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詩「浮力」と野又穣の空想建築

先週の弥香ちゃんの記事でもお伝えしましたが、LINE NEWS VISIONシリーズで、シーズン1と2が好評配信された『今日、京都とミカと猫。』のアーカイブ配信は7月末までとなります。

🔽『今日、京都とミカと猫。』シリーズ詳細ページ(7/31までアーカイブ配信中)
https://news.line.me/detail/oa-vi-micaneko/w2z9g6cfmgp5

Poetic Mica Dropsはシーズン1&2のフルアルバムを制作中。配信は終了してしまいますが、ぜひ音でドラマを思い出していただけるとうれしいです。

PMDメンバーで配信用のジャケット写真も選びます。茂野さんが場面写から候補を作ってくださいました。
主人(猫)公ぼうろのアップ、弥香ちゃん、猫と弥香ちゃんなどなど。

ドラマ内で朗読された詩にプラスして、オリジナルの作品も収録します。
草間は歌詞の微修正や英語タイトルをつけたりと作業中。
リリース時には改めてお知らせしますのでお楽しみに!

三連休は、美術館へ。

実在しない建造物の絵画を描く野又穣さんの個展を鑑賞しました。
十年以上前から描かれる建造物に惹かれており、画集の頁をめくってはあるはずのない風景に心だけ踏み込んだりしています。

第一詩集の『あの日、水の森で』に収録されている「浮力」という詩は野又穣さんの風景のある場所をモチーフに書きました。初出は雑誌の『星座』(かまくら春秋社)です。

   浮力

渓谷をこえ
ついに手のとどかないものになる
「乗船のあいだだけ、忘れたことを思い出す」
気球に揺られて
眼下の草原に列をなすひとびと
もう何年も待っている
身軽になるため
肉も魂も惜しげもなく捨てた
わたしもかつてあのなかにあって
空に浮かぶよるべない白を見上げていた
なにもない田畑
川べりの体操
手を振る土地の子どもたち——
空にかこまれて暮らす彼らは
この世のはんぶん以上は
手のとどかないものだと知っている——
その姿もあわく霞み
からだの奥で結び目が
順に順にほどけてゆく
あぁ 思い出したことなどひとつもない
そっと結ばれ呼吸していた
よろこびもかなしみもひとしく重く
気球は徐々に高度をさげる
出会いなおすことばかり求めた
ほんとうに手放せたことなど
なにひとつなかった、それなのに
風とおしのよい草原に接地すれば
なにもかも遠ざかってゆく
あどけない痛みも
まっすぐな道のような声が
耳もとでささやいたみじかい言葉も

建造物はあるのに人がいる・或いはいた気配がなく切り取られた風景は静謐な空気に満たされているよう。
例えば夢の中でしか訪れることのできない家や町はきっとこんな場所にあるのだろうと思います。

以前、空想の廃墟を描く展覧会が開催されて野又穣の作品も展示されていたのですが、都合で行けなかったことがありました。
図らずもその作品に今回巡り会えたことがとてもうれしかった……!

Liten to Tales by Minoru Nomata

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