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季節のあるある収録記

 なんやかんやあって、歳時記を読んだので感想を書く。

 歳時記は、俳句をつくる人のために季語が季節毎にたくさん載っているものである。
 言葉の趣を説明しているので、執筆者の主観もところどころ入っていて笑ってしまう。
 (俳句はほとんど触れたことがなく、的外れなことを書いていたらすみません)

歳時記の魅力

①いろいろな言葉の由来が載っている

 手頃な雑学の本みたいだなと思った。
 いちばん印象に残ってるのはこれ。

ヘチマの名は糸瓜の訓読みイトウリのイが抜けてトウリとなり、トはイロハのへとチの間にあるところから生じたという。

大野林火,「ハンディ版 入門歳時記 新版」


本当に…?
他に「春」「夏」「秋」「冬」それぞれの語源も載ってたりする。当たり前に使ってる言葉も、誰かが「これはこう呼ぶことにしよう」って決めたんだよなというのを実感する。

②言葉のさす意味

 日本のものとはいえ、ひと昔前に作られたので今の認識とはズレている言葉もある。
 いちばん覚えてるのは、「暖房」。

室内を温めることをいう。暖炉、ストーブなどのように直接その装置を指していう場合もあるが、暖房の場合は、温められている場所を指すと思えばよい。

大野林火,「ハンディ版 入門歳時記 新版」

そうなの!?
一体いつから意味がすり替わったんだろう。

③なんでも季語にしがち

 本当になんでもアリ感。冬に咲いている薔薇を「冬薔薇」とか、「なんか良いなと思ったら季語にしちゃおう!」っていうのが感じられる。とくに気温に関してはすごい。

朝寒…朝だけ気温が寒さを覚えるほどさがる秋の終わりの感じ

冷まじ…冷やかの強い感じであるが、まだ寒いというほどでもない、秋深まるころの感じ

そぞろ寒…秋も深まってきて、うっすらと感じる寒さ

大野林火,「ハンディ版 入門歳時記 新版」

細かすぎないか?

秋だけでこれである。しかもこれは「入門」歳時記だから、本当はもっと多いのかもしれない。
暮らしていると「この季節のこの気温と気候!良いよなァ!」ということは確かにあるし、それは一年のうちたった数日しか味わえないものだったりする。過ぎていくのを見守るしかないもどかしさから、季語として形に留めて愛でていたのかもしれない。

よかった季語

ここで私の独断と偏見により、これは!と思った季語をいくつか紹介したい。

①君影草(きみかげそう)(夏)

 鈴蘭の別名は「君影草」というらしい。美しい…。君の影みたいな可憐な花。

②花氷(はなごおり)(夏)

大きな氷の中に、美しい草花や、金魚などを閉じこめて凍結させた、装飾を兼ねた冷房用の氷柱である。デパート•劇場•食堂などに置かれていた

大野林火,「ハンディ版 入門歳時記 新版」

これはかなりツッコミどころが多い。

まず金魚凍らせてるけど大丈夫!?

これが冷房として機能していたのがすごい。
字面がとても綺麗だったのと、衝撃的な涼み方で印象に残った。お洒落サマーウォーズ。

③飯饐る(めしすえる)(夏)

夏は飯が汗をかいたり、一夜のうちに粘り気が出て、腐りかけて甘酸っぱい匂いを発する。

大野林火,「ハンディ版 入門歳時記 新版」

 ご飯腐ってますよね!?そんな…季語にしちゃっていいの?
この本によると、「生活の疲れに、夏の倦怠感も加わるもの」というイメージで使うらしい。こんな感じで、ポジティブに季節をとらえる言葉だけが載っているわけでもない。

④日記買ふ(にっきかう)(冬)

 日記を買うのは冬の季語らしい。
 私は日記をつけているけど、ただのノートに書いているので365日で綺麗に終わることはない。
 だから日記を買うのは年末だなー新年だなーみたいなのは共感できなかったけど、これが季語になるくらい日記を買う人が多かった時代もあったのね…と思った。

⑤雪まろげ(ゆきまろげ)(冬)

雪のかたまりを転がし大きくしてゆく遊び

大野林火,「ハンディ版 入門歳時記 新版」

誰でも一度はやったことがあるあの行動にこんなかわいい名前がついていたなんて…。ゆきまろげ。これは日常使いしていきたい。流行るんじゃないか?

雪を使う遊びはほかにもある。
(中略)
雪を丸めて赤い実南天で眼をつけて兎の形をつくる雪兎などがある。

大野林火,「ハンディ版 入門歳時記 新版」


雪兎も改めて真面目に説明されるとなんかおもしろい。

まとめ

 こんな感じで、歳時記は思ったよりも自由なようである。
 この本が書かれた時と今では地球の気象もかなり違うので、もうこれは今は見られないなという自然現象があったり、廃れていった季節の行事もたくさんあって、ちょっと悲しくもなる。
 そのぶん、現代だからこそできた風習とか季節を感じる事象とか、たくさんあると思う。
そういうのを収録した現代版歳時記とか、誰か作ってほしい。

歳時記、かなりおすすめ。今回引用した本はKindle版もあるようです。

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