじゃう人笑
仕事としては全く問題無く(当時は)
ポイにとってはお父さんみたいな安心感のある優しい方でした

和食さんなので、包丁の使い方を短時間ですが教えていただいたり
調理のちょっとしたコツ
道具のメンテナンスの仕方
道具の扱い方
美味いウイスキーの飲み方
ためになる事を色々と教えていただきました、ウイスキーに関しては呑兵衛のうんちくみたいな感じで楽しかっただけですけど

道具の扱いに関して
ちょっとスピリチュアルというか
「気持ちを込めないと道具に愛想を尽かされる、気をつけなさい」
と柔らかーーく優しーーく教えていただきました

道具というものは確かに物なんですけど
どんなに良いもの、どんなに頑丈なものでも扱い方が粗雑殊更乱暴であれば使用不可能になってしまうことがあります

「使い手次第」と言うことをKさんから学んだと思います

Kさんが言う「愛」

Kさんの包丁は信じられないほどいつもピカピカで刃が揃っていました

包丁を使っているときのKさんは我が子を愛でるような目つきで手に取っていたんじゃないかなぁと思うんですよ

K「今日も頼むなぁ、手伝ってくれよぉ、お願いします」

とかつぶやきながら仕込みしてるんだよ

ポ「Kさん何言ってるんですか?」

K「ぅん?あー、これはね、お願いしてるんだよ」

ポ「ぅーーーん….?ちょっとわかんないんですけど、どうゆうことっすか?」

K「ほら、君だってお願いされたらそれを聞いてくれるだろ?するかしないかはさ、君次第だけど、命令されるより、お願いするほうがいいだろ?」

ポ「あーー、そっすね、確かにそうですけど、よくわかんないっす」

K「あはは笑 そりゃそうだよなぁ、わからないと思うよ、でもいつか君もわかる、大事な道具を持って愛着が生まれたら誰もがそう思うよ」

そんな、なんだかふわっとした会話の中で印象に残ったのは「愛」の言葉
確かに、仕事をする上で道具は必ずある
その道具に愛をということは、気を遣う、心配する、お願いする、その他にも色んなことが当てはまると思う
人と変わらないね!
今はそう思えるけど、当時のアホなポイは「付喪神かな….」とか考えてました

Kさんが言っている「愛」について
ではなく、道具に対する考え方
扱い方メンテナンスと言う意味
どうやって使うのか?使用方法
擬人化?よくわかんねっすKさん
等短絡的な思考しか出来ておらず
会話に対する解釈が非常に脆弱だった

「今日どこでパチスロすっかな?」
「彼女欲しいな」
「ラーメン食いてぇいつものとこ行こ」

なんて欲望だだ漏れな考えばかりで
その会話の「意味」を簡単に考えることは出来ても、受け取り自分の中で解釈しようなんて思ってもいなかったなぁ
なんとなく、会話の中で言われた事を思い返して、疑問は持てども深く考えることはしなかったと思う
 
ポイにとってお父さんなKさんは
深夜から早朝まで一人で仕事をしていた
仕込み、深夜営業のオーダー、掃除
ポイが加入する以前から何年も一人でやっているらしい
週末は忙しくなるので外国人Aさんが
深夜営業をKさんと二人でやってたりするのが、ポイの中でちょっと羨ましかった

Aさん

真面目
秀才大学生
トライリンガル
ハゲ 滞在ビザ所持

Aさんが深夜ヘルプでシフトに入るのは
人間性ももちろん、仕事もできるし、
何より学費を稼ぎたかったから
アルバイトをしてなんとなく生活していたポイには、大学生とアルバイトをやってしかも器用になんでもやってしまうAさんはすごい人だと思えた

Aさんはお隣の国の方で
出身が辛い料理が多いらしく
たまーーにごく稀に賄いを作ってくれたときは美味しいけど激辛なものだった
お腹がやられる!

やはり国を出て他国で大学生として学業をしながら生活をしていくバイタリティはすごくて
日本語は全く問題なし
コミュニケーション能力が高い
ユーモアもある

A「ポイ!なにしてんの?まだ終わんないのー?オレもう終わったよ!」

ポイ「そんなAさんみたいに簡単におわんねっすよぉ、なんでそんなできるんすか?ほんとに」

A「アッハハ笑 なんでだろーねー?
 ほら見て!オレハゲだから髪の毛も終わってるよ!ホラ!」

ポイ「ちょ!やめて!笑って仕事できなくなる!」

なんて自虐なことをしてみたり
いつも追い込まれているポイを笑わせてくれたり、楽しいと思わせてくれる
怒ったところを見たこともない
いつも笑顔でムードメーカーなAさん
ぶっこまれて半泣き状態で大量の仕込みをやってると、静かに何も言わず一緒にやってくれたりする
そりゃ仲良くなっちゃうよね!


Pさん

家が無い
藤木(ちびまる子ちゃん)
スロットが上手い
高身長イケメン

Pさんもお隣の国の方
Aさんと同じく日本語ペラペラ
むしろ日本人にしか見えない
ポイが働き出したときには既に家が無く
週に2日程早番で朝に出勤するんだけど
ポイが先に来て、だいたいPさんは30分ちょい遅刻してくる
同じ出勤時間ではなく
ポイ→Pさん→Sさん
ポイ→Nさん→Pさん
みたいな感じのずらすシフト
8時→10時→11時  の様な感じね

ほぼ遅刻の理由はモーニング
Pさんは教えてはくれなかったけど
既に当たってる台を置いている店があったらしく、それ狙いで遅刻
カプセルホテルで生活してるから毎日その分稼いで払ってをしてる
(普通に家借りるより高いと思ってた)
住んでいた家の人が帰国しちゃって
名義は帰ったその人だから住めなくなっちゃって、仕事はしてるけどカプセルホテルで寝泊まりしてる

学生ではないし、旅行ビザで来てそのままビザが切れてお金を稼ぐために働き始めたらしい
(この会社どうなってんだ!って思うのはたぶんポイだけじゃないはず)

生活がかかってるので必死さが凄く
仕事もできるのもあって、長時間ポイと一緒に仕事をしてました
根が優しいPさんはぶっこまれ続けるポイに優しくしてくれたんですよね
Pさんと同じ国の友達がポイにはいて
色々と自国の話をしてくれたり
そのコミュニティの話題を共有したりしたので自然と仲良くなれたんだと思います

彼も不法滞在なので大きい通りは絶対に歩こうとしない
交通機関もなるべく使わない
そのストレスからか元からなのかはわからないけどかなり顔色が悪い
ちびまる子ちゃんの藤木

ポイ「Pさん顔色悪いっすけど具合悪いです?大丈夫ですか?」

P「うん大丈夫、別に具合悪いとかじゃないよ、でもなぁ、どうやって家借りよう….ビザも切れちゃったし」

ポイ「…..とりあえずご飯食べましょ、お腹空いてても良くないっすよ」

若いポイはビザのことなんて全くわかってませんし、家の確保にはお金がかかると思ってなにも言えませんでした

Pさんは携帯は持っていましたけど
家が無いのはやはり生活していく上で
難しくなることが多いですし
住所確認もできません
ビザも切れて職務質問されようものなら
アウトですし

やはりというか
一緒に働いて数ヶ月経った頃
シフトの変更があったときに

E「Pくん辞めたから、その分ポイ朝からだけど夜も仕込みして」

仕事が増えるのはいつものことですけど
Pさんが辞めた理由も何処へ行ったのかも何も教えてもらえず
Rくんに続きPさんもいなくなっちゃって、当時交友関係が狭いポイには精神的にしんどくて、Eからの理不尽もあり少しずつ鬱なようになっていきました。


人間模様

様々な理由、事情で
職場から人が去ってしまうのは
仕方ないことだと思います
それでも過ごした時間と記憶は
若いポイには顕著な変化を与えて
今生きている自分を形作っているんじゃないかと、そう思えます

Pさんについて書いたのは
現在住んでいるフランスで
状況が合致すれば他人事ではないなと感じたからです 
職と住居、身分証明書、その国の法律に反してはいないか
色んなことを過去から未来に繋がる記憶を掘り返していると思うんですよね

今はもうアラフォーですけど
更に年齢を重ねた自分に
書き記したこの記事が良かったと思えるように行動したいです

あなたと私の人間模様は未来にどんな絵を描くんでしょうか










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