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ぶっ飛んだ映画監督2人

Poetic Mica Drops音担当茂野です。
最近一緒に組む監督の中で、とくにぶっ飛んだ映画を撮る監督について2回に分けて書いてみます。

その1 アベラヒデノブ監督

私が音楽を担当した映画が多く公開された2022年を締め括る作品が12月23日から、渋谷ユーロスペースと池袋シネマロサで公開中です。
アベラヒデノブ監督「ジャパニーズスタイル」
アベラ監督はものすごくぶっ飛んだ映画を撮る30代の若い監督です。
出会ったのは2017年。戸田彬弘氏が演出し東京芸術劇場で上演された演劇作品「THE VOICE」でした。私が音楽を担当。アベラ氏はこのとき役者として出演していました。なお、Poetic Mica Drops声担当熊谷弥香も同作品に出演しています。

2017年「THE VOICE」
「THE VOICE」 (左イントレ上:アベラヒデノブ氏、右イントレ上:熊谷弥香)

アベラ氏は、大阪芸術大学映画学科で映画監督を目指していた2007年、私が音楽を担当した河瀬直美監督「殯の森」を奈良で観て感銘を受け、それ以来「殯の森」サントラCDを愛聴盤としてずっと聴いてきたそうです。好きな子ができた日も、その子にフラれた日も聴いていたそうです。
「THE VOICE」の稽古場で出会い話す中で、いつか自分が撮る映画の音楽をお願いしたいと何度も私に言っていました。そして数年後、正式にオファーを受けたのが「ジャパニーズスタイル」です。
当初私はアベラ監督が「殯の森」的なしっとりとしたテイストの作品を撮っているのだろうと思っていました。ところが、送られてきた映像は真逆。あまりにも自由な演出、ぶっ飛んだ作風、正直なところかなり困惑しました。でも私に音楽を依頼してきた理由、「殯の森」と共通する何かがどこかにあるはずだと考え、それを探しながら音楽作りを進めていきました。 

「ジャパニーズスタイル」は、横浜を舞台に12月31日から1月1日を描く物語。
出演、吉村界人、武田梨奈、他。
大晦日、大事な事を今年中に終わらせたいと思いながら、それを心の中の袋とじにしまったままの男と女が出会い、日付が変わるまでに一緒に終わらせようと心の袋とじを開け、トゥクトゥクに乗って旅に出るロードムービーです。
詳細は公式HPをご覧ください↓


アベラヒデノブ監督

アベラ監督の演出意図がなかなかつかめず、映像のカオスと向き合う日々がしばらく続きましたが、140分ほどあった映像が編集改訂を経て90分くらいにまとまり始めた頃、徐々に音楽の方向も見えてきて、私の音楽作りは順調に進んでいきました。
そして映画は完成しました。でも、探していた「殯の森」との共通性は結局見つけられませんでした。そう思っていました。
ところが先日、劇場であらためて本作品を観たとき、あるシーンの音楽が実は「殯の森」と共通するものを持っているように感じたのです。
映画自体は真逆の作風なのですが、音楽にはいつの間にか共通性が生まれていたようなのです。
これをアベラ監督が無意識に、または意識的に狙っていたのだとすると、彼は恐るべき感性を持った監督と言えるのかもしれません。 

その2曲、比較して聴いてみてください。

河瀬直美監督「殯の森」茶畑シーン『殯の森のワルツ』 (2007年)

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