ファイトクラブとタツノオトシゴと帝王切開

2019年の夏、はじめての出産は事情により
予定帝王切開が決まり準備をしていました。

医師からの説明では「輸血が必要となる場合は大学病院に搬送されます。」など、もしもの話や麻酔の説明、手術に関する沢山の書類にサインをして当日の流れを聞いて後は待つだけ。
予定と言われても、何が起きるか分からないのが出産です。赤ちゃんに会える楽しみより、頭の中は緊張や不安でいっぱい!リラックスできる映画を観ても何故かソワソワしてしまいます。

ちなみに妊娠中に見た映画は…
「リトルフォレスト」「かもめ食堂」「シェフ」など美味しそうな食べ物が出てくる映画ばかり。完全に初期から後期まで、つわりに悩まされたせいです。
赤ちゃんにも聴こえたらいいな。と思いミュージカル映画もたくさん観ていました。

今は一旦、帝王切開のことは忘れたい。
最後だし自分が今観たいものをみよう!
ということで選んだのは、デヴィッド・フィンチャー監督の「ファイト・クラブ」でした。
知らない人がタイトルを聞いたら、勇気をもらえる青春映画だと思うかもしれません。
一言でいえばサスペンスにあたる作品です。


物質的に満たされた生活を送っているはずなのにストレスを抱えて不眠症となった会社員の主人公「僕」が出張帰りの飛行機で謎の男「タイラー•ダーデン」に出会い、友人となった2人は僕の心の問題を晴らすため本気の殴り合いををはじめます。周りにいた見物人も巻き込んで秘密の決闘集会【ファイト•クラブ】を結成。どんどん大きくなっていくクラブはやがてタイラーの指揮により凶悪なテロ集団へと変わっていく。異変に気がついた僕は…


ブラピ演じるタイラーの得体の知れない凶暴性とカリスマ性。順調な人生を送っているようで満たされない心の闇を抱えた、ノートン演じる主人公。(主人公は作中では名前が無く、それがポイントなのです)
狂気がどんどんエスカレートしていく姿にハラハラとさせられました。

念のために書くと「痛みにより生きる喜びを感じる」というタイラーの主張は全く共感できません。
子どもが産まれた時の喜びは大きな感動があったけれど、帝王切開後の痛みに耐えながら起き上がるだけでもうたくさん!
どんな出産方法であっても母体に与えられるダメージは大きく、痛みから喜びを得るなんて発想の欠片も無い私には、ファイトクラブには向いていません。(笑)
それでも映画に集中しているうちに不安を忘れ思わぬリラックス効果に繋がりました。

そしてもう1つ私を勇気づけてくれたものがあります。
それは偶然インスタで見かけたタツノオトシゴの出産。


なんだかとても神秘的で感激してしまい夫に見せました。出産前に夫とした最後の会話がタツノオトシゴ。
こんな凄い出産をする生物(しかもオス)が同じ地球上にいるんだ。だからきっと私も大丈夫!という何とも不思議な理由で自信を持ってオペ室に向かうことができました。今思えばあれは産前ハイなのかな?

何はともあれ、冷静な先生達とスーパーマンみたいな助産師さん。様々な人が関わって息子は生まれてきてくれました。
その小さくとも力強い生命力に背中を押されながら私は日々生きています。






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