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【進撃の巨人という哲学書】25. 汚れ仕事 ~39話~

アニメタイトル:第39話 痛み

あらすじ

エレンとヒストリアは拉致されてしまいました。
変わりに替え玉のジャンとアルミンを拉致した者を捕えました。
リーブス商会の親子です。
憲兵団に雇われたリーブス親子ですが、作戦失敗です。こうなっては調査兵団に殺されなくとも、憲兵団に暗殺されるしかありません。
そこでリヴァイはリーブス親子に調査兵団につくように説得します。
そしてリーブス親子の働きでニック司祭を拷問し殺害した中央憲兵団のジェル・サネスを捕獲しました。
さて、ハンジの復讐が始まります。
サネスがニック司祭に行ったように爪を一枚一枚剥がして行きます。

「エレントとヒストリアはどこだ?」
「なぜヒストリアを狙う?レイス家とはなんだ?」

サネス
「数え切れないな。このせめぇ壁の中で。なぜ今まで戦争起きなかったかわかるか?俺達第一憲兵が、この汚ぇ手で守ってきたんだよ。下手に利口な教師から。空を飛ぼうとした馬鹿な夫婦も。田舎の牧場にいた売女も。全部俺達が消したから人類は今までやってこられた!感謝されて当然なんだ。」
「それをお前らほど楽しそうに人を痛めつける奴は見たことがねぇ!お前ら化け物んだ!でも俺は怖くねぇんだよ。俺は。俺には王がいる。俺は、この壁の安泰と王を。信じてる。俺達のやってきたことは間違っていないと。けどこんなに痛かったんだな。俺を嬲り殺しにしてくれ。それが俺の、血に染まった。人生のすべてだ。」

サネスも中央憲兵団の有能な兵士です。簡単には口を割りません。
しかし、仲間の裏切りを聞き、自分の誇りと自尊心の戦いに負け、ついに心が折れました。

「レイス家が本当の王家だ。」

つまり、ヒストリアが正当な王位継承者という事です。
エレンとヒストリアは、ロッド・レイスの元に居る可能性が高いようです。



あれこれ考えてみよう。

世の中は綺麗ごとだけでは回っていません。
どこの世界でも裏で汚い役回りを遂行する人がいます。

ジェル・サネスの長セリフ。アニメでは割愛されていますが、漫画ではもっと長くて悲哀がこもっています。

ハンジの「ごめん。 サネスほど上手くは剥がせなくて。一体何枚剥がせばあんなに上手くなれるの?」という問いにアニメのサネスは「数えきれないな」とだけ答えていますが漫画では
「数えきれないな。一人につき何枚爪が生えてると思ってんだ。爪だって皮だって。何枚も?がしたさ。そいつに嫁がいようが、生まれたばかりのガキがいようが関係ねぇ。この壁の平和を守るためだからな。」
と具体的かつ、平和の為だと言っています。

「なぜ今まで戦争起きなかったかわかるか?」の後には
「お前らが当たり前のように享受しているこの平和は誰が築き上げていたのか知ってたか?」と続きます。

「それをお前らほど楽しそうに人を痛めつける奴は見たことがねぇ!お前ら化け物んだ!でも俺は怖くねぇんだよ。」はかなり省略されていて漫画では

「お前らほど!!楽しそうに人を痛めつける奴は見たことがねぇ!!やれよ!!もっと!!お前の大好きな拷問を続けろ!!暴力が好きなんだろ!?俺もそうだ!!抵抗できない奴をいたぶると興奮する!!もっと俺で楽しんでくれ!!お前らは正義の味方なんだから遠慮する必要は無いんだぜ!?お前の言った通りだハンジ!!仕方ないんんだ!!正義のためだ!!そう思えりゃすべてが楽だ!!自分がすごい人間になれたと思えて気分が高揚するだろ!?お前ら化け物だ!!巨人なんかかわいいもんだ!!」
と書かれています。

「俺は怖くねぇんだよ。俺は。俺には王がいる。俺は、この壁の安泰と王を。信じてる。俺達のやってきたことは間違っていないと」の後には
「信じたい」の一言があります。

サネスの葛藤が言葉に浮かびます。
サネスは汚れ仕事を続けてきました。
罪なき人を拷問してきました。時には殺害もしてきたのでしょう。
それも王の為正義の為平和の為にという誇りを持って続けてきたのでしょう。
そんな葛藤も慣れと共に薄くなるものなのでしょうか。
しかし、やはりどこかに良心の呵責はあって、「信じたい」という一言にすがりついていたのではないでしょうか。
だから、自分がやってきた残虐な拷問を、いつか誰かに自分がされる日が来る事を覚悟していたのかもしれません。
その時の為に準備していた言葉は。
「王様」という正義の言い訳「お前らの為にやった」という平和の言い訳だったのでしょう。

世の中は綺麗ごとだけでは回っていません。
どこの世界でも裏で汚い役回りを遂行する人がいます。
もう何の感情も無く、機械的にその汚れ仕事をこなす人もいます。
それに誇りすら持ってこなす人もいます。
また、その自責に押しつぶされて自ら命を落とす人もいます。
しかし、大抵はその命も名前も無かった事のように大きな力でその事実は抹殺されます。
もしくは、その悪事の全てをその人になすりつけます。
多くの歴史がそれを物語っています。

誰かの言う正義や平和とは実はあやふやでとても危険なものなのかもしれません。


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