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【進撃の巨人から見る心】45 正義も娯楽も残酷なのです  ~57巻~

アニメタイトル:第57話 あの日

あらすじ

エレンの父、グリシャ・イェーガーの子供、ジークが7歳のある日、突然、両親とその仲間のエルディア復権派をマーレ政府に密告しました。

当然、エルディア復権派は全員、拷問され「楽園」に送られました。
楽園とはパラディ島であり、その南側の海岸に立つ壁です。
その壁の上から、罪人に巨人の骨髄液の注射をして突き落とすのです。
すると、罪人は巨人となり、巨人は人の臭いのするパラディ島の奥へ奥へと走り出して行きます。

以前、グリシャが幼き頃、グリシャを拷問し、妹フェイの死を知らせに来た二人のマーレ保安委員。
上官はグロス。その部下はクルーガーという名前でした。

グロスが次から次へと、楽しそうにエルディア復権派メンバーに注射をし壁から蹴落とします。
注射をされた者は壁の下で巨人化します。


ある者はそのまま注射をせずに突き落とし、巨人化した者が人間のままの仲間を食べる様子を楽しそうに眺めます。
クルーガーはグリシャにつきっきりで注射をするでもなく、突き落とすでもなく、グリシャの怒りや悲しみの訴えを聞いています。

ついには、妻、ダイナも注射をされて突き落とされ巨人化してしまいました。

最後にグリシャだけが残されました。
ついに。グロスがグリシャを突き落とそうとしました。
その時に。
なんと、
クルーガーがグロスを突き落としたのです。

クルーガーは「俺がフクロウだ」と答えて、巨人と化したのであります。



あれこれ考えてみよう

グリシャは残忍なグロスに言います。
「お前だろ、15年前俺の妹を犬に食わせたのは」
「8歳の妹を犬に食わせたのは、お前だろ」
「あんたは、何でこんなことするんだ?」

グロス
「何で?何でってそりゃ、面白いからだろ?人が化け物に食われるのが面白いんだよ」
「そりゃあそんなもん見たくねぇ奴もいるだろうが、人は残酷なのが見たいんだよ」
「ほら?エルディアの支配から解放されて何十年も平和だろ?」
「大変結構なことだが、それはそれで何か物足りんのだろうな」
「生の実感ってやつか?それがどうも希薄になってしまったようだ」
「自分が死ぬのは今日かもしれんと日々感じて生きてる人がどれだけいるか知らんが、本来はそれが生き物の正常な思考なのだよ」
「平和な社会が当たり前にあると思っている連中の方が異常なのさ、俺は違うがな」
「人は皆いつか死ぬが、俺はその日が来てもその現実を受け入れる心構えがある」
「なぜならこうやって残酷な世界の真実と向き合い、理解を深めているからだ」
「当然楽しみながら学ぶことも大事になる」
「あぁ、お前の妹を息子達の犬に食わせたのも教育だ」
「おかげで息子達は立派に育ったよ」

グリシャ
「心は痛まないのか?」

グロス
「まぁ、言いたいことはわかる」
「もし息子が同じ目に遭ったらと思うと、胸が締め付けられる」
「かわいそうに」
「エルディア人でさえなければな」
「あれをよく見ろ、あれがお前らの正体なんだぞ?」
「巨人の脊髄液を体内に吸収しただけで巨大な化け物になる」
「これが俺らと同じ人間だとでも言うつもりか?」
「エルディア人をこの世から一匹残らず駆逐する、これは全人類の願いなんだよ」
「心は痛まないのかって?痛むわけないだろ?人を殺してるみたいに言うなよ」
「人殺しはそっちだろ?お前ら復権派は俺達マーレに何をしようとした?」
「エルディア帝国と同じ道を辿ろうとしたよな?心は痛まなかったのか?」

グリシャ
「嘘だ、お前らの歴史は全部嘘だ」
「俺は真実を知っている」
「我々の始祖ユミルは、巨人の力で荒れ地を耕し道を造り、峠には橋を架けた、大陸の人々を豊かにしたんだ」
「マーレは歴史を歪曲している」

グロス
「あぁ、わかったよ」
「偉大な歴史があったんだろ?」
「下にいる友達と語り合うといい」
「お前が巨人に食われるのが見たいんだ、陳腐な食われ方だけはやめろよ!?まだ見たことのないパターンを見せてくれ」
「そう怒るなって、こういう娯楽も必要だって話はしたろ!?」
「もっと前向きに考えろよ、ほら!?妹が呼んでるぞ!?」

正義は悪魔と背中合わせという事はもう何度も書いてきました。
人は残忍です。
正義が先か娯楽が先か。
人は「正義」という言葉を言い訳にその残虐行為を正当化しますが、根本は単なる娯楽なのかもしれません。
もっと領土が欲しい。
もっと権力が欲しい。
もっと刺激が欲しい。
「平和?」まあそれに越した事はないが、はっきりいって飽きている。
もっと娯楽が欲しい。
そうだ。人でも殺してみるか。

そんな悪魔が人間のDNAには刻まれているのかもしれません。
でなければ。戦争なんてしないでしょ。
人類の歴史は戦争の歴史です。
悪魔的DNAの歴史と言ってもいいでしょう。

グロスの行為はその悪魔的DNAの象徴です。
しかし、我々一人一人がそうならない保障は。多分ない。
誰の血にもその残虐性はきっとある。
でなければ。繰り返し繰り返し戦争なんてしないでしょ。

連日の世界の戦争報道の先には、この「楽園」と同じ行為が行われています。
グロスが人間を楽しみながら巨人に変えたり、人間を巨人に食わせたりすると同じような事が行われているかもしれません。。
巨人は元々人間であるという事実を知らない調査兵団は、必死で巨人を巨人だという理由で殺していました。
我々だってネズミを駆除するし。
血を狙う蚊をはたき落とします。
そこに罪悪感はないのです。
それが悲しいかな。生物の本性です。
そして人間も生物です。

正義が先か娯楽が先か。それは卵が先か鶏は先かの永遠の哲学のようですが。
いずれにしても、
正義も娯楽も。
残酷なのです。

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