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聴こえないから頼りにならない?
手話で話すことができた瞬間、今まで口だけで話をしていたことがバカらしくなって、そっから今までの時間が急にモノクロみたいな感じになってて。今の方がカラフルで。
学生時代に出会った彼は、はじめ手話ができなかったけれど、水を得た魚のように手話を知ってからは「こう思うんだけど、君は?」と語りかけてくるようになりました。
手話で話せる喜びを知れば知るほど、同時に葛藤や悩みも増えてきました。今まで何となくコミュニケーションが取れてる気になっていた親との関係が拗れ始め、「何で聴こえない僕を産んだの?」「何でもっと早く手話を教えてくれなかったの?」と溢れ出す想いを抑えきれず、家を出たのでした。
それから数十年。
親との関係は修復し、手話と口話を使いながら会話していました。どこかぎこちないけれど、親の想いを知った今のほうがスムーズにコミュニケーション取れるようになったとのことです。
親とはいえ、聴こえる人と聴こえない人の間にあるものを見つめ、言葉にできない苦しみを分かってほしくて、でもそう簡単に分かってもらいたくなくて。複雑に絡んでしまっているものをどのように紐解いたらいいのか。
ぶつかり合い、うまく言葉にできなくて苛立ったり、傷つけたくなかったのにと自責の念に駆られたり。
でも、ぶつかって初めて知ったそうです。
「最初から手話を知っていれば、もしかしたらそういう選択肢も考えたかもしれない」
「当時はそれがベストだと思っていた、でも違っていたのかなって時々思う」
「それでも、私は今、手話で話すあなたを誇りに思っている」
彼の親も、親の立場なりに葛藤していたことを。
ぶつかればいいってものではないけれど、何をどう思っているのかは言葉にしないと伝わらないし、知ることもできない。そんな当たり前のことを私たち人間はなかなかできないこともあります。
だから、北村匠海さん演じる一星(ろう者)の言葉がすごく響いたのでしょう。
俺はそんなに頼りないのか!?
聴こえないから?年下だから?
「聴こえない」は単に音が聴こえないだけでなく、目の前に繰り広げられている世界から、時々否応なしに置いていかれます。私だってその世界にいたいんだよ、同じ住民だよって叫びたいけれど。
そんな冷酷な世界よりももっと、やさしい世の中にしていきたい。
そんな想いを持ちながら語り合った彼も、親になりました。頼りになるし、これからも頼られていくでしょう。聴こえないからっていうのは関係ないよ、ってことで。
火曜日に放送されている『星降る夜』、とてもよきよきです。また来週!
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