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しづかなる命ふたつ

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 大菊にはいくつかの種類がある。写真の菊は「厚 物(あつもの)」と呼ばれる種類のもので、なんと花弁は数百枚もあるという。花の中心に向かって鱗状に美しく盛り上がっていくものが上等とされている。

 こうした大輪の菊が栽培され、盛んに鑑賞されるようになったのは江戸時代中頃だったらしい。現代日本にも根付く花見や紅葉狩りをはじめとする行楽は、四季折々の美しさを愛でる日本人のDNAなのかもしれない。

 わがいのち菊にむかひてしづかなる
 水原秋櫻子

 菊の美しさを描こうと、日がな一日菊を眺めて生まれた句なのだろうか。

 ファインダーの向こうの花を見つめていると、やがて静寂が訪れる。どんな喧騒の中にいてさえ、そこにはファインダーを介した花のいのちとわたしのいのちの対峙しかない。

 カメラが、異次元の世界への扉となる瞬間である。

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