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渡せなかったチョコレート

18歳の時のバレンタインデー。
大好きだった先輩に渡そうと、
何日も前からいろんなお店に行って
やっとみつけたチョコレート。
あとは渡すだけ。

当日、先輩と食事することになって有頂天。
「今日はバレンタインですね」と言ってきっかけを作ると
「俺、チョコレートとか甘い物、苦手なんだよね」
テーブルの下でこっそり用意していたチョコレートを
気づかれないようにバッグにしまう。
家に帰ってから、渡せなかったチョコを一人で食べた。

翌年のバレンタインデー。先輩は彼氏になっていた。
チョコレートの代わりになるものを探しに
何日も前から喜んでくれそうなものを考えて
愛車に置いてもらえるようなグッズを買った。
あとは渡すだけ。

当日、ドライブしながらおしゃべりしている時に
車の話題になり、彼が言った
「車の中にごちゃごちゃ物置くの好きじゃないんだ」
バッグの中で、彼に渡すはずのプレゼントから手を放した。
家に帰ってから、渡せなかったグッズを自分の部屋に飾った。

バレンタインデーになると思い出す。
渡したかったのに、渡せなかった、勇気のなさと苦い思い出。

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