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#21 このまま〈時〉を信じてあらむ(佐佐木幸綱)/ヤズのかぼすカルパッチョ

8月。海光る。

海まで徒歩圏内。
リモートワーカーなのでいつでも海に行ける。

というわけで、海に行ってSUPをした。

※SUP…スタンドアップパドルボードの略。パドルを漕ぎながら波乗りしたり海の上を散歩するといったことが楽しめる水上アクティビティ。

めずらしく波が高かったので、ウィンドサーフィンをしている人たちも。ウィンドサーフィンの透明な帆がシオカラトンボの羽みたいにきらきら輝いている。

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海に入ればどんどん波が寄せてくる。母親のワンピースのすそで戯れているようだ。ボードを波に対して垂直にしないと波に持っていかれるので、波が来るたびに転覆しないようにボードの向きを調整する。

《あ、今だ》波に乗る。

《あ、今だ》波に乗る。

その繰り返し。
視線のすぐ先に、きらきらと波打つ表面。

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「今」を詠む歌

「今」このとき、を、純粋に見つめるということ。
これは短い歌のエッセンスかもしれない。
以前noteで紹介した俳人・上田五千石さんのモットーでもあった)

掌(てのひら)にまけるロープにギリギリと風を感じこのまま〈時〉を信じてあらむ 
佐佐木幸綱

佐佐木幸綱(ささき・ゆきつな)さん20歳ごろのこの歌。
海上のヨットだろうか。
男のごつごつした手のひら、ギリギリとつかむ感覚、夏の海風…と実感の伴う言葉が並んで、後半ではふっと「このまま〈時〉を信じてあらむ」というねがいに飛ぶ。

「美しい少女一人を好きになり夏の一日の疲労鮮(あたらし)」という歌と同時期に詠まれた歌だ。

”このまま時を"と願うのは、「今この時間」が大事だから。

恋する20歳。時の疾さにかんたんに押し流されそうな「わたし」だけど、ギリギリとロープを握りしめて「今」を見つめる。〈時〉を信じる。

はやる気持ちと、波の鼓動(いや、男の鼓動…?)が聞こえてきそうな短歌だ。

ヤズのかぼすカルパッチョの作りかた

この短歌を味わうために、ヤズ(ブリの若魚)のカルパッチョを作った。いただきもののカボスも、青くて若い感じがしてピッタリ。

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作り方はとてもシンプル。ヤズと野菜(今回はしそのスプラウト)に塩をし、カボス(レモンやすだちでも可)をしぼり、オリーブオイルを回しかける。夏のヤズは脂がそこまで乗っていないので、オイルは気持ち多めがいいです。

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冷やした白ワインとどうぞ。

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