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トロッコ 芥川龍之介【読書感想文】 ~人生には自己満足を追求する自己責任がある。~

今回は自分は何もしないくせに、安全地帯から他人の挑戦や失敗を「そんなの自己責任だ!」と嘲笑う愚か者に贈る読書感想文です。

①あらすじ

良平8歳。
遊び盛りの男の子。
工事用トロッコに興味津津。
トロッコを押す二人の土工に良平は「おじさん。押してやろうか?」と声をかける。
若い土工二人と良平は一緒にトロッコを押す。
「なかなか力があるじゃないか。」と良平を誉める土工。
トロッコを押す事を楽しむ良平。
トロッコを押して登り、トロッコに乗って爽快に下りる。
3人はどんどん進んで行く。
気がつくといつしか海が見えてきて。
今更ながらあまりにも遠くに来過ぎた事に気づいて不安になる。
かなり遠くまで来た時に土工は言った。
「われはもう帰んな。おれたちは今日は向う泊りだから」
「あんまり帰りが遅くなるとわれの家うちでも心配するずら」

良平は殆ほとんど泣きそうになった。が、泣いても仕方がないと思った。泣いている場合ではないとも思った。
そこから良平は一人でレール沿いに村まで走る。
不安に泣きそうになりながらも、とにかく家まで走る。
やっとの思いで村に着くと一目散に自分の家へと走る。
家にたどり着くと母の胸に泣き続けた

時が過ぎ。
良平26歳。妻子と一緒に東京。
雑誌社に努めている。
全然何の理由もないのに、時おり、その時の出来事を思い出す。

という物語。

②ありきたりの感想。

大人への冒険と成長の物語ですね。
トロッコを押して登り、乗っては下り。
トロッコは良平自身でレールは人生そのものなのかもしれません。
ふと気付くと自分の行動範囲をはるかに超えて、遠く遠くにいる自分に気づきます。
そして、土工達はなにも悪びれもせず。
「そろそろ帰れば?」と突き放します。
それもまた世の常ですね。
そして、不安と戦いながらも家へ走るのです。
走りに走ってなんとか無事にたどり着きます。
それで ♪ テレテレテン ♪ レベルアップなのです。
よく登山を人生と例えるように。
トロッコを人生となぞっての成長物語です。

この「トロッコ」という短編はそれ以下でもそれ以上でもない気がします。


③断言しよう。他人を自己責任だと責める奴に自己責任を持っている奴はいない。


ここからは芥川を全く無視して、自己責任論を書きなぐろうと思います。

僕は山屋です。
登山の遭難事故がある度に「自己責任だ!」と誹謗中傷がネットを賑わします。
自己責任とは一体何でしょう?
いつから、「自己責任」という言葉が他人を叩く言葉になり下がったのでしょうか?
勘違いしてはいけません。
自己責任とは挑戦する者が、己を奮い立たす為に、成功を掴む為に握りしめるピッケルのようなもので。
自己責任者とは、自分を奮い立たす言葉で。
けして挑戦して失敗した者を叩く為の言葉ではないのです。
「そんなの自己責任だろ!」と叩く言葉ではないのです。

誰しも自己責任を担いで挑戦しています。
時に失敗し。道半ばで倒れるけど。
それを助けるのも、見守るのも、また自己責任なのです。
よく。遭難事故があると「救助する人の迷惑も考えろ!」という人がいますが。アホか?と思います。
断言してもいい。そんな言葉を投げる人は、誰も救助をした事がない人です。
誰かに助けられながら生きてきた事を忘れ、自分は誰も助けた事のない愚か者です。

勘違いしないでください。
救助する人もまた救助する自己責任をもって救助するのです。

無論、それは登山に限った話ではありません。
仕事でも遊びでも恋愛でもなんでもそうです。
誰もが、何かしらに自己責任を担いで挑戦し。失敗し。それでもまた挑戦するのです。
その繰り返しでしか人は成長しません。

断言してもいい。
他人を「自己責任だ」と責める奴に自己責任を持っている奴はいないのです。

なぜなら、なににも挑戦しないからそんな言葉を簡単に口にできるからです。
自分の自己責任から逃げているからそんな言葉が口にできるのです。

他人を「自己責任だ」と責める奴を、情けない奴だと僕は心から蔑みます。
自己責任から逃げているくせに、他人を「自己責任だ」と叩く奴を僕は心から蔑みます。

もう一度言います。
誰もが、何かしらに自己責任を担いで挑戦し。失敗し。それでもまた挑戦するのです。
その繰り返しでしか人は成長しません。


④まとめ

無理やり話しを「トロッコ」に戻します。
良平は自分の行動範囲を越えて遠くまでトロッコを進め。
必死になって家に帰りました。
そこで自己責任を学び。
確実に大きくなって。もう少し遠くまで。もっと遠くまで。
の繰り返しで26歳の良平がいるのです。

最後は以下の文で終結します。

良平は二十六の年、妻子と一緒に東京へ出て来た。今では或雑誌社の二階に、校正の朱筆を握っている。が、彼はどうかすると、全然何の理由もないのに、その時の彼を思い出す事がある。全然何の理由もないのに?――塵労に疲れた彼の前には今でもやはりその時のように、薄暗い藪や坂のある路が、細細と一すじ断続している。…………

彼の人生はまだまだ道半ば。
挑戦と失敗を繰り返し、不安や憤りを感じながらも、どこまでも自己責任を担いで人生を進むのです。

人生には自己満足を追求する自己責任がある。のです。

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